北朝鮮で空軍司令部傘下の運転兵養成所で卒業シーズンを迎える中、軍幹部たちが自分たちの公用車を運転させる兵士の選抜に、妻たちまで動員していると、デイリーNKの軍内部情報筋が伝えた。
情報筋によると、空軍の幹部は、運転兵養成所を卒業する19歳か20歳の下戦士(二等兵)のリストを妻に渡したり、直接会わせたりして、公用車の運転手の選抜を行っている。
空軍の人事部署がまとめたリストには名前、出身地、両親の職業、車両整備の経験、運転技能の評価に加え、顔写真が貼られている。まるで娘のお見合い相手を選ぶかのように運転手を選ぶのだ。
幹部の妻たちは、ひとりずつ比較、検討しながら、「この子のほうが穏やかな印象に見える」「背が高い子がいい」「里党委員会書記の息子より貿易会社の副社長の息子の方がいい」「平壌より咸鏡道や黄海道、江原道出身の方がまし」などと好みの運転手について意見している。
妻たちのチェックポイントは、運転兵が裕福な家庭の出身かどうかだ。おそらく立ち居振る舞い、外見、言葉遣いなどを気にしてのことだろう。また、同郷の人を選ぼうとする傾向もある。
これらのプロセスはいずれも軍の規定や法律に定められたものではない。単に幹部やその妻たちのわがままに合わせるために、人事部署の担当者はこんな面倒な仕事を押し付けられているのだ。
情報筋は、「以前から幹部の公用車の運転手選抜にはコネが関わることがあったが、今年のように幹部たちが人事文書を自宅に持ち帰り妻に見せ、直接選抜に関与させるようなことは珍しい」と述べた。
北朝鮮では、幹部公用車の運転兵は運転にとどまらず、幹部の妻たちと密接に接し、買い物など様々な家の用事の手伝いをする。そのため、妻たちの発言権がますます強まっている。
情報筋は「運転手養成所の卒業者たちもこの状況を知らないわけではない」とし、「彼ら自身も『今は運転技術だけでは足りない。
さらに、「幹部車の運転手は実質的に幹部の家に同居することになるため、選抜をめぐるこのような状況を見て、卒業者たちの間では『まるで婿入りするような気分だ』という冗談も飛び交っている」と付け加えた。