ドイツのアウディや日本のホンダによって自動運転レベル3の量産車の普及に向けた競争がはじまりましたが、自動運転レベル4の開発も世界各国で進められています。ワンランク上がることでどんな技術革新があるのでしょう? 海外と日本の開発状況を解説します。
国土交通省が定める自動運転レベルとは?
レベル4について語る前に、自動運転レベルの全体像を把握しておくことが大切です。現在、多くの国ではアメリカの民間団体であるSAE(Society of Automotive Engineers)が公表している6段階の自動運転レベルを参考にしながら、議論が進められています。これはドライバーと車が担う運転動作の比率や、テクノロジーの到達度、走行可能エリアの限定度合いなどから、自動運転を定義づけたもので、レベル0からレベル5までの6段階で分類されています。自動車の自動化レベルを分類したもの
自動運転レベルは、ドライバーと車が担う運転動作の比率や、テクノロジーの到達度、走行可能エリアの限定度合いなどから、自動車の自動化レベルを示しています。かつて日本では、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の定義を用いるケースが多く見られましたが、現在はSAE(Society of Automotive Engineers)の6段階の自動運転レベルが用いられています。自動運転技術はSAEが標準化している
SAEはSociety of Automotive Engineersの略で、1905年に設立された学術団体が母体になった組織です。自動車に限らず、航空宇宙や産業車両など、幅広い輸送技術にかかわる研究者や技術者が会員になっており、あらゆる乗り物の標準化・規格の制定を行っていますが、自動運転レベルの定義も公表しています。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2016年にSAEの基準を採用したことから、世界基準として定着しつつあります。自動運転と見なされるのは「自動運転レベル3」以上
6段階の自動運転レベルにおいて、レベル0~2とレベル3以上では、その内容が大きく変化します。レベル0~2では運転の主体が人間で、自動運転の技術はあくまで運転の補助や支援にとどまります。しかし、レベル3になると運転の主体がシステム側に変わり、ここからレベル5までが実質的な「自動運転」になります。なお、レベル0が自動運転なし、レベル1が運転支援、レベル2が部分的自動運転、レベル3が条件付き自動運転、レベル4が高度な自動運転、そしてレベル5が完全自動運転と、それぞれのレベルを表現することができます。自動運転レベルのごとの特徴を解説
自動運転では、SAEによる6段階の自動運転レベルが基準になっています。各レベルには定義があり、それぞれどんな状態を示しているのか理解しておくと、自動運転への理解が深まります。自動運転レベルのごとの特徴や違いを解説していきます。自動運転レベル0
現在、路上を走っている車の多くはレベル0です。ドライバーがすべての動的な運転タスクを実行している状態を指します。従来の車にも速度超過やライトの点灯など、さまざまな予防安全システムが搭載されていますが、システムが警告を発するだけのものは、車の制御に影響を与えないため、自動運転レベルは0とみなされます。自動運転レベル1
レベル1は、運転支援技術が搭載された車を指します。アクセルとブレーキ操作による前後の加速や減速をシステムが制御、もしくはハンドル操作による左右の制御のどちらかの監視・対応をシステムが担っており、残りの監視・対応はドライバーが行うような車です。たとえば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)という高速道路などで使用されるような、あらかじめ設定した速度で自動的に加減速を行うことで、前を走る車に追従する技術がありますが、これはレベル1に相当します。また、緊急自動ブレーキや、車線を逸脱したことを検知するとステアリング操作をアシストする車線維持支援(LKAS)もレベル1に該当します。自動運転レベル2
レベル2は、部分的に運転が自動化された車両で、アクセルとブレーキ操作による前後の加速や減速の制御と、ハンドル操作による左右の制御の両方をシステムが担うことになります。ただ、運転の主体はドライバーで、システムはあくまで運転を支援する役割に止まります。そのため、ドライバーは常にハンドルを握って、運転状況を監視操作することが求められます。こうした事故を未然に防いだり運転の負荷を軽減したりするための先進運転支援システムは「ADAS(Advanced driver-assistance systems)」と呼ばれており、ADASの機能が向上して、障害物を100%検知し、100%正しい判断を下し、100%正確な制御を行うレベルに達すれば、完全なる自動運転技術が確立したことになると言われています。Toyota Safety Sense(トヨタ自動車)
