静岡・伊東市にある、巨大な私設テーマパーク「まぼろし博覧会」。おびただしい数の、昭和レトロなオブジェクトや怪しげな品々が、何の解説なくひたすら展示されている。
伊豆半島の山間に突然現れる
怪しげな巨大テーマパーク
ある晴れた土曜日の午後。静岡県伊豆半島、JR伊東駅から東南に約6キロ、海と山に挟まれた国道を走ると、突如、「まぼろし博覧会」という文字と印象的なキャラクターが描かれた看板が現れる。
まぼろし博覧会は「キモ可愛い楽園」を標榜(ひょうぼう)しており、日本最大級のB級スポットとの呼び声も高い。
メディアやSNSで取り上げられることも多い。2022年1月に放映されたNHKの番組「ドキュメント72時間 ゆめまぼろしのテーマパークへようこそ」はとりわけ反響が大きく、放映後、コールセンターに「(演出ではなく)本当にそんな場所があるのか」と問い合わせが殺到したという。
左折して駐車場に入り、あらためて建物を見ると、山の地形を利用した、ガラス張りの砦のような施設がそびえ立っている。
駐車場に面する入場門は、大正4年(1915年)に京都の岡崎公園で開催された京都博覧会の正門を模している。そこからは山門のような長い階段が受付へと導く。
田原総一朗氏をはじめとした我々取材チームを確認するや否や、その階段を駆け下りて迎えてくれたのは、同館館長の「セーラちゃん」だ。
セーラちゃんは、X(旧・Twitter)などのSNS上でも人気者だ。
入場門から受付に至るまでの階段脇にも、巨大な招き猫、ゴリラが女子高生になった「美少女神社」、2023年にプロ野球で優勝した「阪神タイガース神社」、恐竜のオブジェ、はためくおびただしい数のこいのぼりなどが、入場者を迎える。隣り合うもの同士は脈絡なく並べられ、祭ばやしのBGMも流れてくる。「楽しい気分になってもらうため」だとセーラちゃんは言う。
受付の隣にある売店には、まぼろし博覧会のグッズやTシャツなどのほか、素人のような文字で「全共闘」と書かれた、全共闘のヘルメットのレプリカが売られている。
「全共闘時代の立て看板やヘルメットの字というのは、皆、ペイントが慣れていないので下手くそ。だんだん慣れてきて字が上手になっていくのですが、下手なほうがエネルギーがある」とセーラちゃん。本も多数並び、田原氏は親交のあったジャーナリストの故・上田哲氏の著作を懐かしそうに眺めていた。
※元NHK職員でジャーナリスト/労働組合運動家/社会党議員。データハウスからは『戦後60年軍拡史』『社会党大好き!』等の著作がある
受付を通り、いよいよガラス張りの建物の中へと進む。