女優、歌手、声優、さらには洋服のプロデュースまで、幅広く活躍する神田沙也加が、約1年ぶりに舞台出演を果たす。2月6日から上演される『ローズのジレンマ』は、ブロードウェイの喜劇王として知られるニール・サイモンの晩年の名作喜劇。

久しぶりのストレートプレイで、神田は「まるで家族のような存在。何でも話せる」と慕う大地真央と共演を果たす。13年ぶりの大地との共演への思い、そして、芸能生活20年を迎える神田の“女優としての今”を語ってもらった。

【写真】神田沙也加、デビュー20周年を迎えても変わらない笑顔の輝き

◆自身のコメディーのDNAの基・大地真央との共演で化学変化を

 『ローズのジレンマ』は、経済的危機に直面している大物女流作家ローズが、最愛のパートナーだった作家ウォルシュの亡霊に提案され、助手アーリーンや売れない作家クランシーと共に彼の未完の遺作を仕上げる中で、残された人生と向かい合っていくさまをユーモラスに描いたコメディー作品。神田は、「テンポ感がすごく大事な作品なので、とにかく間合いを失わないようにしています。ということは、セリフは早々に頭に入れておかないといけない。(稽古中の)今は、毎夜毎夜台本を読み続けています」と気合いを入れて稽古に臨む。

 2020年大みそかに放送された『絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス24時!』(日本テレビ系)では番組冒頭、井上芳雄と共にミュージカルさながらの歌と踊りで笑いをとった神田。本作でも、コメディー作品として“笑い”を作り出すことになるが、「私、コメディーに関わらせていただくことは多いんです」と自信ものぞかせ、「今回は、自分のコメディーのDNAの基になっている真央さんと一緒なので、師弟による化学変化がどうなるのかを見てください」と笑顔を見せた。

 “師弟”と話す大地とは、2006年に初演、2008年に再演された舞台『紫式部ものがたり』以来、実に13年ぶりの共演となる。神田は、当時を「稽古場の景色や何で悩んでいたのかということまで、昨日のことのように覚えています」と話す。

 「当時、お仕事を辞めようと思っていた時期だったんですが、真央さんが『もったいないから続けたほうがいい』と言ってくださって、私にとっては復帰作が『紫式部ものがたり』でした。
とにかく緊張して、これで合っているのかなって、一言セリフを言うごとに悩んでいました。お芝居に正解なんかないのに。でも、それから13年経って、今回は『どうやって動こうかな』という企みができるような余裕が自分にできた。それが、この13年間やってきたことの成果であればうれしいなと思います」。

◆大人になったことで身近に感じるようになった女優・大地真央

 ところで、本作の製作発表で、大地は神田のことを「意外とおやじっぽいところが見え隠れしている」と明かしていたが、神田は「それを言ったら、私のおやじっぽいところは真央さんの遺伝です!」と笑う。

 「演出の小山(ゆうな)さんから指示があったときの受け答えが男っぽいから、それを(大地は)言っているんだと思いますが、軽やかに『できます』って言おうと心がけているんですよ。『やれるか分からないけど、やってみます』と言うとできなくなっちゃいそうで…。でも、その答え方がおやじくさいんでしょうね(笑)」。

 では、神田から見た大地の意外な素顔は?

 「普段からメッセージのやりとりはしているのですが、(大地は)ドラマなどもあってお忙しかったので、『今日はお休みにする』というようなプライベートなことも教えてくれるようになって…。全く隙のない完璧な人に見えますが、人間くさいところも持っている方です。私が大人になったことで、(大地自身が)『どうやって女優・大地真央という存在に向かっていっているのか』が見えるようになってきたので、より身近に感じるようになりましたし、そう思えるようになったことがうれしい」。◆デビュー20周年 舞台を自分の軸に根付かせたい

 2021年は、神田にとって芸能生活20周年となる記念すべき1年でもある。
そこで、改めてこれまでの芸能生活の中でのターニングポイントを聞くと『紫式部ものがたり』のほかに、『キューティ・ブロンド』と『マイ・フェア・レディ』、そして『レ・ミゼラブル』を挙げてくれた。

 「私は、東宝ミュージカルを観て育ってきたので、ずっと出たい出たいと思っていました。なので、今もこうして出られていることは奇跡。なかでも、『Dream Comes True(夢が叶った)』感が大きかったのが『レ・ミゼラブル』でした」。

 『キューティ・ブロンド』で菊田一夫演劇賞を受賞したことも大きな糧に。「私は、あまりご褒美は求めないタイプですが、それでも、(受賞したことで)10年以上やってきたものに対して『よくできました』というハンコをやっといただけた感じがして、そこでやっとこれがフィットしている道なのかなと思えました。自分は、主演として引っ張っていける人物じゃないと思っているので、だからこそ、この賞をいただけたことが自信になったし、自信にしていかなくてはいけないとも思いました」。

 そんな神田は今年、「舞台を自分の軸として根付かせたい」と見据える。「昨年は、洋服のプロデュースや声優としてのお仕事を中心に活動していましたが、今年は、この作品だけでなく、(8・9月に上演予定の)『王家の紋章』でミュージカルにも戻ります。このご時世で、どうなるか分からない部分はありますが、それでもステージに立つことに私は幸せを感じるんだろうなと思います。ステージに立つこと、観ていただけること、そして仲間と作品を作るということを再確認できる年になるんじゃないかなと思います」と目を輝かせた。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
 
 舞台『ローズのジレンマ』は、東京・シアタークリエにて2月6日~25日上演。
その後、大阪・新歌舞伎座にて2月27日~3月1日、愛知・刈谷市総合文化センターにて3月3日上演。

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