武田薬品やアステラスはトップ5に入らず
革新的な治療薬を開発できれば、業績や社員の給与が急増する医薬品業界。
特にMR(医薬情報担当者)はエリートのイメージが強いが、この業界は希望退職者の募集も多く、人材流動性が高いのが現実だ。
新型コロナウイルスの国産ワクチンや特効薬の開発状況に注目が集まる中、競争が激しい医薬品業界の「年収」はどうなっているのか。
そこで今回、ダイヤモンド編集部では、上場している医薬品会社67社を対象に年収ランキングを作成した。本社所在地はダイヤモンド社企業情報部調べ。期間は2020年4月期~21年3月期である。
上位に入った医薬品会社はどこだったのか。早速、結果を見ていこう。
少数精鋭のエリートが集うバイオベンチャーが上位
1位はソレイジア・ファーマで、平均年収は1480.0万円だった。
同社は2006年創業のバイオベンチャーだ。がん治療薬の分野において、欧米で開発されている新薬の開発・販売権を獲得し、日本をはじめとするアジア向けに医薬品を製造・販売している。
注目すべきは、ソレイジア・ファーマは単体での社員数が21人(平均年齢49.9歳)と少ないことだ。
少数精鋭のエリートを束ねる代表取締役社長・荒井好裕氏は旧サール薬品(現ファイザー)出身で、薬剤師資格とMBA(経営学修士)を持つ人物である。
荒井社長をはじめ、限られたエリートだけの平均年収を算出しているため、中国子会社を含めたグループ全体の実態よりも平均年収が高くなっている可能性もある。
ただソレイジア・ファーマは、医薬品開発への先行投資がかさみ、決算では赤字が続いている。
21年12月期の通期連結決算では、売上高が5億5900万円だったのに対し、営業損失が24億1900万円、最終損失が24億7800万円に沈んだ。
22年12月期の通期業績は幅を持たせて予想しており、営業損益・最終損益ともに黒字化の見込みもあるが、11億~12億円程度の赤字になる可能性もあるとしている。
2位は創薬ベンチャーのシンバイオ製薬で、平均年収は1170.3万円だった。単体従業員数は127人、平均年齢は48.8歳となっている。
05年創業の同社も、欧米の製薬企業から有望な新薬候補品の開発・販売権を取得した上で、医薬品を製造・販売している。取り扱う医薬品は、がん・血液・ペインマネジメントの3領域だ。
業績も堅調で、21年12月期の通期決算では売上高が82億5600万円、営業利益が10億1600万円、最終利益は20億3200万円で着地している。
3位はそーせいグループ(1151.7万円)、4位はアンジェス(1149.9万円)とほぼ横並びだった。前者は医薬品の研究開発、後者は遺伝子治療薬に特化した技術開発を手掛けるバイオ製薬企業である。
単体従業員数はそーせいグループが23人(平均年齢45.6歳)、アンジェスが34人(同52.4歳)と、こちらも少数精鋭である。
5位は第一三共で、平均年収は1116.9万円だった。
これだけの人数が1000万円超の給与を得ているのは大企業ならではのスケール感である。
第一三共は22年3月期の通期売上高が1兆449億円で、売り上げ規模では武田薬品工業、大塚ホールディングス(HD)、アステラス製薬に次ぐ国内第4位である。
だが第一三共は、売り上げの面で後れを取るライバル企業3社を給与面で上回った。
なお、ランキング完全版では6位以下も含めた全67社の平均年収を掲載している。
売上高が国内トップ3の武田薬品工業、大塚HD、アステラス製薬は何位だったのか。
新型コロナ治療薬候補「ゾコーバ」の緊急承認を厚生労働省に見送られ、波紋を呼んだ塩野義製薬の年収はどれくらいなのか。ぜひチェックしてほしい。
(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)