カリブ海に浮かぶ小国・ドミニカ共和国に住み、中南米の新興国を舞台に貿易事業を展開する一 方、訪れた各地で証券会社や銀行の口座を開き投資商品を見るのを趣味とする“トレーディングトラベラー”風間さんの体験レポート。今回はいよいよ、風間さんが約10年住んでいる国・ドミニカ共和国での投資方法です。

 今回は、現在私が住んでいるドミニカ共和国を紹介します。まずは、ドミニカ共和国の成長性や将来性について。

黄金を求めてコロンブスがたどり着いた島

 ドミニカ共和国は、中南米のカリブ海に浮かぶイスパニョーラ島という島にあり、大航海時代にコロンブスが最初にたどり着いた島として知られています。コロンブスは今の日本である黄金の国「ジパング」を求めて大西洋を渡り、この島に到着しました。しかし、実際に島の北部で黄金が発掘されたことなどから、終生この島を「ジパング」だと思い込んでいたそうです。

 今では黄金の発掘は途絶えていますが、その代わりに、中南米の中でも特に大きな経済的変化が起きている国であり、ここ10年近く、毎年高い経済成長率を誇っています。

 人口1000万人のこの国の主な産業は、フェロニッケル(鉄とニッケルの合金)、砂糖、タバコのほか、カリブ海のリゾートを中心とした観光業、貿易特区(フリーゾーン)を利用した繊維輸出業などですが、特に資源価格の高騰した2005年から2009年はフェロニッケル価格が上昇し、毎年10%近い高い経済成長率を示していました。

 私がこの国に初めて来たのは2005年。それから約10年の月日が経ちますが、その間にも首都のサントドミンゴでは、商業施設や大型ショッピングモール、高級コンドミニアムなどの建設ラッシュが進んでおり、非常に速いスピードで街並が変化していくのを感じています。

 またドミニカ共和国には、世界でも国民の年齢が若い国のひとつという特徴があります。国の人口構成の中央値は25歳と典型的な若者社会です(日本の中央値は45歳近くで、「ポスト成熟社会」に位置しています)。30歳以下の年齢層が60%を超え、人口比率が若い層に集中しているので、今後30年で人口ボーナスを受けることができる国なのです。

海外事業家・外国人投資家に市場を開く政策

 ドミニカ共和国は年々海外の事業家や投資家に対して市場を開く政策を行なっています。そのうちのひとつが、外国人が会社を立ち上げる際の法律で、かつて外国人はドミニカ共和国で会社を所有することができず、株式の51%以上はドミニカ共和国の国籍か居住権を持つ人に限定されていました。

 私がドミニカ共和国に来た2005年にはすでに、外国人に対する株式保有比率制限は撤廃されており、外国人でも会社を自由に所有できるようになり、法律的には多少市場を開き始めていました。それでも当時はまだ、本人以外にドミニカ共和国の国籍か居住権を持つ人を、株主として7人参加させないと会社を立ち上げることができないという制限がありました(7人の株の保有比率は合計1%からで、実質的な会社の所有者として、外国人でも事業をコントロールできます)。

 私が事業を立ち上げた際も、株主としての7人の参加者を集めるのに苦労しました。ただその後はさらに法律が変わり、この株主7人の制限も撤廃され、今では資本金10万ドミニカペソ (約26万円)を用意すれば、外国人でも会社を立ち上げられるようになりました。

 このようにここ数年で、ドミニカ政府は一貫して外国人に対して市場を開き、それに合わせて海外からも投資マネーが集まってきています。また国の発展に比例するように、急激に富裕層や中間層の割合が増えており、首都サントドミンゴの富裕層が住むエリアでは、富裕層向けのサロンやオシャレな飲食店、ブティックやブランド品を扱う店などが増えています。

カリブ海屈指のチゾート地「プンタカーナ」

 また、ドミニカ共和国といえば、リゾート地として世界的にも有名です。距離的に離れている関係で、日本ではドミニカ共和国のリゾートの知名度はそ れほどではないかもしれませんが、ヨーロッパやアメリカ、中南米諸国では、バケーションを過ごす場所としてとても有名で、特にドミニカの東側の海岸に位置するプンタカーナはカリブ海の中でも屈指のリゾート地として知られており、1年を通して世界中から観光客が訪れています。

