北朝鮮は、全国の農場に穀物生産量の増加を毎年指示している。しかし、深刻な労働力不足により、思うような成果は上がっていない。

こうした中で各農場に設置された「青年分組」は、これは兵役を終えて「嘆願」した体で送り込まれてきた若者の定着を図る制度だ。同年代の若者を一つの分組にまとめて働かせれば、自然と協力心や競争心が芽生え、農作業への意欲も高まるだろうという目論見がある。

一方、農場の幹部は若者の生活や作業上の問題を丁寧に見て回り、彼らが農村に適応できるように特別な配慮をしてきたという。

しかし、こうした制度的・心理的な支援にもかかわらず、若者たちは過酷な労働や生活難に耐えきれず、農村を離れる例が後を絶たない。

各農場では、農作業の代わりに畜産や警備などの比較的楽な仕事を任せるなどの対応も取ってきたが、それでも離脱を防ぐには限界があるとの声が上がっている。

デイリーNKの内部情報筋は「これまで青年分組のような単位を作って得られた成果といえば、分組内の数名の熱心な者を初級幹部にして農村に定着させたことくらいだ」と述べ、「しかし、出身成分などの理由から最初から幹部になることに関心も意欲もなく、『これ以上は上がれない』とあきらめてしまう若者のほうが多く、彼らの離脱は今も続いている」と語った。

北朝鮮は厳格な身分制度を維持しており、出自が「悪い」とされれば進学や昇進の機会は閉ざされる。農場にとどまっても一生を平の農場員として過ごさねばならず、その身分は代々引き継がれる。この現実に絶望した若者は、農村を脱出して都市部に向かい、商売で人生を逆転させようとする。

また、生産量の増加を求められる圧力や統制が強まる兆しを感じると、若者たちは農村からの離脱を決断するという。

情報筋は「作業班の党細胞秘書や青年同盟秘書、宣伝員など農場の初級幹部たちは、無断離脱した若者を探し出して連れ戻すのが主な業務になっており、本来の仕事が麻痺している」と述べ、「農場の現状はまさに崩壊寸前だ」と語った。

職業選択の自由も、居住・移動の自由もない中、国家の都合で農村に閉じ込められる「嘆願事業」。

だが若者が夢見るのは、楽で儲かる韓流ドラマのような暮らしだ。価値観の乖離はあまりに大きく、その溝を埋めるのは容易ではない。

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