「本当にフェイクニュースなの?」と思ってしまう、トランプの日ごろの言動

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないアメリカ。流行の中心となっているのは、トランプ大統領の出身地であるニューヨーク州ニューヨーク市。

大統領は、同州とその近隣州を対象に移動制限を検討中だと明かしており、全米は「一体、この危機はいつまで続くのか」と絶望感に包まれている。

 そんな中、トランプ大統領がニューヨーク市出身の元メジャーリーガーで、「ジェニファー・ロペスの婚約者」「TikTokにハマって連投しまくっているセレブ」としても知られる、アレックス・ロドリゲス(愛称Aロッド)に「新型コロナウイルス対策のアドバイスを求めた」と米大手メディア関係者がツイート。「なぜ、Aロッドに!?」とネット上が騒然となった。

 問題のツイートだが、米三大ネットワークのひとつ「ABC」局のニュース番組『ABC News』シニア編集プロデューサーのジョン・サントゥッチ、同局ホワイトハウス特派員キャサリン・ファウルダース、『ABC7 Eyewitness News』レポーター、セファン・キムらが、現地時間3月27日、それぞれの公式Twitterアカウントに投稿したもの。

 それぞれ「複数の筋から得た情報」として、ジョンは「トランプ大統領はホワイトハウスの大統領執務室からアレックス・ロドリゲスに電話し、コロナウイルス対策に関する助言を求めた」、キャサリンは「トランプ大統領は今週、元野球選手のアレックス・ロドリゲスに電話。彼と彼の婚約者のジェニファー・ロペスに、コロナウイルス対策への助けを求めた」、セファンは「今週、トランプ大統領が元(ニューヨーク)ヤンキースに所属していたアレックス・ロドリゲスに電話をかけ、コロナウイルス対応に関する助言を求めた」「2人はいい感じのやりとりをしていたということだ」と伝えた。

 これらのツイートにネット上では、「Aロッドに電話って、どういうこと!?」ととの批判が噴出。自宅に閉じこもり、ストレスがたまっているネットユーザーたちから、「は? 感染症のパンデミック真っただ中に、元アスリートに電話して何が得られるの?」「この深刻な状況の中で、Aロッドに電話する意味がわからない」「(大統領の支持者として有名なラッパー)カニエ・ウエストがつかまらなかったのかな?」などと、たちまちトランプ大統領に対するバッシングが巻き起こった。

 トランプ大統領だが、2013年にアレックスのステロイド(筋肉増強剤)使用が発覚した際、Twitterで「ヤンキースは直ちにAロッドへの報酬支払いを停止すべきだ。ヤク中だと言わずに契約書にサインしたのだから」などと痛烈に批判。酒もタバコも薬物もやらないと公言しているトランプ大統領は、アレックスのステロイド使用疑惑が報じられていた12年にも「ヤクなしだと、以前と同じプレーができないだろう。ヤンキースは契約し直すべきだ」とディス。

あまりにもひどい罵倒に、「2人は仲が悪いのだろう」とウワサになったものだった。

 アレックスは、01年にテキサス・レンジャーズから「2億5,200万ドル(約270億円)の10年契約」を提示されてあっさりと移籍したため、長年所属していたシアトル・マリナーズのファンから激しく嫌われていた。ステロイド使用に関しても、疑惑段階では否定し続けていたのに、使用が厳しく罰則化されると一転して使用を認めたため、「打算的な男」と批判を浴びた。

 ステロイド使用を認めた後も「自分のキャリアと名声を奪おうとした」と逆ギレしてメジャーリーグ機構を提訴するなど、“メジャー最大のヒール”として大バッシングされるように。14年1月にステロイド使用で同年の全試合出場停止処分を受け、15年に復帰したものの、16年には成績不振で実質クビという形で現役を引退した。

 このように悪者扱いされていたアレックスだが、引退後に米スポーツ専門チャンネル「ESPN」や「FOX」局の解説者・キャスターを務めるようになると、「怖い顔だけどおもしろい」「紳士的」と好感度がアップ。

18年にはヤンキースのGM特別アドバイザーに就任し、歌手・女優のジェニファー・ロペスとの交際発覚後は「ジェニファーに尽くす、ダンディーなおじさん」と認知された。最近では「TikTokにジェニファーとの動画を連投している幸せそうなおじさん」として若い層からも人気を得ている。

 推定総資産3億5,000万ドル(約375億円)のアレックスは、「最もリッチな元/現MLBプレイヤー」1位にランキングされている富豪。実業家としても活躍しており、好感度が上がったせいか、トランプ大統領も彼を見直したよう。19年1月に大統領が所有するゴルフ場で開催された、ヤンキースのオーナーの名が付いたゴルフ大会で仲良く会話していたと報道されている。大統領は「きみはなかなかいい仕事をしてるねぇ」と評価し、アレックスもゴルフ場の素晴らしさを「数多くあるあなたの最高傑作のひとつだ」と褒めたたえていたと伝えられた。

 今回のABC関係者のツイートにも、一部のネット民からは「ニューヨーカー、金持ち、実業家という共通点のある友達だからじゃない?」「Aロッドは、根は真面目だし。斬新なアイデアが得られると思ったのかも」と好意的な声が上がっていた。

 しかし、翌28日になると、トランプ大統領はTwitterでこの報道を「またまたフェイクニュースだよ!」と否定。ネット上では、「この国のジャーナリストって本当に腐ってるよね」とABCやメディアに対する大バッシングが巻き起こり、「トランプ大統領のイメージダウンを狙ったフェイクニュースを流したら逆効果だって、いつになったら学ぶのかね」などと、“大統領選に向けたメディアの情報操作”と嫌悪感をあらわにする者が続出している。

 アレックスは、今回の騒ぎについてはまだコメントしていないが、Twitterには、不要不急の外出規制をされている国民に向けた「生活ペースを落として、家族と一緒に時間を過ごすことがいかに大切かと気づかせてくれる、よい機会だと思おう。家族みんなでボードゲームをしたり、TikTokで恥をかいたり、料理したり、おしゃれをしたり」というアドバイスを投稿。

「どんだけTikTok好きなの!?」と、あきれられている。