 ドミニカ政府もそれらの観光客を積極的に誘致する政策を推し進めており、首都サントドミンゴから東部、北部、南部など様々なエリアに直通で行けるような高速道路を建設、ドミニカ国内の主要な観光地8カ所に空港があり、アメリカ以外にもヨーロッパの多くの国やロシアなどからも直行便が飛んでいます。こうしたインフラ整備を急ピッチで進めてきた関係で、これらのリゾート地は近年にない発展を遂げているのです。

証券取引所を通して債券投資する

 ドミニカ共和国の魅力がお分かりいただけたでしょうか。そんなドミニカ共和国に投資をしていく方法ですが、一番良い方法はドミニカ共和国の証券取引所であるBVRD(Bolsa de Valores de Republica Dominicana)を通じての投資です。

 このBVRDは1988年にスタートしたドミニカ共和国唯一の証券取引所で、現在は主に国債と社債の2つを販売しています。

 BVRDの受付には、投資を奨励する広告がいくつもされていました。証券取引所で販売している国債はドミニカ共和国のペソ通貨建てです。新興国だけあって金利は高めで、12~17%前後で推移しているのが特徴です。利回りは抜群に良いが、利回りが高いというのはリスクも当然あるわけで、特に為替リスクがありますので、そこを加味して投資額を決めるのが大事になってきます。

 参考までにお話しすると、ドミニカ共和国の通貨であるドミニカペソ(RD$)は2004年に一度、大手銀行の破たんをきっかけに暴落していますし、また過去30年のデータを比較しても、1985年に1ドル=5ドミニカペソだった為替は2001年には1ドル=18ドミニカペソ、2005年には1ドル=28ドミニカペソ、2008年1ドル=35ドミニカペソ、2014年1ドル=43ドミニカペソと、一貫してペソ安に推移しています。

 ドミニカ共和国自体は輸出よりも輸入が多いため、政府が力強い産業を生み出して輸出を増やし、諸外国へ売る商品を増やさない限りはこの傾向は変わらないと予想します。つまり、ドミニカペソ通貨への投資はどうしても為替リスクが出てくるということです。

米ドル建てで人気の発電会社の社債

 BVRDでは、投資家のお金を呼び込むために、米国ドル建ての商品も用意しており、特に人気なのは電力会社や観光地域のプロジェクトなど、政府の支援事業に関連した企業の社債です。人気の理由は、米国ドル建てで販売されているため為替リスクがないこと、政府が絡むプロジェクトが多いため信用度の格付が比較的高いこと。

また5~7%前後と通常の商品よりも高い金利がつくものが多く、かつ半年や1年ごとではなく、毎月金利が支払われるような商品もあること、などがあげられます。

 人気の米国ドル建ての債券ですが、そのうちのひとつを紹介します。下の写真はドミニカ共和国の発電会社であるEHE HAINA社ですが、BVRDを通して米国ドル建ての社債を発行・販売しており、投資先として人気があった会社です。

 この会社は2002年より風力発電所の建設計画を立ち上げ、2011年より風力発電所の発電をスタート。その後さらに発電施設の建設を増やすため、2012年から2014年にかけてBVRDを通じて米国ドル建ての社債を販売していました。

 ドミニカ共和国でも近年は化石燃料エネルギー依存からの脱却を図るために、再生可能エネルギーを少しずつ推し進め始めており、EHE HAINA社の事業は社会的取り組みとしても注目を集めています。

 EHE HAINA社は最初に、ドミニカ共和国とハイチの国境沿いのぺデルナレス県に風力発電を建設しました。これらは総工費1億ドル(約119億円)をかけて作られており、33MW (メガワット)の電力が供給でき、これにより6万世帯の電力が賄えるといわれています。

 当初建設施工されたのは19基の風力発電でしたが、その後の建設計画として、その倍の数の風力発電の建設が予定されており、そのための資金の調達先としてもBVRDを通じての社債が寄与しています。

株式市場はいつスタートするのか?

