フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さん。
マニラではやたらと一方通行が多い。左折は、左折できる交差点を探すのが大変なくらいだ(フィリピンでは車は右側通行なので右折禁止ではなくて左折禁止が多い)。
これがマニラの道路を複雑にしており、ドライバー泣かせとなっている。交通規制がない場合と比べて、道を覚えるのに10倍くらいの労力が必要になっているのではないか。
マニラ在住10年以上というベテラン3人が新しいレストランに行くことになったとしても、自力で行こうとしたら、いったいどこを通ったらそこへ行きつけるのか、喧々諤々の議論になってしまうほどだ。
もちろん交通規制まで網羅したような気の利いた道路地図があるはずもない。行きと帰りでは道順が違うし、時間帯で規制が変わってしまうこともあり、せいぜい自宅と事務所、行きつけの食堂などの数点を結ぶ道路を覚えるのがやっとだ。
だから、通いなれた通勤路をタクシーでいく場合は、タクシーに道順を教えてやらなければならない。たとえプロでも慣れていないところはわからないのだ。
そんなドライバーの弱みに付け込んで、間違いやすい場所には必ず交通警官が隠れていて、車を止めて得意げに交通違反であると告げ、免許証を要求する。
逆に酒気帯び運転やスピード違反についてはほとんど取り締まっていない。これらの違反を捕まえても、その証明に手間がかかるので小遣い稼ぎとしては割に合わないのだろう。
こうした交通規制を実施しているのはMMDA(Metoropolitan Manila Development Authority、マニラ首都開発庁)という機関だ。
MMDAがマニラの交通を複雑にしているため、道順が限定されてしまい、いたるところにボトルネックが生じ、交通渋滞になっている。すぐ近くに行くにも大回りしなければならず、ガソリン代もバカにならないし大気汚染の原因にもなる。
あげくの果てに、交通混雑を解消するために、車のナンバープレートの末尾番号で週に一度運転できない日をもうける(カラーコーディングと称する)など、市民をいじめることを楽しみにしているとしか思えない横暴非道ぶりだ。
結論としては、マニラでは車を持つなどという贅沢はあきらめて、ジープニーやトラシクル(サイドカー付きバイク)、あるいはパジャック(サイドカー付き自転車)に乗ってつつましい市民として生きて行けということなのか。
あるいはいっそ、究極のエコカーである馬車にでも乗ったほうがいいかも知れない。マニラの下町であるチャイナタウンでは、いまだに馬車が現役で活躍しているのだ。
(文・撮影/志賀和民)