『週刊ダイヤモンド』1月7・14日合併特大号の第1特集は「相続 ・生前贈与 大改正」です。生前贈与と相続のルールが65年ぶりの大改正! 生前贈与を使った相続税の節税術にメスが入るなど、2023年度の税制改正はこれまでの相続対策の常識を激変させます。
65年ぶり大改正で生前贈与の節税つぶし
65年ぶりに生前贈与と相続のルールが変わる。
財産が多ければ多いほど税率が高くなる相続税対策の基本は、財産を減らすことだ。贈与税の年110万円の基礎控除を利用した生前贈与は、王道の節税術である。
2022年12月16日に公表された23年度の税制改正大綱。「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」と題した項目が設けられた。この言葉が意味するのは、生前贈与を使った相続税の節税は許さない、ということだ。
亡くなる直前に生前贈与して相続税から逃れることを避けるため、相続3年前以内の贈与については相続財産に加算して相続税を課税するルールがある。今回の改正で、加算期間が3年前から7年前へと延長されることが決まった。
80歳から贈与だと余命9年中7年に相続税改正前の「駆け込み贈与」節税ラストイヤー
財務省の資料によれば、生前贈与した贈与者の年齢は70代でピークを迎え、80代も高い水準で続く。
厚生労働省の21年簡易生命表によれば、80歳の日本人の平均余命は男性が約9年、女性が約12年だ。仮に80歳から毎年生前贈与を始めて平均余命まで生きた場合、相続7年前までの贈与にも相続税を課す新ルールでは男性は2年分、女性は5年分の生前贈与しか節税につながらない。
実際、生前贈与を使った節税術の利用者は富裕層ほど高まっていく。遺産総額10億円超の場合は約4割で生前贈与の相続財産への加算が発生しており、加算額の中央値は1010万円だ(下図参照)。
遺産10億円超の層が毎年同額を生前贈与していたと仮定すると、改正で7年に延長された相続財産に加算される生前贈与に対して、約685万円の相続税がかかるのだ。
生前贈与の節税術を封じる「新ルール」の開始は24年1月1日に決まった。つまり、改正前の23年は「駆け込み贈与」で節税できるラストチャンスだ。
今回の改正では、教育資金贈与の延長や、タワマン節税に対する増税の「予告」など、相続と贈与の重要事項がめじろ押しだ。改正「対象外」でまだまだ活用できる対策もある。