 ところで、現在、ドミニカ共和国の市場で投資家から注目を集めているのが、株式市場がいつ開始されるかということです。後で紹介するBHD Leon 銀行の証券部門のファイナンシャルコンサルタントの方々にこの件について聞いてみましたが、BVRDは現在、株式市場での株の販売について急ピッチで準備を進めているとのことで、早ければ1年後ぐらいにはスタートするかもしれないとのことでした。ただし最初はJMMBなどいくつかの証券会社の株を中心に売り出すだろうとのことです。

 彼らはまた「株式市場において特定企業が資金を調達する場合は当然、不特定多数の一般投資家へ財務諸表などの情報を開示していく必要も出てきますし、そのために会計基準の統一はもちろんのこと、上場企業には財務の透明性なども求められます。虚偽報告などがあった場合の罰則規定、その他法令の設定など、国内外の投資家が信用して株式市場に投資できるようなインフラを整えることがまずは大事」と語っていました。

 現在、ドミニカ共和国の企業の資金調達方法は銀行借入に頼っている状況ですので、株式市場という資金調達先ができれば、ドミニカ経済もさらに活性されると予想されます。また株式市場のスタート時点ではまだ株価が安いので、なるべく早い段階で投資として先行者利益を得たいという人には、ドミニカ市場は注目しておく価値があると思います。

大手銀行の証券部門で証券口座&銀行口座を開設する

 さて、ドミニカ共和国の証券取引所BVRDでの投資ですが、直接BVRDで国債や債券を買うのではなく、BVRD指定の証券会社を通じて購入する必要があります。

 私自身の新興国市場での投資経験でハッキリと言えるのは、この証券会社選びがとても重要だということです。ここで間違うと投資をするための労力が何倍にもなることもありますし、最悪の場合、投資をするまで行きつかないこともありえると思います。

 中南米の場合は特に「スペイン語」という言葉の壁もありますが、それ以上に、連絡が取りづらい、返答がなかなか来ない、曖昧な状態で何日も放置される、などはしょっちゅうですので、証券会社選び、担当者選びは大切です。

 証券会社の選択ですが、BVRD指定の証券会社は現在16社あり、その中で私がお勧めなのは大手銀行BHD Leon銀行の証券部門である「BHD Leon Puesto de Bolsa」です。

 BVRDで債券の購入をするのは海外に住む外国人でも可能ですが、書類へのサインのために、口座名義人は一度は現地の店頭窓口を訪れなければなりません。また、債券購入後に支払われる金利や満期の際の元本等の受取用口座として、ドミニカ共和国内の銀行にアメリカドル(US$)もしくはドミニカペソ(RD$)の預金口座を開く必要があります。

 その点、このBHD Leon Puesto de Bolsaであれば、系列のBHD Leon銀行の本店内にあるため、銀行口座と証券口座の開設を一度に済ますことができ便利です。

また、ドミニカ共和国はスペイン語圏ですが、BHD銀行本店であれば、英語を話す担当者がいますので安心です。

 まず、銀行口座の開設には、以下の書類が必要です。

1) パスポート(本人確認書類)
2) 過去3カ月分の口座の明細履歴(居住地がわかるもの日本語の明細でも可)
3) 銀行の英文のレファレンスレター(照会状)

 ほかに、最低預金額として、米ドル口座の場合は500米ドル(約5万8000円)、ドミニカペソ口座の場合は1000ドミニカペソ (約2650円)あれば、銀行口座が開設できます。

 銀行口座開設の後に、証券部門に移動し、投資用の証券口座を開設します。こちらで必要な書類は以下の3つです。

1)パスポート(本人確認書類)
2)銀行の英文のレファレンスレター(照会状)
3)収入証明書(就業している場合。英文による給料支払い証明書など)

