【写真】奥平大兼16歳、りりしい表情も 撮り下ろしショット集
■初めての撮影 “感情”から自然に出たセリフが採用されたことも
まったくの演技経験ゼロだった奥平は、本作のクランクイン前に大森立嗣監督のもとでワークショップを受けた。
「周平の役作りとかそういう以前に、本当に基礎的なことを教わりました。それから『MOTHER マザー』のシーンも演じましたが、全然うまくいかなかったんです。気持ちが全然乗らなくてロボットみたいというか。
終盤の、周平の気持ちが語られる重要シーンでも、感情から自然に出たセリフが採用された。「現場でこういう流れだなということを理解して、最後の告白の場面も含めて演じました」。
■“母”長澤まさみからのビンタで予期せぬ感情、そして涙
本作はセリフのない、表情やしぐさだけのシーンも多い。
「撮影テストの時には、動きだけで実際にはたたかれなかったんですが、本番ではもちろん本当にたたかれました。お母さん(長澤)の手が見えないくらい早くて、スパーン!って来て。すごくビックリしましたが、体温が伝わってきて、自然と涙が出てきました。でもなぜかどうしても泣きたくなくて、自分の手をぎゅっと握って涙が流れないように我慢しました。それでも結局、泣いちゃって。
作品の内容的に現場の空気もさぞかし重かったのだろうと思いきや、「すごく明るい雰囲気でした」とのこと。「一緒にいるときには、長澤さんたちと、ずっとたわいもない話をしていました。(内縁の父役の)阿部サダヲさんは僕くらいの年齢の頃の話をしてくれました」。
■撮影中、実は「反抗期真っただ中だった」
現在、高校2年生の奥平。
「わけもなく、お母さんの言っていること全部にイライラしてしまって。撮影が始まって、朝、お母さんも早く起きてご飯を作って送り出してくれるんですけど、最初は何も話さずに出掛けていました。でもこの作品で考えさせられる経験をして、途中からありがたいことなんだなと気付きました。今はもう反抗期も治りました」と話し、「お母さんとの関係も割といい感じです」と照れ笑いを見せた。
■素顔は明るい高校生 今度はキラキラ青春ものにも挑戦したい
初の撮影を終え、俳優としての思いにも変化が。
「クランクインする前は、何も分からないし、プレッシャーばかりで、撮影するのが怖くて怖くて仕方ありませんでした。でも実際にやっていくうちに、『あれ、楽しいな』と変化してきて、クランアップの時には、『え、もう終わっちゃったの。
今ではすっかりこの仕事に興味を覚え、いろんな作品に出たいと胸を膨らませる。
「周平のようなつらい役をやっていても楽しかったので、ほかの役をやったらどうなっちゃうんだろうとすごく気になります。いろんな役をやりたいです。キラキラ学園ものにも興味があります。そんな作品に出ている自分を見たら、すごく恥ずかしいだろうけど…。でもやってみたいな(笑)」。
デビュー作で難役を演じきり、少年の複雑な心の内を体中で表現した奥平。周平のイメージからは、キラキラ系青春映画は想像がつかないが、取材時の本人はキラキラものも似合うだろう明るい青年だった。小学生時代には全国武道空手道交流大会「形」優勝の実績もある奥平。青春ものにアクションに人間ドラマにと、可能性は無限だ。(取材・文:望月ふみ 写真:松林満美)
映画『MOTHER マザー』は公開中。