旅行サイト「楽天トラベル」が昨年の国内旅行販売を集計した人気ランキングでは、1位が沖縄県で、特に宮古島・伊良部島エリアが前年比1.5倍と急上昇していた。

 宮古島といえば、覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けた元プロ野球選手の清原和博氏も釈放後に潜伏していたことで知られるが、実は一部セレブの間では「隠れパワースポット」として人気が高い。

2012年のNHK連続テレビ小説『純と愛』のロケ地にもなった伊良部島のホテルサウスアイランド(ドラマ内ではサザンアイランド)がそのひとつだ。

 このドラマは、主人公が不幸の連続に見舞われ、視聴者から「あまりに救いのない展開が多い」との批判が巻き起こり、主演の夏菜もクランクアップ後に「(精神が)崩壊した」と明かしたほどの過酷な撮影だったというが、その平均視聴率も17.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低調。すっかり社会現象となった『あまちゃん』の陰に隠れたものになった。

 しかし、一方でその夏菜には彼女を励ますメッセージが多数届くなど、一部のファンが高く評価していたのも確かで、特に中小企業や店舗経営などの自営業者たちが「苦しくても諦めない姿には心打たれた」との声を上げ、ロケ地のホテルを訪れているというのである。そうしたエピソードが広まり、現地では「経営者を元気づけるパワースポット」と言われているわけだ。

 実際に現地を訪れてみると、宮古島の空港からレンタカーで30分ほどで到着。
途中で渡る15年完成の伊良部大橋は全長約3.5キロ、橋の両側には水色の美しい海が広がる絶景だ。

 これだけでも行く価値があるのだが、橋を渡って少し進むと、ドラマそのままの白い外観のホテルがあった。1階がスーパーマーケットで2階のフロント横は広い座敷のある沖縄料理店。ただ、ホテル内部はドラマと違っていて、従業員によると「内部は別のスタジオで撮影したので、ウチは外観だけですよ」とのことだった。

「でも、おかげさまでドラマを見ていらしたお客さんも少なくないんですよ」

 さっそく宿泊客にインタビューをしてみたのだが、これがまさにドンピシャ。大阪の50代夫婦は、夫が飲食店の経営者で「店の経営が大変なので、ここに来てまた頑張ろうとやる気を出した」と言ったのである。


 彼らは宿泊2度目で、前回は昨年9月に訪れたあと、店の収益が少し上向いたのだとか。ほかに40代の自動車修理工場を経営する男性も「宮古島に泊まるなら、経営を頑張ったドラマの子に自分を重ねようと思って」と話した。ここに来たら幸運に恵まれるというスピリチュアルな話に根拠はないが、経営者が奮起する元気スポットであるのは確かなようだ。

 評判こそイマイチのドラマだったが、物語では父親がホテル閉鎖を決定しながらも、ヒロインが祖父との思い出を残すために、解体用の重機に身体を張って立ち向かったのだから、その点は経営者なら感情移入できるところもあるのだろう。この南の島でリフレッシュしたついでに中小企業の経営者たちが奮起するきっかけになるというなら、『純と愛』のストーリーも視聴率以上の価値があったといえそうだ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)