北朝鮮・平安南道当局が、毎日きちんと農場に出勤している農場員を対象に、「先に配給し、後で控除する」方式の食糧配給制度を導入するよう指示を出した。夏の農繁期における出勤率の低下を防ぐ狙いとみられる。
デイリーNKの同地域情報筋によると、道農村経理委員会は各農場に対し、「6月15日から7月31日まで、一日も欠かさず農場に出勤する者に限り、労働供出量に応じて『先配給・後控除』形式で食糧を配給せよ」と指示したという。
これを受けてある農場では「事前同意書」を提出した者に限って、毎日出勤した農場員に食糧を配給する方針を取っている。同意書には「受け取った量の3倍を秋の分配時に控除する」と明記されており、農場員はこの条件に署名のうえで配給を受け取る仕組みだ。
仮に、6月から10月までの4カ月間で計算すると、金利に相当する2割分の日利は約1.7%となり、年利換算では600%を超える超暴利だ。
配給される食糧の品目は白米、古いトウモロコシ、ジャガイモ、小麦粉などで、1人1日あたり560グラムが基準とされている。
北朝鮮では、端境期になると極度の空腹により農場に出勤できない農民が続出し、中には生き延びるために農村を離れる者もいる。その対策のための配給なのだ。
ただし、農場員たちの間では強い不満も噴出している。「今もらわなければ飢えるが、秋に3倍引かれたらまた飢える」と嘆く声が上がり、幹部たちが「欲しい者だけ受け取ればいい」と冷たく突き放すような態度を見せていることも反発を招いている。
「秋に3倍」という制度は、北朝鮮の農村で長年問題視されてきたヤミ金の手法と変わらない。貸し手が民間から農場や地方当局に代わっただけで、農民が強いられる苦境に変わりはない。また、その利子が国家や幹部の懐に入ることは言うまでもない。