若者の地方から都市部への流出は、人口減少が急速に進む今、深刻さを増している。最近でこそ、若者の地方移住に注目が集まっているが、それもごく一部分で起きている現象にすぎない。
将来を担う若者に住み続けたいと思われることは、これからも自治体が存続し続けるために重要な要素であるのは間違いないだろう。

 そこで、各都道府県に住む20代へのアンケートによって彼らの住み続けたいという気持ち、すなわち「定住意欲度」を明らかにしたのが、ブランド総合研究所の実施した「都道府県『定住意欲度』ランキング」だ。

 このランキングは、ブランド総合研究所が住民視点で地域の課題を明らかにする『地域版SDGs調査』によるもの。それでは早速、47都道府県に住む20代へのアンケートで分かった「20代が住み続けたい都道府県ランキング(20代の都道府県『定住意欲度』ランキング)」を見ていこう。

※アンケートはインターネットにて実施。1万5925人から回答を得た(一部を除き各都道府県から約340人)。

調査時期は2019年7月12日~19日。住民に対し「今後も住み続けたいと思うか」という問いを投げかけ、「ぜひ住み続けたい」「できれば住み続けたい」「どちらでもない」「機会があれば他県に移住したい」「すぐにでも他県に移住したい」の5段階から1つを選んでもらった。回答はそれぞれ100点、75点、50点、25点、0点として全回答の平均を「定住意欲度」とした。また今回は、20代の結果のみを抽出してランキングを作成した。

1位は福岡県、2位大阪府、3位北海道に
20代が住み続けたい都道府県ランキング

「20代が住み続けたい都道府県ランキング」1位は、福岡県で80.6点だった。2位は大阪府(80.4点)、3位には北海道(78.0点)が続いた。

すべての年代を対象にした「住み続けたい都道府県ランキング」では、1位が北海道(84.2点)、2位福岡県(80.6点)、3位大阪府(78.3点)だったことから、トップ3の顔ぶれは変わらず、その順位が入れ替わる形となった。

 一方の下位に目を移すと、45位は秋田県(57.6点)、46位青森県(56.8点)、そして最下位(47位)は徳島県(55.5点)だった。

20代では2位の大阪府
30代では順位急落の不思議

 今回のランキングで上位となった都道府県の中でも注目したいのが、2位の大阪府だ。

 1位は福岡県だったが、アンケートに「ぜひ住み続けたい」と回答した20代の割合は、大阪府が54.3%と、福岡県(50.7%)を上回り、全国1位になっている。

 ところが、だ。大阪府のこれらの順位や割合は、30代のみを対象にした調査では大きく低下している。

「30代が住み続けたい都道府県ランキング(30代の都道府県『定住意欲度』ランキング)」で大阪府は18位となり、20代の2位から大きく順位を下げている。具体的に見ていくと、30代で「ぜひ住み続けたい」と答えた人の割合は37.9%と、20代の結果から16.4ポイントも下落した。

 他の都道府県の状況を見てみると、30代で「ぜひ住み続けたい」と回答した人の割合は、北海道で58.8%、福岡県で47.9%と、それぞれ20代のときと比べて増加しているか、微減にとどまっている。これらと比較すると、大阪府において20代と30代で評価が全く異なっていることは、ユニークな結果といえるだろう。

 一方で、20代からの評価はそれほど高くなかったにもかかわらず、30代からは高い評価を得ている都道府県もある。それが、高知県だ。

「20代が住み続けたい都道府県ランキング」では34位(64.0点)にとどまり、「ぜひ住み続けたい」と答えた人の割合は25.6%とあまり振るわない結果だった。しかし、30代では1位福岡県(82.0点)、2位北海道(80.9点)に次いで、愛知県と同点の3位(80.1点)となっている。さらに、「ぜひ住み続けたい」と答えた割合は、52.5%と20代の倍以上になった。

 こうした結果を受けて同調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長は、次のように語る。

「20代と30代で、地元への評価が大きく異なることがこの結果からも明らかになった。行政は若者向けに施策を行う際、20代と30代を1つのかたまりとして考えがちだが、一緒くたにしてはいけない」

 年代によって評価が異なるのは、家庭のある人が多いか、単身の人が多いかなどの要因も背景にあるだろう。

いずれにせよ、行政などが20代と30代を同じカテゴリにまとめて「若者向けの支援を行う」という乱暴な方法は、決して望ましくないだろう。

(ダイヤモンド・セレクト編集部 林 恭子)