 預金は日本から送金することも可能です。また、口座にあるお金を移動させたい時は、担当Officerにメールで指示すると、日本などへの海外送金もしてくれます。

 なお、BHD Leon銀行本店では電話での問い合わせにも対応してくれるとのことですので、興味のある方は事前に電話にて相談してください。

■BANCO BHD Leon(銀行本店)
Av. 27 de febrero esq. Winston Churchill
Torre BHD 1F
TEL : +1-809-243-3232 Ext. 3055
https://www.bhdleon.com.do/(スペイン語のみ)

■BHD Leon Puesto de Bolsa(銀行本店内証券部門)
Av. 27 de febrero esq. Winston Churchill
Torre BHD 5F
TEL : +1-809-243-3449

税制面でも有利なドミニカ不動産投資

 ドミニカ共和国に投資する方法として、国債や社債以外に、不動産投資をすることも可能です。ドミニカ共和国では現在、不動産市場が非常に活況で、特にカリブ海という特性を活かしたビーチ沿いやリゾートエリアの不動産は近年一貫して価格が上昇しています。

 以前は外国人の不動産所有に制限がありましたが、今ではその制限は撤廃され、自由に不動産所有権を持つことができるようになりました。

その関係で、ドミニカ国内の富裕層だけでなく、欧米からも別荘地として買い付けに来る個人投資家が増えているのです。

 不動産所有者への税金は固定資産税が年間1%かかるのみで、しかも500万ドミニカペソ(約1300万円)に満たない物件に関しては固定資産税も免除されており、税制面で比較的有利な投資が可能です。

 例えば首都サントドミンゴの比較的人気のエリアでも投資用のコンドミニアム(2部屋)は、ほとんどの物件が500万ドミニカペソ以下で購入が可能です。ちなみに、ドミニカ共和国で投資用物件の購入を考える場合、最もお勧めできるのはリセールも含めて、部屋数2、駐車場2の物件といわれています。

 また首都サントドミンゴで外国人が多く住むエリアの物件を購入し、家具付きアパートとして貸し出すという方法もあり、経費を引いた後のネット利回りで8%以上達成できる物件を見つけることも可能です。外国人相手だと賃料も米ドルになりますので、この辺りも投資として魅力的だと思います。ちなみに購入の際の不動産取得税は、売買価格に対して3%です。

 現地には様々な不動産エージェントが活躍しており、英語対応が可能な不動産エージェントもかなり多くなっていますので、現地の不動産会社にいろいろ聞くと良いと思います。

中古市場が活発。ビジネス投資チャンスも

 さらに、ドミニカ共和国においては、ビジネスで投資をするという手もあります。同国は日本からの使われなくなったリサイクル品や中古商品が大変多く輸入されており、中南米の中ではチリと並び、中古市場がもっとも活発な国のひとつです。

 多くは自動車の使われなくなった部品などを再利用する工業製品ですが、日本ではほとんど値段がつかず廃棄されるような商品が、こちらでは1コンテナで日本円にして何百万円という価値をもつので、これらのビジネスチャンスをモノにして非常に大きな成功を収めたドミニカ人も多いのです。まさにタイムマシン商売といえると思います。

 代表的な輸入製品のひとつとして中古車がありますが、これがちょっと他の国では見られないような変わったスキームで輸入されているので面白いです。

 ドミニカ共和国は左ハンドルの市場であり、右ハンドルの中古車は輸入が禁止されているのですが、日本の右ハンドルの中古車を左ハンドルに改造して輸入する!ということが行なわれており、年間で5000~6000台近くの中古車が日本から輸入されています。

 これらの中古車はまず日本から南米のチリに輸出され、チリのフリーゾーン(貿易特区)で現地人の手によって、プラモデルのような感じですべて手作業でダッシュボードなどを切り貼りし、ハンドルをはずして右から左に付け替えられます。その後、チリからそれらを船に積んでドミニカ共和国に再輸入されるという三角貿易のような形で輸入されているのです。

 日本からドミニカに輸入されるまで、全行程4カ月近い長い時間をかけて到着するハンドル交換車両は現在、首都のサントドミンゴを中心に飛ぶように売れています。そんなやり方でハンドルをつけかえた車が動くのかという心配もあるかと思いますが、これがちゃんと公道を普通の車と変わらずに走るからすごいです。

(文・撮影/風間真治)

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