「ミスiD 2017」グランプリに選ばれた女優の武田杏香(たけだきょうか)が、『血を吸う粘土』で映画初主演となる。演じた主人公・香織と自分と比べると「全然違う」そうだが、唯一の共通点は「行動力があるところ」だと話す。
その行動力は、「女優になりたい」という初心を大切に、3年前、女優活動に専念した時にも大いに発揮され、いまはその歩みを着実に進めている。

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 「第4回 夏のホラー秘宝まつり 2017」の中で上映される本作。美大受験生・香織(武田)は、予備校の倉庫に置いてあった、乾燥した水粘土の粉に水をかけ、粘土に戻してしまう。それは無残な死を迎えた彫刻家の激しい怨念がこもった悪魔の粘土だった。その粘土・カカメは、生徒たちを一人また一人と取り込んで怪物と化していく…。

 武田は今回がホラー初出演。
ホラー作品については「苦手です。まったくダメです」と苦笑いする。だが、この作品は少女たちが夢に向かって頑張る姿を描く物語にもなっている。香織について「クラスに一人はいるような普通の女の子で、だからこそより怖さが引き立つのかなと思います。もしかしたら自分の身にも起こるかもしれないと…」という。

 監督からは恐怖シーン以外の平常時も大事に撮りたいと言われたとのことで、「それを観ている方に届くように演じないといけないと思いました。
それがあるからこそ後半のちょっとせつなくもあり怖いシーンがより引き立つということを頭に置きながら演じて、実際に観るとそうなっていたので安心しました」と語った。

 香織は「向上心が強く、自分で行動を起こしていくタイプ」と分析する武田。自分と重なるところとして「行動力」を挙げるが、それはこれまでの歩みにも表れている。 現在18歳の武田が女優を志したのは小学生の時。「『キッズ・ウォー』のメイキングを観てすごく楽しそうで、『自分もやってみたい』と言ったら、母が地元の養成所の広告を見つけてきてくれたんです。その頃は目立ちたいくらいの気持ちだったんですけど…」とはにかむ。


 養成所で学ぶうちに本格的に演技への関心が高まり、また音楽にも興味を持ち、2011年オーディションに合格。ダンスグループメンバーとして活動を開始する。その時期も「一番は演技をしたい」という気持ちはぶれていなかったという。

 そして大ヒット曲に参加するなど一気に人気者に。だが「心が追いついていかない間に、自分の知らないところに自分が行っちゃっている感じで、本当にやりたいことをじっくりと考える暇もなかった。『これでいいのかな』と自問自答した時に違和感をおぼえつつ、目の前のことをやらなければという状態でした」と当時の気持ちを明かす。


 また「グループ活動をしたいとはまったく思ってなくて。一人で活動していくことは大変だと思うけど、羨ましかったんですね。私が一番始めに志したものと当時の自分と照らし合わせると、どうしてもそのギャップが埋められなくて…」。その思いが強くなり、グループを辞めることを決意した。だが女優活動を始めても人気が出るとは限らない。そこに不安はなかったのだろうか。


 「まったくなかったですね。いろんな人に『もったいない』と言われましたが、当時の私には一番聞きたくなかった言葉です。自信をもって自分の道を選んだのに、どうしてそんなことを言うのか。人気グループのメンバーでなくなることが怖いのでなく、自分で納得できない自分でいるほうが怖いんですよ。グループ時代が嫌だったということではなくて、自分の選択が自分の性格に合ってたんだなという思いしかなくて…」。グループには今も愛情があり、「MVもよく観ていますし、ファンのような気持ちです」と微笑む。


 以降女優活動を本格的に開始し、今回映画初主演。「自分には経験があるとは思ってなくて、今物心がやっとついたという感じです。自分は新人なんだという思いしかない」と一つ一つの作品で新人のつもりで臨んでいるという。そして「これから先もその気持ちで向き合っていければと思います」と目を輝かせた。(取材・文・写真:田中裕幸)

 「第4回 夏のホラー秘宝まつり 2017」は8月19日~9月1日、キネカ大森で開催。