北朝鮮の農場では現在、肥料を追加で施す追肥作業が進められている。普段は低迷しがちな農場員の出勤率も向上している。

忙しいからではない。そこに“得るもの”があるからだ──と、デイリーNKの平安南道の情報筋は伝えている。

北朝鮮有数の穀倉地帯である粛川郡一帯の農場では、小麦や大麦の収穫後に裏作として植えられたトウモロコシに、追肥として尿素肥料を施す作業が連日続けられているという。

さらに、稲の穂が出る前に与えると最も効果的とされる複合肥料(いわゆる「穂肥」)を、適切な時期と品質で供給するための準備も着々と進んでいる。

連日の猛暑にもかかわらず、農場員の出勤率は平時よりも高く、総動員期間でもないのに9割以上の出勤率を記録する農場も少なくないとされる。

その背景について情報筋は、ちょうど尿素肥料と複合肥料が農場に同時供給されている時期であり、農場員たちがそれを生活の糧にする機会と捉えているためだと説明する。この時期に毎日農場に出て働きながら、少しずつ肥料を自宅の家庭菜園用に持ち帰って使っているという。

情報筋はこう語る。

「農場員たちは作業服の前ポケットに肥料を入れて撒いている。機械もなく、人の手で全て行わなければならないため過酷な作業だが、こうした時期に自分の農業に役立つ肥料を確保できるので、自分の意志で働きに出る」

かつては、肥料をくすねたと密告する者がいたり、取り合いで口論が起こることも多かったが、最近ではそうしたトラブルもあまり見られなくなったという。

「皆、自分たちの暮らしぶりは分かっている。今はお互いに見て見ぬふりをすることが“共に生きる知恵”として受け入れられている」と情報筋は付け加えた。

このような“横流し”や“私的流用”は、北朝鮮では広く行われており、市場で販売される商品の一部もそのようにして出回ったものだとされている。ただし今回の場合は、自宅用に少量持ち帰る程度であり、深刻な問題とは見なされていないようだ。

なお、粛川郡の農場では、猛暑による熱中症を防ぐため、作業時間を作業班や分組ごとに柔軟に調整する措置も取られていることがわかった。

かつては作業時間の調整はほとんど行われず、日中の暑さが厳しくなれば、農場員たちが“空気を読みながら”日陰で休むのが一般的だった。しかし最近では、最初から作業時間を調整する方針が導入され、正午の猛暑を避けて早朝や夕方以降の比較的涼しい時間帯に作業を行う方式が、多くの農場で定着しつつあるという。

情報筋は次のように語った。

「朝5時前から農場に出て数時間作業し、日差しの強い昼間は一旦休憩。午後4時以降に再び農場に出て、日が暮れるまで作業を行う方法が一般化している。早朝に出勤するのはつらいが、炎天下で働くよりはましなので、農場員たちも柔軟な作業時間の調整に前向きな反応を示している」

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