俳優の宮沢氷魚が映画初主演を務め、主人公の恋人役で俳優の藤原季節が出演する映画『his』より、今泉力哉監督が明かす、“おでこコツン”シーンの撮影秘話が公開された。

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 映画『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』の今泉力哉監督が初めて男性同士の恋愛という題材に取り組んだ本作。
ドラマ『偽装不倫』(日本テレビ)に出演した宮沢が、周囲にゲイだと知られることを恐れ、東京からひとり田舎にやってきた主人公・井川迅に扮し、迅の忘れられない元恋人・日比野渚役を藤原が演じる。そのほか、渚の妻・玲奈役を松本若菜が、迅に恋する美里役を松本穂香が務める。

 予告編やポスタービジュアルでも象徴的に使用されているのが、宮沢と藤原が向かい合い”おでこコツン”するカット。今泉監督は、切なさが最高潮に高まるこのシーンについて、「この<おでこをくっつける>という動きは、もともと脚本にはありませんでした。私が撮影現場で思いつき、氷魚さんにはあえて何も伝えず、季節さんにだけ”静かに近づいていっておでこをくっつけてほしい”と伝えました」と明かす。

 続けて監督は、「つまり、本番撮影時、氷魚さんは相手がどう動くか一切知らないまま演じていたので、季節さんが近づいてきたとき、もしかしたらキスされるのでは?と考えて演じることになる。
そうした緊張感と心のざわめきを狙ったシーンになります。実際、カットをかけた後、氷魚さんに聞いたらキスされると思った、と話していました。狙い通りです(笑)」とコメント。もちろん、この演出方法なので何度も撮り直すことはなく、少ないテイクでOKが出たとのことだった。

 一方、「自由に演技させてもらった」と振り返る宮沢は、「だから僕らも悩みましたが、監督が一番悩んでいたと思います」と語る。その理由については、監督がキャストと一緒に出来る限り悩み、共に生み出していくスタイルを採用しているからだという。
それを示すかのように、今泉監督は、“役者が演じることに慣れてしまうこと”、“役を掴んで理解し過ぎてしまうこと”を怖れていたと語っている。

 そして藤原は、「人を好きになるっていう気持ちに答えはないんだなって、今泉さんと一緒に作品を作って思いました。答えがないところに向かうときは、めちゃくちゃ苦しいですが、そういう答えのないものを撮ろうとするのが“今泉映画”の真髄なんだなと思いました」とコメントした。

 映画『his』は2020年1月24日より全国公開。