米軍の空爆でイランの最高指導者アリ・ハメネイ師が死亡したとの報道は、北朝鮮住民の間に驚きとともに、独裁的指導者の排除を「うらやましい」と受け止める複雑な感情を呼び起こしている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、中国遼寧省瀋陽に駐在する北朝鮮の貿易幹部は「米軍の爆撃でハメネイが死亡したことは皆知っている。

暴君が消えたのは良いことだ」と語った。ハメネイ師は精神的指導者として長年君臨してきた存在で、「我が国の金正恩氏のように神格化された支配者だった」と指摘する。

同幹部はRFAに対し、「37年に及ぶ統治の間、イランは発展どころかむしろ後退したと聞く」と述べ、「ハメネイの死が伝わると市民が街頭で歓声を上げたという。我々にも良い知らせがあってほしい」と語った。

こうした感情の背景には、北朝鮮経済の深刻な苦境がある。国際制裁と長期化した国境統制の影響で市場活動は萎縮し、物価は高止まりしたままだ。地方では食糧不足が慢性化し、外貨稼ぎを担う貿易部門も厳しい状況に置かれている。「実際にはイランより我々の生活の方が厳しい」との声も少なくない。

一方で、指導部のぜいたくな生活ぶりに対する反感も静かに広がっている。近年は金正恩総書記と娘ジュエ氏が高級衣装や豪華な行事に登場する姿が国営メディアで頻繁に報じられており、生活に苦しむ住民との落差が際立っている。

表立って批判することはできないものの、「自分たちは食べるのにも苦労しているのに、指導者一家は別世界にいる」との不満が漏れるという。

今年に入り、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束の情報が広がったこともあり、独裁体制の終焉をめぐる話題は地下で静かに共有されている。

公然と語ることはできないが、「イランは良いな」というつぶやきは、閉塞した社会に生きる人々の切実な願望の表れでもある。

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