TOYOTA Safety Senseはトヨタ自動車が開発する安全技術です。カメラとレーダーを使って周囲の情報を取得。そのデータをもとに危機回避の警告やアナウンスをすることで、ドライバーの運転負荷を軽減します。Teammate(レクサス)
レクサスに搭載されているTeammateは、AI技術を活用した高度運転支援技術です。高速道路や自動車専用道路での速度調整や車線維持、車間維持をサポートする「Advanced Drive」という機能のほか、スイッチ操作で駐車を支援する「Advanced Park」といった機能を搭載しています。Lexus Safety System(レクサス)
レクサスに搭載されているLexus Safety Systemは、メンテナンスに始まり、事故回避や事故被害の軽減を目的とした予防安全、事故が起きてしまったときの被害を軽減する衝突安全、そして事故後の迅速な救護支援までをトータルでサポートする「予防安全パッケージ」です。街中での安全運転を支援する技術として、プリクラッシュセーフティや、ロードサインアシストなどがあり、高速道路での運転支援にはレーダークルーズコントロール、レーントレーシングアシストなどがあります。そのほか駐車場での安全をサポートする安心後車アシストやパーキングサポートブレーキなどがあります。アイサイト・アイサイトX(SUBARU)
スバルの先進運転支援システムはアイサイトシリーズです。高速道路などでアクセルやブレーキ、ステアリングの操作をアシストしてくれる「アイサイト・ツーリングアシスト」のほか、新型レヴォーグなどに搭載されている最新の高度運転支援システムで、渋滞時のハンズオフや発進をアシストする「アイサイトX」があります。プロパイロット(日産自動車)
プロパイロットの第1世代では、一定速度域でのインテリジェントクルーズコントロールやハンドル支援が搭載されていました。2019年9月に発売されたスカイラインには第2世代のプロパイロット2.0が搭載され、高速道路走行中に一定条件下ならハンズオフが可能になりました。また、ナビと連動することで、目的地を設定するとアクセルやブレーキ、ステアリングを制御して、ルート上にある高速道路の出口まで運転支援を行ってくれる機能もあります。Honda SENSING(ホンダ)
Honda SENSINGには、アダプティブクルーズコントロール、車線維持機能、道路標識認識機能、自動ブレーキシステムなどの機能が搭載されています。アダプティブクルーズコントロールとは、アクセルやブレーキをコントロールし、事前に設定した速度で走行しながら、先行車との車間距離を維持する機能です。i-ACTIVSENSE(マツダ)
マツダのi-ACTIVSENSEは、ミリ波レーダーやカメラを使った先進運転支援システムです。ドライバーの安全運転をサポートする「アクティブセーフティ技術」と、衝突回避などの事故リスクを軽減する「プリクラッシュセーフティ技術」の大きな二つの技術が搭載されています。走行速度を自動コントロールする「マツダレーダークルーズコントロール」や、車線キープを支援する「レーンキープアシストシステム」などの機能があります。自動運転レベル3
レベル3は条件付き運転自動化を意味し、運転の主体がドライバーからシステム側に変わる点で、レベル0~2と大きく異なります。厳密にいえば、このレベル3からが自動運転です。ただ、一定の条件下ですべての運転操作をシステムが行いますが、緊急時にはドライバーが運転操作を担うことになっています。海外ではドイツのアウディが2017年に「Audi AIトラフィックジャムパイロット」というシステムを搭載した「Audi A8」を発売しています。同システムは高速道路や中央分離帯のある片道2車線以上の道路で、時速60キロメートル以下の低速で車がスムーズに流れているときにドライバーに代わってシステムがすべての運転操作を引き受けることができるというもので、レベル3に相当しますが、各国の法整備がレベル3に追いついていなかったため、レベル2に相当するADASを実装して販売されています。Audi AIトラフィックジャムパイロット(アウディ)
Audi AIトラフィックジャムパイロットは、一定の条件下での運転の完全な自動化を実現したレベル3の自動運転システムです。高速道路や自動車専用道路で、時速60km以下で走行しており、前後に車両が詰まった運転の状態になった場合に、システムが運転操作を引き受けてくれるというものです。自動運転の条件が満たされると、ビジュアルサインで、ドライバーにシステムが作動可能であることが伝えられる仕組みになっています。同一車線のなかであれば発進から加速、ステアリング、ブレーキまで、すべての運転操作をドライバーに代わって引き受けてくれるため、アクセルペダルから足を離し、一定の状況下であれば、ハンドルから手を離すこともできます。