1月期の民放連続ドラマがすべて終了したが、全話平均視聴率が2ケタに乗ったのは、草なぎ剛主演『スペシャリスト』(テレビ朝日系)と亀梨和也主演『怪盗 山猫』(日本テレビ系)のみという惨状だった。昨年10月期は5作が2ケタ台、“夏枯れ”状態の同7月期でさえ、3作が2ケタ台に乗っていただけに、1月期の連ドラの低迷ぶりは目に余るものがある。



 “独走”と表現するのも微妙だが、平均12.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)をマークした『スペシャリスト』がトップ。といっても、12%台で1位ではレベルが低すぎ。同ドラマはこれまで4回、『土曜ワイド劇場』枠で放送され、好視聴率を取っていただけに、さすがに安定した視聴率を記録。初回はSMAP解散騒動が起きた直後とあって、17.1%まで跳ね上がったが、15%超えはその1回だけ。第2話以降は10~14%で推移し、大崩れはせず。今期の全ドラマの中で唯一、全話で2ケタ台に乗せた。
草なぎは、前回主演した連ドラ『銭の戦争』(2015年1月期/フジテレビ系)でも平均13.4%の好視聴率をマーク。作品に恵まれたこともあるが、潜在視聴率が高いと見ていいだろう。

『怪盗 山猫』は初回14.3%と好発進し、第4話まで2ケタ台をキープ。第5話では7.9%まで落ち込んだが、第6話、第7話は再び2ケタ台。終盤の3回は1ケタ台が続く右肩下がりとなったが、前半での貯金が功を奏して、平均10.9%と2ケタ台を死守。亀梨は13年10月期に同枠で主演した『東京バンドワゴン~下町大家族物語』が平均7.1%と爆死していたが、今回同じ枠でのリベンジに成功した。


 長瀬智也主演『フラジャイル』(フジテレビ系)は9~10%台で推移。第8話では自己最低の8.8%まで落ちたが、最後の2回で2ケタ台に乗せ、最終的に平均9.8%で終えた。

 その裏の堀北真希主演『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』(日本テレビ系)は前半の第5話まで2ケタ台をキープしたが、第6話以降は5週連続で1ケタ台。最終回は自己最低の7.9%まで下げて、平均は9.6%となってしまった。「水10」対決は、最終回(共に第10話)で僅差ながら『フラジャイル』が逆転勝利。フジはこの枠で日テレに8連敗を喫していたが、9期ぶりに勝った。
フジの水10ドラマは今期をもって廃止となるため、有終の美を飾った格好。堀北には、またぞろ引退説が浮上したが、『ヒガンバナ』が引退作になってしまうのか?

 まさかのワースト記録を更新してしまったのが、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)。同ドラマは、共に地上波プライム帯の連ドラ初主演となった有村架純高良健吾のW主演で注目を集めた。脚本は『東京ラブストーリー』(1991年/同)の坂元裕二氏とあって、単なるラブストーリーではなく、骨太のつくりとなっていたが、これが現代の若年層には受け入れがたかった模様。作品自体の評価は高く、初回は11.6%をマークしたが、第2話で早くも1ケタ台に転落。以後、2ケタに乗ったのは、第3話、第6話、第10話(最終回)だけで、全話平均は9.7%にとどまった。


 これで、尾野真千子主演『極悪がんぼ』(14年4月期)の9.95%を下回り、フジ月9史上、ワースト視聴率(平均)を更新してしまった。有村、高良にとっては屈辱となったが、このドラマを糧に、今後さらなる飛躍をしてほしいものだ。

 2ケタには乗らなかったが、健闘ぶりが目立ったのが、深田恭子主演『ダメな私に恋してください』(TBS系)。初回から第5話まで1ケタ台が続いたが、その後、巻き返して3回の2ケタを記録し、全話平均は9.5%となった。NHK朝ドラあさが来た』でブレークしたディーン・フジオカが準主役を務めたが、同局の情報、バラエティ番組で番宣しまくったことも、後半の挽回につながったようだ。14年4月期にスタートした同枠ドラマは、不振続き。
『ダメ恋』は1ケタ台ながら、これまでの最高視聴率(平均)をマークした。深田は同枠の14年10月期『女はそれを許さない』で主演したが、平均6.1%と爆死していただけに、少しだけリベンジできたといっていいだろう。

 SMAP解散騒動の渦中で、香取慎吾が主演した『家族ノカタチ』(TBS系)は初回から9.3%と、いきなりの1ケタスタート。結局、2ケタ台を記録したのは、第3話(10.3%)のみで、盛り上がりを見せることなく幕を下ろした。平均は9.0%で、草なぎと明暗を分けた。

