中国の「鬼城化」は省都のような中心都市だけで起きているのではない。きっかけさえあれば、行政の末端も不動産バブルに沸くことを教えてくれたのがフフホト市郊外の清水河県だ。中国の「県」は日本でいうと郡に相当するが、清水河県の面積は佐賀県よりひと回り大きく、そこにわずか14万人しか住んでいない。それでも、レアアースなどの資源開発で県政府にお金が入るとたちまちバブル化してしまう。写真は飛翔国際酒店という大型ホテルだが玄関は閉鎖されている。それ以外にも豪華な県庁舎やサッカー場、ショッピングセンター、高級住宅街など不動産開発の定番はひととおり揃っている。もちろん、その大半が「鬼城」だ。清水河県はフフホトの南約100キロ、タクシーで片道約2時間。
8 鶴壁河南省の鬼城として知られる石炭都市。オルドスと同じく、石炭価格の高騰と高速鉄道(新幹線)駅の誘致に成功したことで一気にバブル化した。「幸福之城」と名づけられた開発区にはタクシーが2、3台客待ちしているだけの新幹線駅と、王宮のように豪華な行政機関の建物が目立つくらいで、高層ビルのほとんどは途中で建設が放棄されている。鶴壁市の市街から開発区までは3キロほどしか離れておらず、住民は新幹線駅まで車でいけばいいのだから、もともと新都心は不要だったのだ。鶴壁へは鄭州から高速鉄道で約1時間。駅を降りたらタクシーをチャーターして観光しよう。
9 杭州西湖で知られる杭州に突如として出現したパリのエッフェル塔。実は不動産開発プロジェクト「天都城」のシンボルとして建てられた本物の3分の1のミニチュア。天都城はエッフェル塔を中心にシャンゼリゼを再現するプロジェクトだが、湖に面した別荘(一戸建て)は途中で開発が放棄され、大通りの高級物件は映画のセットのようだが、周辺にある高層アパート群はほぼ埋まっている。このあたりは地下鉄が通じておらず交通の便が悪いため、100平米(3LDK)のマンションで1500万円前後と、高騰する杭州中心部に比べてかなり安い。80年代の千葉や埼玉のように、再開発を期待したひとたちが郊外物件を購入しているのだ。内陸部のどうしようもない「鬼城」とはかなり雰囲気がちがうので、比較してみると面白いだろう。杭州は上海から高速鉄道で約1時間。天都城には杭州駅からタクシーをチャーターしよう。