NBA史上最高のプレイヤーだとたたえられている、元プロバスケットボール選手のマジック・ジョンソン(57)。1980年代にロサンゼルス・レイカーズが成し遂げた5回の優勝に貢献し、ファン投票によりNBAオールスターゲームに通算12回選出。
そんな彼がHIVに感染していることをカミングアウトし、レイカーズから引退すると発表したのは91年11月7日のこと。HIV感染者に対する偏見が吹き荒れていた時代に記者会見を開き、「HIVに感染したので、本日付でレイカーズを辞めなければならなくなりました。エイズは発症していませんが、HIVウイルスに感染したので。妻はHIV陰性ですので問題ありません。ま、長生きするつもりですから。
「ジョン・F・ケネディ大統領暗殺に匹敵する」と表現されるほど全米に大きなインパクトを与えた、マジックのHIV感染告白。当時、HIVは「同性愛者による性行為」「薬物依存者が注射器の回し打ちで」感染するものだというイメージが強かったが、マジックが異性とのコンドームなしのセックスでHIVに感染したと明かしたことで、感染者に対する偏見が少しずつ変わるようになった。
マジックは、引退後の92年に開催されたバルセロナオリンピックで、NBA史上屈指のスター選手たちが集まった「ドリームチーム」のメンバーとして大活躍し、金メダルを獲得。
そんな彼が7日、米大手ゴシップ芸能サイト「TMZ」の突撃取材に応じ、HIV感染を発表した日からちょうど25年たったことに関して、「自分が元気に生き続けられていることは幸せに思っているが、この25年間に、多くのHIV感染者が亡くなっているからね」と発言した。
同サイトが公開した突撃取材映像は、レストランから出てきたマジックがリポーターたちを見て「なんか起こったのかい?」と気さくに話しかけるところからスタート。
「あなたの衝撃的な告白から25年過ぎましたが」
「あぁ、その通りだね」
「多くの人が、あなたの告白が、この病に対する認知度や同情を高めたと評価しているわけですが、25年目を迎え、どう思いますか?」
「光栄だと感じるね。多くの命を救えたわけだからね。でも、亡くなった命も多いんだよ。まだまだ先は長い。(略)(感染率は)下がっているけど、HIVやエイズとの闘いはまだまだ続くんだよ。感染予防教育を広めていかないといけないし。
そして「あれから25年後の今も自分はここにいる……いや、本当に信じられないね。今でもあの記者会見のことを、しっかり覚えている。みんなが、チームメイトが応援してくれて」「ファンも応援してくれて。きみたちも応援してくれてね」と、力強い口調で感謝の気持ちを述べた。
リポーターは続けて「今日は、ほろ苦い日じゃないんですか?」と質問。マジックは、「そりゃね」「いろいろあったからね。
「自分は完治したわけではない」と気弱な一面も見せているマジックだが、バスケットコートで奇跡を起こした男は、HIV/エイズとの闘いにおいても奇跡を起こしている。彼の生き方が病への偏見を緩和させてきただけに、今後もスポークスマンとして活躍できるよう、寛解状態を保ってほしいと願わずにはいられない。