今年の夏の高校野球は、久しぶりにコロナウイルス感染症の影響をほとんど受けていない大会となった。各地で繰り広げられた地方大会では、智弁和歌山高が初戦で敗れた他、横浜高、大阪桐蔭高、中京大中京高、龍谷大平安高、明徳義塾高などの名門校も敗退した。

 とはいえ、最終的に甲子園に出場した顔ぶれを見ると、やはりおなじみの学校が多かったと感じたのではないだろうか。実際、県ナンバーワンの学校が敗れても、ナンバー2の学校が出場すれば、おなじみの学校であることには変わりがない。そのため、ほとんどの都道府県で数校の常連校だけが甲子園出場を巡って争っているようにも見える。

 昨年夏は4校が初出場したものの、いずれも選抜大会には出場したことがあり、春夏通じて初という学校が1校もなかった。いよいよ甲子園出場校は完全に固定化さたかと思ったが、今年は一転して共栄学園高、東京学館新潟高、浜松開誠館高、高知中央高、鳥栖工、宮崎学園高と6校が春夏通じて初めて甲子園に駒を進めた。

 そこで、都道府県別に甲子園に出場したことのある学校の割合を調べてみた。

甲子園出場歴のある高校の割合が高い都道府県ランキング
1位はどこの都道府県

 なお、近年は少子化で高校の統合が進んでおり、甲子園出場校同士の統合も各地で起きている。東海大一高と東海大工の統合でできた東海大静岡翔洋高(静岡県)、鳴門工と鳴門第一高が統合した鳴門渦潮高(徳島県)などは有名だが、大分県では甲子園出場経験のある、別府商、別府羽室台高、別府青山高の3校が統合して別府翔青高になるなど、現存する甲子園出場校自体もかなり減少してきている。

 今年の参加校のうち春夏1回でも甲子園に出場したことがあるのは初出場6校を含めて1041校となり、出場率は29.9%である。参加校の約3割が甲子園に出場したことがある。

 しかし、これはあくまで平均値。都道府県によって比率は大きく異なっている。

高校野球に力を入れているごく一部の学校しか甲子園に出場できない県と、多くの学校が次々と甲子園に出場している県がある。

 なお、現在では部員不足の高校は他校と連合して出場することができる。連合チームは各地にあり、本稿では連合チームも1校1校としてカウントした。

 夏の予選参加校と、そのうち春夏合わせて甲子園に出場したことのある学校の比率を一覧表にしたのが、「甲子園出場歴を持つ高校の割合が高い都道府県ランキング」である。では、今回1位となったのはいったいどの都道府県だろうか。早速、1位から5位を見てみよう。

1位の佐賀県では
6割以上が甲子園に出場

 全国一出場率が高いのは、佐賀県である。参加36校に対して出場校は今夏初出場を果たした鳥栖工を含めて22校もあり、実に61.1%と出場率は6割を超えている。今年の県大会決勝も鳥栖工-神埼清明高という甲子園経験のない公立高校同士の対戦だった。神埼清明高は2年連続の準優勝で、出場校はまだ増えそうだ。

 次いで多いのが宮崎県。46校の参加校に対して、今年初出場を決めた宮崎学園高は27校目。

出場率は58.7%でこちらも6割に迫っている。

 宮崎県は1954年まで春夏通じて一度も甲子園に出場したことがなく、全国で最も遅く初出場を果たした県である。つまり、戦前は強かったが今はさっぱりという学校があるわけではなく、初出場以来69年間に27校が次々と甲子園初出場を果たしてきたことになる。同県ではどの高校にも甲子園出場のチャンスがあるといっても過言ではない。

 3位は島根県で出場率は57.9%。参加校は38校と人口規模を考えると意外と多い。これは、学校の統廃合を防ぐために公立高校が積極的に県外中学生を受け入れているからだ。同県では県立高校の選手にも県外出身者は珍しくない。

 続いて4位は57.4%の山口県。参加校は54校と比較的多く、うち31校もの学校が甲子園に出場している。かつては下関商、その後は宇部商の強い時期が続いたが、現在は戦国時代。次々と新しい学校が登場してくる。

167校参加する神奈川県が19校しか甲子園に出場していないことを考えると、31校という山口県の出場校の多さがわかる。

 5位は全国で最も参加校が少ない鳥取県。今年は昨年より1校増えて23校となったため出場率は56.5%に下がり、順位も昨年のトップから5位に後退した。鳥取県では、選抜大会の選考資料となる秋季中国大会には23校中3校が進出、地元開催の年には4位校まで出場できるなど、甲子園には出場しやすい状況となっていることも大きい。

 6位は和歌山県の55.6%。古くは和歌山中(現在の桐蔭高)、戦後は箕島高、現在は智弁和歌山高が出場を独占しているようにみえるが、昨年春には和歌山東高が初出場するなど、選抜にはいろいろな学校が出場している。

 5割を超すこの6県では、むしろ甲子園出場経験のない学校の方が少ない。

 なお、『甲子園出場歴のある高校の割合が高い都道府県ランキング2023【全47都道府県・完全版】』では47都道府県全ての順位を発表している。さらに、甲子園出場歴がある高校が最も少ない神奈川県が、「甲子園出場激戦区」といえる理由も解説している。こちらもぜひ、ご覧いただきたい。

(野球史研究家 森岡 浩)

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