以前から「特に目標を定めることはしていません」と話していた女優の吉川愛。そんな彼女だが、近年出演作が相次ぎ、2021年もNHK連続テレビ小説『おちょやん』出演をはじめ、ディズニーアニメーション『ラーヤと龍の王国』では主人公ラーヤの吹き替え声優、連続ドラマ『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。

~』(読売テレビ・日本テレビ系)では主演、そして最新作となる映画『ハニーレモンソーダ』ではヒロインを務めるなど快進撃が続く。役と向き合う上では落ち込むこともあったというが、大切にしているのは「なるようになる」という前向きなスタンス。そこには、これまでの女優人生で経験した吉川なりの人生哲学が垣間見える。

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■自分とはまったく違うキャラクターに挑戦

 映画『ハニーレモンソーダ』で吉川が演じるのは、中学生時代に周囲から“石”と呼ばれるほど存在感のない内気な女の子・石森羽花。ラウール(Snow Man)ふんする三浦界との偶然の出会いから、自分を変えようと努力する――。

 これまで「クールだったり男の子っぽかったりと、サバサバした役が多かった」という吉川にとっては未知の役柄。周囲からも「全然羽花ちゃんぽくないよね」と言われていたという。強く意識したのは、羽花が周囲から“石”だと思われていること。「界くんと出会って、少しずつ自分が変わっていく中でも、どこかに『自分は石なんだ』という気持ちを忘れないようにしていました」と役作りについて語る。

 それでも、大切な仲間との出会いで、羽花の心の傷は癒やされていく。そして石と呼ばれていた羽花が、界から「お前は宝石なんだよ」と言われ、完全に殻を打ち破る。吉川自身も「誰にも認められていなかった部分をさりげなく認めてくれた。
演じていてもすごくキュンとしたし、今まで悩んでいたことが何だったんだろう…と氷が解けていくような感じでした」とそのシーンを振り返る。

■視界が開けた天海祐希の言葉「やってみればいいんだよ」

 界の言葉で、羽花が前に進めたように、誰かの一言によって、劇的に人生が変化することがある。吉川自身も、事務所の先輩である天海祐希から掛けてもらった言葉によって、視界が大きく開けたという経験があった。

 「以前一度だけ舞台をやらせてもらったことがあったのですが、そのときセリフが飛んでしまって、とても怖い思いをしたんです。それ以来、舞台に出演することにすごく消極的になっていたのですが、あるとき天海さんから『舞台やらないの?』と声を掛けていただき、正直に気持ちを話したんです。そうしたら天海さんも『同じような経験がある』とおっしゃって『気にしないでやってみればいいんだよ』と背中を押してくださったんです」。

 大先輩の天海に励まされ、吉川にあった舞台へのトラウマが消えた。「憧れの天海さんにそう言っていただいて、すごくうれしかったし、幸せでした。心も落ち着いて、いつかまた舞台にも挑戦したいなと思えたんです」と笑顔を見せる。失敗しても、そこから学べることがある――天海の言葉によって心が軽くなったという。■「なるようになるさ」ポジティブ思考を大切に

 しかし以前は、考え過ぎることで、負のスパイラルにはまることも多々あった。「女優という仕事をする上で、しっかり準備をしてキャラクターを演じ切るための努力をするのはもちろんなのですが、それでもあまり深く向き合いすぎると、どうしてもうまくできなかった自分を責めてしまうんです」と悩ましい表情を見せる。


 吉川は3歳から子役として活躍。16歳の時に一度芸能界から離れ、その後復帰した経歴を持つ。「特にいったんお仕事をお休みして、復帰した後は、1年ぐらいブランクがあったので、全然思っていたようにお芝居ができなくて、どんどん落ち込んでしまいました。反省するのはもちろん大切なのですが、なんだか悩んでいる時間がすごくもったいなく感じてしまって…」と振り返る。

 そこからは上手くできなかったと思っても、すぐに気持ちを切り替えるようになったという吉川。できないことがあっても悩まない。「できる限りのことをして、あとは『なるようになるさ』と考えるようになったんです。そう考えるだけで、気持ちも楽になりました。人それぞれだとは思いますが、私にはこうしたやり方の方が合っていると思うんです」。

 とは言いつつ、作品ごとに課題を見つけることは忘れない。「この映画で言えば、もうちょっと羽花ちゃんらしさが出せたかな…」と完成した作品を観て感じたという。「まだまだ演技力も足りないし、もっと人の心を感動させるようなお芝居をしていきたいです」と目を輝かせながら語っていた。
(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)

 映画『ハニーレモンソーダ』は全国公開中。

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