イラスト/渡辺裕子

 とうとう『らんまん』も第13週、物語の前半が終わりました。万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)の婚礼、タキさん(松坂慶子)の旅立ちなど、大きな区切りをいろいろ見届けて「いい最終回だった……」としみじみと涙を拭いた金曜日でしたが、いやいやちょっと待って、万太郎はまだ植物学の図鑑を一冊も出せてないし、最終回どころか何も始まってなかった。

 しかし、豪華な婚礼の衣装に身を包んだ寿恵子ちゃんの美しさ、万太郎や分家のみなさん同様、私も口あんぐりしちゃいました。金屏風に反射する柔らかい灯りに照らされて、素晴らしかったですね。でも、ここから一転、お金を得る手段がない万太郎の妻となって暮らすことになる寿恵子、大丈夫なんでしょうか。峰屋の当主として生まれ、たくさんのものを最初から持っていて、周りに助けられるのが当たり前だった万太郎は、彼女と自分が結婚によって失うかもしれないことについて、何もわかってないんじゃないだろうか。

 そして結婚という冒険に向けて、寿恵子ちゃんは佐川のお料理を覚えたりいろいろと変わろうとしているけど、万太郎は何一つ変わる気がないんですよねー。ごはんは一緒に食べないし、抗議する寿恵子に「邪魔じゃき!」と暴言を吐く。

これはあんまりだとぶち切れる寿恵子ちゃんの愚痴を聞いて、そのまま万太郎の悪口大会を開催する竹雄(志尊淳)と綾(佐久間由衣)、ナイスフォロー。しかし峰屋チーム、万太郎が幼い頃病弱だった印象が強いせいか、なんだかんだと甘いんですよねえ。大人になってからの元気な万太郎しか知らない寿恵子は、彼の人生に初めて現れた、万太郎を思い切り叱れる人物かもしれない。彼女によって、ちょっとは自分勝手な行動が減るといいんですけど。本当に、万太郎の周りで世話をする人たちは大変ですよね。

 そんな大変な役目を長年請け負ってきた竹雄の恋も、ようやく実ってよかったー。

酒屋の組合を作ろうと説得しに走り回っても、女であることを悪く言われてうまくいかない綾を、「あなたは呪いじゃない、祝いじゃ。あなたこそ峰屋の祝いの女神じゃき」と励ます竹雄も、「竹雄……面倒くさいき」と返す綾も、最高でしたね。酒が大好きな飲んだくれな女神の綾と、そんな女神を支え続ける竹雄。好きな道を突き進む誰かを支えることに関してはプロフェッショナルな竹雄、彼が綾のそばにいてくれたら峰屋は絶対大丈夫。

 しかし、竹雄が綾と生きる決意をしたということは、同時に万太郎のもとを離れるということであり……とうとう、万太郎竹雄コンビの解散の日がきてしまってさみしい。自分がいなくなっても困らないように、助手のやり方を丁寧に寿恵子に教え、寿恵子の万太郎への不満を聞き、本人を叱りつける。

こういう仕事の引継ぎをしてくれる前任者の竹雄、有能ですよねえ。薫風亭でもボウイとしていい仕事をしていたんだろうし、あの「竹さまー」と通ってくれていた常連女子たちがぱたりと来なくなったら、あの店は大打撃だろうなあ。長屋の丈之助さんも寂しいだろうなあ。

 死が近づくタキさんは、万太郎と綾の未来を見ることはできない。けれど、病になった桜が接ぎ木として次の世代へと命をつなぐように、憤る分家の人たちに深く頭を下げ、残される若い人たちのために道を作る。なにかと笑い物扱いにしていた分家のみなさんの長年の思いを知り、私もタキさんと一緒に頭を下げたくなりました。

みんなで峰屋のピンチを乗り越えてくれますように。「らんまんじゃ」と笑顔でつぶやいたタキさん。タキさんの人生そのものがらんまんで、残されたみんなの人生もらんまん。満開の桜がとても美しい最終回でした……いや、だから最終回じゃないって。第一話の最初のシーンに戻って草に話しかける万太郎、彼と寿恵子の冒険はここから始まる。後半も楽しみ!

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日刊サイゾー2023.06.05

■番組情報
NHK連続テレビ小説『らんまん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子寺脇康文広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂宮澤エマ、池内万作、大東駿介成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純中村蒼田辺誠一いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman