今のテレビドラマは、30代前半の女優を中心に回っている。その筆頭が綾瀬はるか(33)と石原さとみ(31)だ。



 綾瀬は今年『義母と娘のブルース』(TBS系)に出演。義理の娘を育てることになった元キャリアウーマンの亜希子を演じたのだが、機械のような亜希子が家庭の喜びを知ることで解放されていく姿をコミカルに演じ、コメディエンヌとしての新境地を開いた。

 一方、石原は野島伸司脚本の『高嶺の花』(日本テレビ系)と野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』(TBS系)で主演を務めた。『高嶺の花』で演じたのが、高飛車でエロかわいい華道の家元令嬢という過去の石原のイメージをなぞったものだったのに対し、『アンナチュラル』で演じた法医解剖医の三澄ミコトは理知的な女性で、今までとは違う多面的で人間味のある石原さとみ像の打ち出しに成功した。野木の脚本は、30代女性のイメージを更新し、主演女優を知性を感じさせるな年相応の大人として描くことで印象を柔らかくする。『フェイクニュース』(NHK)の北川景子(32)や『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の新垣結衣(30)も同様で、キャラクターが固定している女優ほど、野木の脚本に出ると年相応の女性として柔らかく見える。
いま一番、女優を魅力的に描く脚本家だ。

 ダークホースとして意外な活躍を見せたのが『恋のツキ』(テレビ東京系)の徳永えり(30)。映画館でアルバイトする31歳の女性を演じたのだが、彼氏と同棲しながら、高校生の男の子に恋をして肉体関係を持ってしまう姿がめちゃくちゃリアル。過激な性描写に挑むと同時に、自分に自信のない31歳の女性の内面を赤裸々にさらけ出していた。

 実力、知名度ともにトップクラスのスター女優が集う30代に対し、群雄割拠の激戦区となっているのが20代の女優たちだ。彼女らの多くは、NHK朝ドラで主人公や脇役を演じることでキャリアを積んだ者が多い。


 土屋太鳳(23)、波瑠(27)、高畑充希(27)、有村架純(25)といった今年民放ドラマで主演を務めた女優は朝ドラヒロインを経験しており、いまや朝ドラを中心にテレビドラマは回っていると言っても過言ではない。しかし、朝ドラの印象が強いため、そのイメージからの脱却は大変そうで、『中学聖日記』(TBS系)で男子中学生と恋愛する教師の役を演じた有村のように、ショッキングな役に挑んだり、土屋や波瑠のように、とにかく出演作を増やすことでイメージの更新を図っているが、まだまだ模索中という感じだ。

 むしろ、朝ドラの脇役で光る演技を見せた松本穂香(21)、清野菜名(24)、広瀬アリス(24)といった女優の方が、自由に演じられるため、大きく飛躍しそうな気配がある。

 中でも注目なのが、現在『まんぷく』(NHK)に出演している岸井ゆきの(26)。童顔で小柄な体格を生かして10代の少女を演じ、話題となっている。それ以前にも『モンテ・クリスト伯』(フジテレビ系)等の作品で光る演技を見せていたが、今後、主演作が増えそうだ。


 10代の若手女優は、『半分、青い。』(NHK)でヒロインを演じた永野芽郁(19)のような例外を除くと、若者向けドラマが減っていることもあり、活動の舞台は、少女漫画原作のティーンムービーや配信ドラマとなっている。

 着々とキャリアを積み重ねているのが、昨年、映画『君の膵臓をたべたい』のヒロインとして注目された浜辺美波(18)だ。今年は、『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)と『賭ケグルイ』(MBS)という2本の連ドラに出演。一見、清純派だが、会話のイントネーションや仕草に小技を効かせることで独自の個性を出してくるのが演技の特徴だ。
中でも『賭ケグルイ』で演じた、ギャンブルジャンキーの女子高生・蛇喰夢子は素晴らしく、賭け事に興奮して恍惚とした表情を浮かべる場面は、禍々しい色気を放っていた。

 正統派美少女として今後、期待できそうなのが高橋ひかる(17)。2014年に第14回国民的美少女コンテストでグランプリを受賞した彼女は、武井咲剛力彩芽の所属するオスカープロモーションの秘密兵器。今年は初の主演となる配信ドラマ『パフェちっく!』(FOD)と『高嶺の花』に出演した。まだ作品数は少ないが、いずれブレイクすること間違いないだろう。

『透明なゆりかご』(NHK)に『宇宙を駆けるよだか』(NETFLIX)と、出演作に恵まれたことで大きく飛躍したのが清原果耶(16)。
14歳の時に『あさが来た』(NHK)で注目された清原だが、役に合わせて演技を変化させていくタイプだ。張り詰めた緊張感を、表現できる、貴重な存在である。

 最後に、演技力において10代最強といえるのが蒔田彩珠(16)。是枝裕和監督の映画では常連で、『万引き家族』にも出演している。今年のテレビドラマでは坂元裕二脚本の『anone』(日本テレビ系)と『透明なゆりかご』に出演。どちらもゲスト出演だったが、圧倒的な存在感を見せていた。
そろそろ連続ドラマの主演で、彼女の演技をじっくりと堪能したいものである。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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