俳優、DJ、デザイナー。多彩な顔を持つ村上淳は、45歳の今について「仕事が楽しくて仕方ないんですよ」と笑顔を見せる。
テレビ朝日の金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』では獣医師に扮するベテラン俳優に「人生の半分」だという愛犬への思いや、俳優業への向き合い方、これまでのキャリアについて話を聞いた。

【写真】『僕とシッポと神楽坂』に出演する村上淳

 たらさわみちの同名漫画を映像化した本作は、若き獣医師・高円寺達也(相葉雅紀)が、動物看護師のトキワ(広末涼子)や、病院を訪れる動物たち、その飼い主らと送る日々を描く。村上は『ナルタウン動物病院』に勤務する、優秀ながら変わり者の獣医師で、トキワに想いを寄せる田代真一に扮する。

 「確かに、赤ちゃんと動物との撮影はすごく大変」と語る村上は、多くの動物が登場する本作の撮影を「善人がそろったんだと思うんです」と回想。「あれだけ動物がリラックスしている現場を、僕はあまり見たことがないです。たぶんですけど、それは座長(=相葉)の人柄が大きいと思います。あとはやはり、プロデューサー陣による現場づくりですね」と続ける。

 2頭の犬と共同生活中の村上に、彼らがどんな存在か問うと「人生の半分」と回答。その言葉の背景には、20代~30代では感じられなかった、俳優業に対する心境の変化も影響しているという。

 「40代って、年齢や技術、気持ちがシンクロしているんでしょうね。よく20代の頃に『40代は楽しいぞ』と言われていたんですけど、『ああ、なるほどな』と。そんな中で、僕は滅多に遊びに行かないんです。
家から出ないというか…。犬といて、犬に『いってきます』をして、犬に『ただいま』をして、バリバリ仕事をする。それが今、自分の身の丈にとても合っているんですよ」。

 そんな村上は、16歳で読者モデルとしてキャリアをスタートさせ、やがて人気モデルとなった。同期の反町隆史竹野内豊を例に挙げ、モデルから俳優へシフトするのは「自然だった」と述懐。「2年から3年なり、演劇的なスキルを学んだ期間がないという劣等感は非常に強いです」と胸襟を開くも「現場に出ることが一番。家で勉強したり、ワークショップを受けたからといって、現場で視聴者に届くものができるっていうことではないと思う」と、役者には“現場にいること”が重要だと力説する。 1992年にテレビドラマ初出演を果たすと、平成を通じて役者業に身を投じてきた村上。俳優として大切にしてきた考えを問うと「何よりも優先しているのは、キャスティングをされるような人になること」と回答。「楽しい方が良いという思いが、40歳を過ぎてからは強い」という彼は「天秤にかけたときに、仕事より重いものは、今はないです」ときっぱり。また「不安で寝れない日もあるんです。特に、クランクインの1日前~2日前は眠れないですね。
でもそれは、ずっと持っておきたいと思います。50歳~60歳になっても、この緊張感を持っておきたいと思うんです」とも明かす。

 「会社ということで考えると、社長クラスの年齢なんですよ。ということは、この業界に置き換えたときに、中間管理職を少し超えている。何を考えなければいけないかというと、下の世代のことです」と、俳優業界における自身の立ち位置を分析する村上。名バイプレーヤーとして多数の作品を彩ってきた彼は「下の子たちがはっきりと見えているので、彼らには頑張ってほしい」と若い世代に期待を寄せるが、黙ってポジションを譲る気は毛頭ない。

 「できるだけ邪魔をしたい。『どかないよ』と。でも、どけてほしい。どいたところに、皆が入ってほしいわけです。僕は『じゃあ、また新しく道を探すね』というやり方の役者でいたいですね」。そう語る村上の横顔は、仕事に対して真摯に向き合う大人であると同時に、楽しいことに夢中な少年のようでもあった。
(取材・文・写真:岸豊)

 金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』は、テレビ朝日系にて毎週金曜23時15分放送。
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