ランキング上位の顔触れは?
今回は、上場企業の有価証券報告書に記載された平均年収のデータを使って、「年収が高い小売会社ランキング」を作成した。対象は単体従業員数が50人以上の上場小売企業で、期間は2019年12月期~20年11月期。
長引くコロナ禍により百貨店や外食などが苦境に陥る一方、巣ごもり需要をとらえた食品スーパーは好調と、明暗が分かれた小売業界。
だが、年収の高低と業績の好不調は、必ずしも一致してはいない。
早速、ランキングを確認していこう。
1位のファーストリテイリング小売で唯一の年収900万円台
1位は「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。平均年収は、小売業界で唯一となる900万円台となった。平均年齢もランキング上位10社の中で最も低い。
2位は三越伊勢丹ホールディングスで、869万円。
2020年3月期決算では新型コロナウイルスの影響もあり、最終損益が112億円の赤字に転落したが、平均年収は前期比で4.6%上昇した。
じり貧の百貨店業界だが、大手の待遇は依然として良い。
阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリングも20年3月期の最終損益が132億円の赤字に転落したものの、4位で858.5万円。
また、大丸、松坂屋を傘下に持つJ.フロントリテイリングは7位で803.7万円となった。
今回のランキングで扱った285社の中で年収800万円以上は8社にすぎなかったが、そのうちの3社を百貨店が占めることになった。
一方、同じ百貨店業態でも、地方百貨店の年収は極めて低い。福岡県の老舗百貨店である井筒屋の平均年収は、ランキングでワースト3位の283位となる307.7万円。
他にも、271位に石川県の大和(357.3万円)、274位に長野県のながの東急百貨店(351.3万円)、276位に神奈川県のさいか屋(347.2万円)など、軒並み低位となった。
外食業界で唯一年収800万円台の企業は
ランキングトップ10に再び戻ると、国内小売最大手のイオンと2位のセブン&アイ・ホールディングスも上位につけている。
イオンは864.5万円で3位、セブン&アイ・ホールディングスは743.9万円で10位。
また、好業績が続く家具・日用品大手のニトリは851.2万円で5位となった。
コロナの影響で厳しい外食業界にあって、唯一、年収800万円台で6位となったのが、「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIES。
今年4月には、持ち帰り専門のすし店などを展開する京樽を吉野家ホールディングスから買収。社名も、従来のスシローグローバルホールディングスから変更した。
20年9月期はコロナの影響で増収減益となったものの、今年度は積極的な新規出店やテイクアウト需要の増加などにより、21年3月期中間期時点で、売上高は前年同期比10.1%増、当期利益に至っては同53.6%という大幅増益を達成している。
8位はイオングループの食品スーパーであるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスで800.0万円。同社はマルエツ、マックスバリュ関東、カスミを傘下に持つ。
ドラッグストア業態で最も年収が高いのは、調剤薬局大手のクオールホールディングス。平均年収は746.1万円で9位となった。
売り上げ規模は大きいが年収は低い家電量販店
そのほか、業態別でみると、コンビニエンスストアで平均年収が最も高いのは先述のセブン&アイ・ホールディングスで10位の743.9万円。一方、ローソンは28位で653万円と大きな差がついている。
これは業界内の序列を反映した面もあるだろうが、「データのクセ」による面も大きいと考えられる。というのも、セブン&アイ・ホールディングスはグループを統括する持ち株会社であり、年収が高い少数のエリートが集う場合が多い。実際、2社の単体従業員数を比べてみると、ローソンが4599人もいるのに対して、セブン&アイ・ホールディングスは588人だ。こうした点も踏まえてランキングを眺めてほしい。
なお、ファミリーマートは2020年11月12日に上場廃止したためランキング対象外となった。
また、売上高の規模に比べて、平均年収の低さが目立つのが家電量販店だ。
売上高1兆6115億円で、小売業界5位の規模のヤマダホールディングスだが、平均年収は445.3万円と188位。
また、売上高8479億円で、小売業界9位の規模のビックカメラも、平均年収は436万円と199位。
そのほか、エディオン(521.9万円)、ケーズホールディングス(520.9万円)、ノジマ(444.2万円)と、全般的に低い。
(ダイヤモンド編集部 松本裕樹)