「歴代社長の部屋をそのまま残すのですか。ゾンビ経営から決別できるのですか?」

 6月25日、大阪市内で開かれたシャープの株主総会でのこと。

2年累計で9213億円の最終赤字を計上した経営首脳陣に向けて、会場に集まった株主の1人が、質疑応答の時間に質問を投げかけた。

 この株主は本誌記事(5月25日号、クローズアップ)を引用し、シャープには歴代社長5人の個室がずらりと並んでいる事実を指摘。そして経営責任をあいまいにしたまま、「仲よしグループで経営しているのか」と詰め寄ったのだ。

 実際、本社2階の中枢フロアに陣取る歴代社長たちは、経営不振による混乱に拍車をかけてきた。

 姻戚関係にある3代目の辻晴雄氏と4代目の町田勝彦氏は、隠然と影響力を残す長年のボス。液晶一筋の5代目、片山幹雄氏は独自の提携交渉に奔走。また6代目の奥田隆司氏の求心力は低く、部屋にこもることも多かった。

 そのため経営再建案や、海外メーカーとの提携方針までが二転三転する羽目になった。まさに「本社2階」は、あしき“多頭経営”のシンボルだったのだ。

 壇上の髙橋興三・新社長は、株主の質問に対してこう答えた。

「“過去の人”たちに、もう決定権はない」

ついに「本社2階」にメス

 では、本当に「本社2階」は変わったのか。本誌は最新の部屋割りを把握することができた(図参照)。

 まず、3代目から6代目までの歴代社長4人は、厳重なセキュリティがかかった役員エリアから、一斉退去させられていた。

 具体的には、特別顧問の肩書を残した辻、町田の両氏には、別フロアに“相部屋”が割り当てられた。しかし「実際にはまったく出社していない」(シャープ社員)。

 さらに液晶のエリート技術者だった片山氏はフェローとして、天理工場(奈良)に引っ越し、残った部屋は会議室に衣替え。代表権なき会長の奥田氏もすでに退去しており、空き部屋となっている。

 確かに髙橋社長の言う“過去の人”たちはいなくなった。

 一方、新たな入居者もいる。

 みずほ銀行と、三菱東京UFJ銀行のメイン2銀行を代表する新役員の2人だ。9月に迫った2000億円の転換社債の償還期限を前に、資本増強策を詰める作業に入っている。

 肝心の髙橋社長はどうか。

「副社長時代にいた3階は、海外本部があって現場情報で溢れており、“伏魔殿”の2階への引っ越しを渋っている」(シャープ幹部)

 ようやくワントップ体制になったシャープは、どう生き残りへ駒を進めるのか。結果は「本社3階」が決めることになりそうだ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)

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