全国各地のおいしい食べ物、どれくらいご存じだろうか。近年では、ECサイトやふるさと納税で簡単に各地の食べ物を取り寄せできるだけでなく、東京にアンテナショップを出店する都道府県、市区町村も増えている。
そうしたことで、現地を訪れたことがなくても、全国のおいしい食べ物を気軽に食べられるようになり、身近に感じる人も増えてきたことだろう。

 では、多くの人が選ぶ食事がおいしい人気の都道府県や市区町村はどこなのか。最新版「食事がおいしい都道府県&市区町村ランキング2019」見ていこう。

 このランキングは、47都道府県と国内1000の市区町村を対象にした、認知度や魅力度、イメージなど全84項目からなる「地域ブランド調査2019」によるもので、今年で実施は14回目。「食事がおいしいランキング」は、「各自治体にどんな魅力があると思いますか?」という問いに対して、「食事がおいしい」と回答した人の割合(%)から算出した(有効回答数:全国3万1369人)。

「食事がおいしい」のはどこ?
北海道が1位、市区町村も札幌市が1位に

「食事がおいしい都道府県ランキング2019」1位は、前年に引き続き、海の幸も山の幸も豊富な北海道となった。2位は福岡県、3位は大阪府と、3位までは前年と全く同じ順位となった。1位の北海道は「食事がおいしい」と答えた人が41.5%と、2位の福岡県(25.5%)以下を圧倒している。

 そして「食事がおいしい市区町村ランキング2019」1位は、こちらも前年と同じく札幌市となった。2位は函館市、3位は小樽市と、ベスト3を北海道が独占している。そのほか、11位は旭川市、13位は帯広市となり、北海道の市区町村はベスト15に5つもランクインした。

スープカレー、シメパフェ…
次々生まれる札幌グルメが最大の魅力に

 市区町村ランキングで1位になった札幌市は、「観光で行きたい市区町村ランキング2019」でも1位の函館市に次いで2位に選ばれており、食を求めて訪れる人は非常に多い。

今回、札幌市に対して「食事がおいしい」と答えた人は34.9%と、前年の30.9%から大きくアップしている。

 しかし、同調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長は、「もともと札幌市には独自の食文化はあまりなく、北海道の良いものの寄せ集めだった」と指摘する。

 以前の札幌グルメといえば、カニ、ビール、じゃがいも、メロン、ラーメンなど、北海道のほかの地域を産地としたものばかりが打ち出されており、加工品はあまり目立っていなかった。しかし、近年ではそのラインアップが大きく様変わりしている。

 以前からあったものの全国区ではなかったジンギスカンや札幌発祥のスープカレーをはじめ、札幌で新たに生まれた「シメパフェ」、さらに濃厚なみそラーメンが人気の「すみれ」など独自の工夫を凝らしたさまざまな札幌ラーメンなどが、全国から人気を集めるようになっているのだ。

 このように独自の札幌グルメが盛んになった理由の1つに、「ドゥーチェ・プロジェクト(“DO!知恵の輪”プロジェクト)があるのではないか」と、田中社長は語る。「ドゥーチェ・プロジェクト」とは、2014年に北海道経済産業局が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、北海道の魅力を発信するためにさまざまな挑戦をするもの。

 道内の有識者や学生などの若手を中心にした意見交換会では、北海道の食に関して「食材の力だけのビジネスモデルを変えなければならない。加工、見せ方を『食べたい』につなげるストーリー作りが必要」という意見が寄せられており、他県から見れば魅力ある北海道でも住民が危機感を持っていたことがわかる。こうした危機意識の共有が功を奏したからか、札幌グルメが次々と生まれ、今や欠かせない観光資源になっているのだ。

 同様の動きは、2位の函館市でも見られている。函館市は、かつては「活イカ」のイメージが非常に強かった。

しかし今では、豪華なホテルの朝食ビュッフェを用意するなど、新たな魅力が生まれている。

「『朝食戦争』といえるほど、函館市内の各ホテルは豪華な朝食ビュッフェを用意して、しのぎを削っている。例えば、ラビスタ函館ベイでは、いくらやイカなどの豪華な海鮮を自由にのせて作れるオリジナル海鮮丼も人気だ」(田中社長)

 さらに、最近では函館市内にある旧イギリス領事館などを中心に、優雅にアフタヌーンティーを楽しめるスポットも増えてきているという。

 一方で3位の小樽市は、前年2位から順位を1つ落とし、「食事がおいしい」と答えた人の割合は29.5%から27.7%へと減少した。

 これについて田中社長は、「かつては『すしの街』というイメージが小樽市にはあったが、今や全国各地でおいしいおすしが食べられるようになった。イメージが弱くなり、それに代わるものがあまりないことが要因ではないか」と分析している。

(ダイヤモンド編集部 林 恭子)

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