1000万円超は1社だけ
写真フィルムから事業拡大

 今回は、上場企業の有価証券報告書に記載された平均年収のデータを使って、「年収が高い化学メーカーランキング2022最新版」を作成した。対象は上場企業で、単体の従業員数が50人未満の会社は除外している。

対象期間は2021年4月期~22年3月期。

 早速、ランキングを確認していこう。

 1位は、富士フイルムホールディングス(HD)で、平均年収は1017.0万円(従業員数815人、平均年齢45.8歳)だった。

 祖業である写真フィルムで培ってきた技術を生かし、現在は、内視鏡や医療ITなどを手掛ける「ヘルスケア」、高機能材料を扱う「マテリアルズ」、複合機などを扱う「ビジネスイノベーション」、カメラなどを手掛ける「イメージング」の4領域で幅広く事業展開している。

 22年3月期の業績(連結、米国基準)は、売上高2兆5257億円(前期比15.2%増)、営業利益2297億円(同38.8%増)、経常利益2604億円(同10.4%増)、純利益2111億円(同16.5%増)と好調だ。21年3月期の平均年収970.1万円(従業員数633人、平均年齢45.5歳)と比べると、46.9万円も年収が上がっている。

 なお、化学メーカーは連結子会社を多く有している企業が多く、持ち株会社が上位に入りやすい傾向がある。そのため、持ち株会社の傘下には多くの連結子会社などがあり、それら企業の平均年収とは異なることを留意してほしい。

 また、化学メーカーは日本の産業発展に必要不可欠な存在だが、業界トップ5のうち平均年収1000万円超えが、たった1社だった。これは、いささか寂しいと言わざるを得ないだろう。はたして2位以下の企業の年収はいくらなのか、見ていこう。

900万円台は2社
最大手の三菱ケミカルが3位

 2位は日本酸素ホールディングスで、平均年収は986.5万円(従業員数86人、平均年齢44.5歳)だった。

同社は産業ガスの製造・供給をグローバル展開するほか、国内では病院・在宅医療に欠かせない医療用ガスの供給や、ステンレス魔法瓶のサーモス事業などを手がけている。なお、従業員数86人は持ち株会社単体の人数であって、連結会社を含めると22年3月末現在、1万9398人が属している。

 3位は三菱ケミカルグループで、平均年収は949.2万円(従業員数223人、平均年齢46.3歳)。同社は素材から機能商品まで多種多様な製品を手がけている総合化学メーカーだ。連結子会社が多く、連結従業員数は6万9784人(22年3月末)に上る。

 22年3月期の業績(連結、国際基準)は、売上収益3兆9769億円(前期比15.2%増)、コア営業利益2723億円(同55.9%増)と増収増益だった。なお、22年7月1日付で、社名を三菱ケミカルホールディングスから「三菱ケミカルグループ」に変更したが、持ち株会社制は維持している。

 4位は日本ペイントホールディングスで、平均年収は898.0万円(従業員数404人、平均年齢43.6歳)だった。同社は、自動車用や工業用の塗料や塗料周辺事業を行っている。

 5位は、積水化学工業で、平均年収は897.3万円(従業員数2761人、平均年齢43.6歳)だった。同社は、新築住宅事業やリフォーム事業など住宅関連の事業を主力とするほか、インフラ材料向け機能樹脂など高機能プラスチックス事業なども展開している。

 最後に、日本の化学メーカーは、世界の競合他社と比べると得てして給与が低い。

そんな残念な実態については、『三菱ケミカル、住友化学…半導体・5Gに不可欠な化学業界の「給料が安い」残念な実態』を参照してほしい。

(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

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