【写真】凛々(りり)しい横顔や優しい笑顔もみせてくれたムロツヨシ
『侠飯』や『すじぼり』などの小説家・福澤徹三の同名小説をドラマ化した本作。ムロが演じる広告代理店の営業マン・狛江は、左遷同然の人事で、本社からヤクザが牛耳る“修羅の街”へ単身赴任させられ、会社と地元のヤクザたちに徹底的に追い詰められるという人物だ。
ムロは「原作を読ませていただき、狛江というキャラクターは哀れですが憎めない人物だなと思いました」と役を捉えると、演出を務める内田英治監督からは「伊丹十三監督作品みたいなテイストで」とヒントをもらったという。「その言葉で腑に落ちました。伊丹作品って俳優さんの芝居が濃いのですが、妙にリアリティがある。僕も古田さんも(共演の田中)圭くんもやりすぎるぐらいやるのですが、しっかり内田監督が枠組みにはめてくれるんです」。
テレビ東京ドラマ初主演となる本作。ムロは「光栄です」と語っていたが、古田との共演も念願だったという。「僕が役者になろうと小劇場で芝居を始めたとき、古田さんはシアターコクーンという劇場で、野田秀樹さん演出の『キル』というお芝居に出演されていました。僕はいつかあんなすごい舞台に立てたらと思っていたんです。
芝居を始めた当初は3~4年ぐらいで「食べていける」と楽観的に考えていたという。しかし実際は、まったく想像通りにはいかなかった。年齢の下の人間がどんどん活躍していき、焦りは募る一方…。それでも続けていたのは「19歳でこの世界で生きていく」と決めた自分に恥をかかせたくないという思いだけ。それがいまでは、出演作が途切れることのない人気俳優になった。 20年前には想像できなかった現在。それでもムロはアクセルを踏むことを緩めない。「ありがたいことに少しずつ、お仕事を任される責任が大きくなってきています。でも安定を求めてしまうと、いままで通りの結果しか得られない。より面白く、よりなにかしらいい形を作りたいと思っています。
変化していくことの大きな理由は“自分に飽きてしまう怖さ”があるというのだ。
「『勇者ヨシヒコ』の第2シリーズが終わったぐらいのとき、求めていただける役柄が偏っているなと感じたことがありました。それはそれですごくありがたいことなのですが、自分が自分に飽きてしまって、変化しようと思っても、そちらにいくのに時間が掛かってしまったんです」。
『Iターン』でも、思う存分「無茶なことができた」と笑顔を見せたムロ。「これまでは引っかき回す役が多かったのですが、この作品では思う存分、真正面から逃げずに受ける芝居ができました。ありそうでない、なかなか珍しい役柄だったので楽しかったです」。
常に攻め続ける姿勢――これからも、まだまだ新しいムロの表現が堪能できそうだ。(取材・文・写真:磯部正和)
ドラマ24『Iターン』は、テレビ東京系にて7月12日より毎週金曜24時12分より放送。