三菱とみずほはトップ5に入らず
人口減少、低金利、新型コロナウイルス感染拡大の「三重苦」を受け、生き残りをかけた地方銀行の再編機運が高まっている。
青森県の地方銀行である青森銀行とみちのく銀行が2021年5月に経営統合を発表し、22年4月に共同持ち株会社「プロクレアホールディングス」を発足させたのは記憶に新しい。
このほか、21年10月には秋田銀行と岩手銀行が包括業務提携、同年12月には愛知銀行と中京銀行が経営統合をそれぞれ発表している。こうした合従連衡の動きは今後も加速しそうだ。
一方のメガバンクは、22年3月期決算は堅調だったものの、その裏側では経営合理化に向けた支店の移転や統廃合を急ピッチで進めている。
では、激変期の銀行業界で働く銀行員の「給料」はどうなっているのか――。
そこで今回は、上場している銀行およびその持ち株会社を対象に「全国銀行員の平均年収ランキング」を作成した。本社所在地はダイヤモンド社企業情報部調べ。対象期間は20年4月~21年3月期。それでは早速、見ていこう。
“地銀の雄”を束ねるコンコルディアが3メガバンクを抜いて首位
1位は、コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)で1274.7万円。同社は16年に、東日本銀行と横浜銀行の経営統合によって発足した金融持ち株会社だ。
経営不振による苦肉の策ではなく、健全な経営を強みとする2行が成長を目指して手を組んだ統合であり、発表当時は驚きを持って受け止められた。統合後の純資産額は、分析対象の21年3月期終了時点で約1兆1591億円と、地銀業界でもトップクラスである。
前回調査(19年4月~20年3月)の7位から1位に躍り出たコンコルディアFGだが、同社単体の従業員数はたったの8人。平均年齢は45.4歳である。
“地銀の雄”を束ねるエリート中のエリートだけの平均年収を算出しているため、グループ全体の実態よりも極めて高い金額になっているとみられる。
2位は、三井住友トラスト・ホールディングス(HD)で1261.7万円。前回と前々回(18年4月~19年3月)の調査では1位だったが、今回はわずかにコンコルディアFGに及ばなかった。
三井住友トラストHD傘下の事業会社、三井住友信託銀行は、個人や企業の資産を管理運用する信託業務を行っている。他にも、お金の管理や融資といった通常の銀行業務に加え、相続関連業務や不動産取引業務なども手掛けている。こうした業態上、一般的な銀行よりも富裕層の顧客を多く抱えているとされている。
3位は、三井住友フィナンシャルグループ(FG)で1142.4万円。同社で注目すべきは、単体従業員1034人(平均年齢40.0歳)の平均値がこの金額であることだ。
前ページにあるランキング表の通り、今回のランキングでは単体従業員数が1ケタ~20人程度の持ち株会社がトップ5に集中している。三井住友FGにも事業会社を統括するエリート層が集まっているとはいえ、これだけの人数が1000万円超の高給を得ているのはメガバンクならではのスケール感だ。
4位は、めぶきフィナンシャルグループ(FG)で1104.1万円。同社は足利銀行(栃木県)の持ち株会社である足利ホールディングスと、常陽銀行(茨城県)が16年に統合して発足した。めぶきFGも単体従業員数がわずか18人であり、平均年収がグループ全体よりも高くなっているとみられる。
5位は、西日本フィナンシャルホールディングス(HD)で1073.8万円。同社も16年に発足した金融持ち株会社で、西日本シティ銀行(福岡県)や長崎銀行などを束ねている。
ただしこの金額も、トップ5の中で最少となる単体従業員7人の平均値だ。グループ全体の平均給与よりも高い金額になっている可能性は高い。
なお、ランキング完全版では6位以下も含めた全85行の平均年収を掲載している。3メガバンクのうち、トップ5から漏れた三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループは何位だったのか。また、全国各地の地方銀行の年収はどれくらいなのか。ぜひチェックしてほしい。
(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)