決して死なない、人知を超えた殺人鬼ブギーマンの恐怖を描き、多くのホラー映画に影響を与えた伝説の名作『ハロウィン』(1978)。あれから40年、これまでに製作された9本の続編&リブートをいったん仕切り直し、第1作に直結する新たな後日談として2018年に製作された『ハロウィン』(2018)は大ヒット。
そして、それに続く新作『ハロウィン KILLS』がついに日本で封切られた。第1作ではごく普通の女子高生だった主人公ローリーを演じたジェイミー・リー・カーティスは、その後の40年について「血にまみれた過酷な戦いの人生」と表現。今回、ローリーの孫娘アリソン役を演じたアンディ・マティチャックと共に、最新作について話を聞いた。
【写真】ふつうの女子高生だったローリー 『ハロウィン』(1978)より
●「あの夜の体験がすべてを変えた」 女子高生だったローリーのその後
前作『ハロウィン』(2018)では、不死身の怪人ブギーマンと恐れられる連続殺人鬼、マイケル・マイヤーズが精神病院からの移送中に脱走。40年前、彼につけ狙われたローリー(ジェイミー・リー・カーティス)との全面対決が展開する。森に囲まれた一軒家にわなを張り巡らせ、娘のカレン(ジュディ・グリア)、孫娘アリソン(アンディ・マティチャック)と一家三世代で戦い、一度はブギーマンを葬ったローリー。しかし、やはり彼は生きていた。
本作『ハロウィンKILLS』では、ローリーたちのみならず、凄惨なブギーマン殺人事件で心に大小の傷を負った平和な町ハドンフィールドの住人たちを巻き込み、さらなる壮絶な死闘が幕を開ける。
第1作『ハロウィン』で絶叫ヒロインとしてブレイク、3本の続編でもローリー役を熱演し、ブギーマンと満身創痍で戦ったジェイミー。過ぎた歳月を振り返り、「1978年のハロウィンの朝、目覚めたローリーは頭脳明晰な女子高校生でした」と懐かしそうに目を細める。「化学の試験と比較宗教学のレポートを準備しながら、夜には子守りのアルバイト。そんな彼女の夢はきっと、素敵な男の子にキスされることだったはず。
でも、あの夜の体験がすべてを変えた。予想すらしなかった、血にまみれた過酷な戦いの人生に」と、ローリーの壮絶な半生をかみ締める。
その後のローリーが神出鬼没のブギーマンにおびえ、自衛を続ける日々を送ったことは想像に難くない。「友達を殺された彼女は周囲と距離を置き、ピンボールマシンの玉のように世界をあちこち放浪して、誰とも深い関係を築けなかった。そんな暮らしのなかで娘が生まれ、孫が誕生した。でも、養育権を奪われ、血を分けた家族とも深い溝ができた。多くの誤解を受け、精神的にも孤立した気の毒な女性だったと思う」。
傷ついたホラーヒロイン、ローリーに心から共感するカーティス。前作で因縁のブギーマンとの対決を通して、家族と和解したローリーの芝居にもいっそう深く、熱が入る。●ルーミスはCGじゃない! 衝撃カムバックの裏側 魅力的な新キャラも
『ハロウィン KILLS』の大きな見どころは、第1作の『ハロウィン』でローリーと共にブギーマンに遭遇したキャラクターたちが再登場すること。特に正体不明の殺人鬼におびえ、ローリーにしがみついていた気弱なトミー少年は、今や立派な中年(アンソニー・マイケル・ホール)に成長。住民たちを率いてブギーマンを追いつめる。
また、『ハロウィン』の名物キャラ、ブギーマンの主治医ルーミス(ドナルド・プレザンス)が、映画冒頭で衝撃のカムバック。1995年に他界したこの名優をどうやってスクリーンに呼び戻したのか? 「実は、私もそれが一番気になっていたの」とカーティスは身を乗り出す。「あれ、CG処理じゃないんですよ。大道具の主任がとてもドナルドに似ていたので、特殊メイクを施して代役を務めたんです。声は声優さんが吹き替えたけれど、うり二つでしょう?」とニッコリ。
第1作で共演した本物のドナルド・プレザンスについては「すごくすてきな人だった」と回想するカーティス。「ただ、彼はブギーマンを追い、ローリーはブギーマンに追われる設定だから、共演はラストの数シーンだけだったんです」。それでも、みんなの尊敬を集める有名俳優との仕事は若者ぞろいの撮影隊にとって本当に特別な体験だったという。
一方で、今回登場するブギーマンの生家には、ゲイカップルの不動産屋が住んでいる。LGBTQ+のキャラクターを取り入れた設定を、孫娘アリソン役のアンディ・マティチャックは「とても好き!」と、目を輝かせて絶賛する。「恐い因縁を持つ屋敷に2人の人間が住んでいて、それがたまたま同性という感覚なんです。監督を含めた脚本チームは、キャラクターを一人の人間として見ている。
ジェンダーやセクシャリティで定義しないところが素晴らしいと思う」。愛し合う2人が強烈な体験をするのは、物語のうえでとても効果的だもの、と声を弾ませる。●ジェイミーに直撃! あの映画の続編は?
昨今、『ターミネーター:ニュー・フェイト』にカムバックしたリンダ・ハミルトンなど、往年のヒット作の新作で、80年代~90年代に活躍したヒロイン女優たちが、再びスクリーンでたくましい姿を見せている。新作が期待される作品と言えばジェイミーがアーノルド・シュワルツェネッガーと夫婦役を演じた1994年製作のアクションコメディ『トゥルーライズ』もその一つ。2019年にはカーティスがまさかのツーショット写真をインスタにアップし、話題を集めた。こちらのコンビ復活待望論も根強くあるが、さて、続編の可能性は?
残念ながら回答は「ノー」。あのインスタの写真は、カーティスが娘の結婚式の翌日に撮ったもの。「夫と泊まったホテルでブランチ中、アーノルドと偶然再会したの。日曜の朝のハプニングでした」とのこと。
アメリカでは9.11以降、テロリズムを「コメディ」として扱うのは困難になった。「元々、テロを喜劇に仕立てるなんておかしい」と、カーティスは『トゥルーライズ』への複雑な思いを打ち明ける。「今、観返すと問題に感じる部分が多い映画だけど、それがはっきり分かったのは良いことかもしれない」とも。
「本来は誇るべき人々を笑いのネタにしたり、他国の人を悪意を持って描いたり。正直、そうした箇所は撮り直せたら、と感じる」。それでも「いい映画よ」とカーティスは優しい笑顔を見せる。「ユーモアが効いているもの!」。
次回作『Halloween Ends(原題)』で三部作の形をとって完結すると伝えられる本シリーズ。ローリー役はこれで本当に卒業? 「元々、フランチャイズを意識してたわけじゃないから」とジェイミーは答える。「1本の映画が長い年月をかけて続編を生み、今やユニバースとなった。今回の三部作でローリーの人生は語り切るはず。これ以上、掘り下げるのは難しいでしょう」。
今後は『ハロウィン』に出演することはないと答えつつ、「もちろん、ネバー(決してない)とは言い切れないけど」とほほ笑むジェイミー。ローリーは彼女の愛すべき分身。娘や孫と手を携えた、ローリーの全身全霊の戦いをしかと見届けよう!(取材・文:山崎圭司)
映画『ハロウィン KILLS』は公開中。
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