 「旬を過ぎた」ともいわれる斎藤工が主演を務めた『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ系)は、初回こそ11.1%と2ケタ台だったが、以後はオール1ケタ。
第9話、第10話(最終回)は6.9%まで落ち込んだ。平均は8.8%だったが、窪田正孝のアシストがなかったら、もっと低い視聴率に終わっていた可能性も高い。

 広末涼子内田有紀のW主演となった『ナオミとカナコ』(フジテレビ系)は、テーマがDVとあって、ドン引きした視聴者も多かったようだ。視聴率は見事なほど全話1ケタで、最終回(第10話)は自己最低の6.8%。平均は7.5%で、厳しい数字で終えた。

 放送前から苦戦が予想されていた『お義父さんと呼ばせて』(遠藤憲一渡部篤郎主演/同)。名脇役の2人の主演でどこまで数字が取れるか注目されたが、現実は甘くはなかった。2人の好演でドラマ自体の評価は悪くはなかったものの、視聴率は全話1ケタで平均6.9%だった。

 まさかのビリとなったのが、“視聴率が取れる女優”だったはずの綾瀬はるかが主演した『わたしを離さないで』(TBS系)。初回からいきなり6.2%とズッコケて、6~7%台をウロウロするばかり。最高は第3話、第5話の7.7%では話にならない。テーマは「臓器移植」という重いもので、ひどく暗いドラマになってしまい、綾瀬を生かすことができなかった。これはもう、綾瀬の責任というより、原作の問題といってよかろう。同作は英国ではベストセラー小説で映画化もされたが、日本の民放プライム帯の連ドラとして作品化するのは無理があったようだ。いずれにせよ、綾瀬にとっては“黒歴史”となってしまった。現在放送中の大河ファンタジー『精霊の守り人』(NHK総合)で、汚名返上を図ってほしいものだ。

 深夜帯では、桐谷美玲が主演を務めた金曜ナイトドラマ『スミカスミレ』(テレビ朝日系)は平均6.5%。同枠ドラマではよくはないが、それほど悪いわけでもなく、剛力彩芽主演『天使と悪魔 未解決事件匿名交渉課』(15年4月期)の平均6.1%は上回った。桐谷は、昨年11~12月にゴールデン帯で放送された主演ドラマ『アンダーウェア』(フジテレビ系)で3~4%台を出す惨事となっていただけに、爆死とならず、やれやれといったところだろう。

 芸人・小籔千豊の連ドラ初主演作となった『マネーの天使 ~あなたのお金、取り戻します!~』(日本テレビ系)は平均3.7%と惨敗した。

 4月期は、大野智波瑠コンビの『世界一難しい恋』(日本テレビ系)、福山雅治主演『ラヴソング』(フジテレビ系)、松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士-』(TBS系)、宮藤官九郎脚本の岡田将生主演『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)、福士蒼汰土屋太鳳がタッグを組む『お迎えデス。』(同)など話題作がズラリそろっている。来期こそ、好視聴率連発で、視聴者を楽しませてほしいものだ。

<2016年1月期 民放プライム帯連続ドラマ 平均視聴率ランキング>
※2クールまたぐ『相棒season14』『科捜研の女15』(共にテレビ朝日)及び、テレビ東京系は対象外

1位 『スペシャリスト』(テレビ朝日系/木曜午後9時)12.7% 
2位 『怪盗 山猫』(日本テレビ系/土曜午後9時~)10.9% 
3位 『フラジャイル』(フジテレビ系/水曜午後10時~)9.8% 
4位 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系/月曜午後9時~)9.7% 
5位 『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』(日本テレビ系/水曜午後10時~)9.6% 
6位 『ダメな私に恋してください』(TBS系/火曜午後10時~)9.5% 
7位 『家族ノカタチ』(TBS系/日曜午後9時~)9.0% 
8位 『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ系/日曜午後10時30分~)8.8% 
9位 『ナオミとカナコ』(フジテレビ系/木曜午後10時~)7.5% 
10位 『お義父さんと呼ばせて』(フジテレビ系/火曜午後10時~)6.9% 
11位 『わたしを離さないで』(TBS系/金曜午後10時~)6.8% 

※参考 主な深夜ドラマ
☆『スミカスミレ』(テレビ朝日系/金曜午後11時15分~)6.5% 
☆『マネーの天使 ~あなたのお金、取り戻します!~』(日本テレビ系/木曜午後11時59分~)3.7%
(文=森田英雄)