いまドラマの枠で、もっとも注目されていると言っても過言ではないテレビ東京の深夜ドラマ枠“ドラマ24”。そんな枠の最新作『Iターン』で古田新太とダブル主演を務めるのがムロツヨシだ。
ムロといえばこの枠の常連で、第2作目の『2ndハウス』以降、数々の作品に出演してきた。「挑戦的で斬新」と表現したムロが、ドラマにかける思いや、共演の古田への胸が熱くなるエピソードを語った。

【写真】凛々(りり)しい横顔や優しい笑顔もみせてくれたムロツヨシ

 『侠飯』や『すじぼり』などの小説家・福澤徹三の同名小説をドラマ化した本作。ムロが演じる広告代理店の営業マン・狛江は、左遷同然の人事で、本社からヤクザが牛耳る“修羅の街”へ単身赴任させられ、会社と地元のヤクザたちに徹底的に追い詰められるという人物だ。

 ムロは「原作を読ませていただき、狛江というキャラクターは哀れですが憎めない人物だなと思いました」と役を捉えると、演出を務める内田英治監督からは「伊丹十三監督作品みたいなテイストで」とヒントをもらったという。「その言葉で腑に落ちました。伊丹作品って俳優さんの芝居が濃いのですが、妙にリアリティがある。僕も古田さんも(共演の田中)圭くんもやりすぎるぐらいやるのですが、しっかり内田監督が枠組みにはめてくれるんです」。

 テレビ東京ドラマ初主演となる本作。ムロは「光栄です」と語っていたが、古田との共演も念願だったという。「僕が役者になろうと小劇場で芝居を始めたとき、古田さんはシアターコクーンという劇場で、野田秀樹さん演出の『キル』というお芝居に出演されていました。僕はいつかあんなすごい舞台に立てたらと思っていたんです。
それが今回1つの看板を2人で背負うことができるなんて…20年前の僕に教えてあげたい。この世界は夢があるなと思いました」。

 芝居を始めた当初は3~4年ぐらいで「食べていける」と楽観的に考えていたという。しかし実際は、まったく想像通りにはいかなかった。年齢の下の人間がどんどん活躍していき、焦りは募る一方…。それでも続けていたのは「19歳でこの世界で生きていく」と決めた自分に恥をかかせたくないという思いだけ。それがいまでは、出演作が途切れることのない人気俳優になった。 20年前には想像できなかった現在。それでもムロはアクセルを踏むことを緩めない。「ありがたいことに少しずつ、お仕事を任される責任が大きくなってきています。でも安定を求めてしまうと、いままで通りの結果しか得られない。より面白く、よりなにかしらいい形を作りたいと思っています。
もし変わってダメだったら、元に戻せばいい。試せる場がある限り、勇気をもってやろうと思っています」。

 変化していくことの大きな理由は“自分に飽きてしまう怖さ”があるというのだ。

 「『勇者ヨシヒコ』の第2シリーズが終わったぐらいのとき、求めていただける役柄が偏っているなと感じたことがありました。それはそれですごくありがたいことなのですが、自分が自分に飽きてしまって、変化しようと思っても、そちらにいくのに時間が掛かってしまったんです」。

 『Iターン』でも、思う存分「無茶なことができた」と笑顔を見せたムロ。「これまでは引っかき回す役が多かったのですが、この作品では思う存分、真正面から逃げずに受ける芝居ができました。ありそうでない、なかなか珍しい役柄だったので楽しかったです」。

 常に攻め続ける姿勢――これからも、まだまだ新しいムロの表現が堪能できそうだ。(取材・文・写真:磯部正和)

 ドラマ24『Iターン』は、テレビ東京系にて7月12日より毎週金曜24時12分より放送。
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