ミュージシャンと役者を両立する者が多い昨今において、ピエール瀧の活躍は特に目覚ましい。声優を務めた『アナと雪の女王』や『とと姉ちゃん』で見せた柔らかな芝居も魅力的だが、『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』で務めたアウトロー役にもハマる瀧は、『アウトレイジ 最終章』で、あの北野武監督と初タッグを組んだ。
「緊張感という意味では、生放送に近い感じ」と北野組の印象を語る瀧に、本作で務めた新たな抗争のきっかけとなる役柄や、芝居への思いについて話を聞いた。

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 前作『アウトレイジ ビヨンド』のその後を舞台とする本作では、主人公の大友(ビートたけし)が身を寄せるフィクサー・張会長(金田時男)が率いる張グループと、日本最大勢力を誇る花菱会が一触即発の状態に。花菱会の直参幹部で抗争の端緒となる花田を演じた瀧は、「(マネージャーが)変態のヤクザの役らしいですよって言うから、そりゃいいねえと(笑)。『アウトレイジ』じゃなかったとしても、変態のヤクザの役っていいじゃないですか。全リミッター解除な感じがして」とオファーを受けたときのことを述懐する。

 ヤクザや悪徳刑事など、アウトロー役の印象が強い瀧は「北野組は細かく監督に聞けない感じなので、自分の中で解釈するしかない」と前置きしたうえで、花田に「イケイケな目標のあるヤクザ」と「好き勝手やってきたヤクザ」という2つのイメージを抱いていたことを明かすが、結果的には後者に落ち着いたとのこと。「(上の者に)ずっと怒られているので(笑)。それを考えるとイケイケというよりは、悪かったゴロツキみたいなやつらを束ねているというか…。戦国時代で言うと、城持ち大名よりも、豪族からのし上がってきた感じですね」。

 演じるうえで大切にしていたことを聞くと、「金儲けは上手いけど、実際に目の前で銃を向けられたときのドンパチにはあまり慣れていないはずなので、銃を向けられたらすごくビビるというのだけは気をつけてやっていました」とニヤリ。その言葉通り、劇中におけるビビりっぷりが印象的な花田だが、瀧が特に気に入っているのは「登場シーン」だそう。「あんな怖い顔してるのに、首にギャグボールという(笑)。
ネットではずっと、怖いドラえもんって言われていましたけど、その通りだなあと思って」と三枚目な役回りにも満足げな様子だ。 初参加となった北野組では、特殊な緊張感も味わった。「ちょっとセリフを噛んだくらいや、今のだったらキーのセリフが聞きづらかったかもな…と思っているくらいだったら、OKと言われちゃう」そうで、「まだあるかも…と突き詰めていくこともプロフェショナルだとは思うんですけど、それとはベクトルが違う意味でのプロフェッショナルというか。緊張感という意味では、生放送に近い感じですかね」とも振り返った。

 10月スタートのTBSドラマ『陸王』に加えて、2018年には白石和彌監督による『孤狼の血』『サニー/32』の公開も。話題作に引っ張りだこの瀧は、特殊な立ち位置で役者業を務める心境も明かしてくれた。「プロでやっている俳優さんたちからすると、僕もアウトローじゃないですか。バンドの人間ですし、どこかの劇団出身でもないですし、(演技の)基礎があるわけでもない。そういう部分で外側にいる人という意味合いで、よく使っていただけたり、しっくり来るのかな? という気がします」。音楽家という背景が生むアウトロー役者としての独特な匂い。これが反映された瀧の芝居には、純然たる役者のそれとは異なる味わいがある。その芝居に、これからも魅了されていきたい。
(取材・文・写真:岸豊)

 映画『アウトレイジ 最終章』は10月7日より全国公開。
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