上白石萌音さんが主演を務めるテレビ朝日ドラマプレミアム『霊験お初~震える岩~』が5月4日(土)21時から放送されます。

宮部みゆきさんの小説をドラマ化した本作。
江戸時代、一膳飯屋の看板娘・お初(上白石)は、ある出来事をきっかけに、ふつうの人間には見えないものが見えて、聞こえないものが聞こえる不思議な力=霊験(れいげん)に目覚めます。お初の力を知った南町奉行・根岸肥前守鎮衛(坂東彌十郎)は、彼女にある協力を依頼。お初は、サポート役の古沢右京之介(SixTONES京本大我)と共に事件を追う!

時代劇×ミステリー、京都撮影所スタッフの技術×最新VFXと、令和版時代劇にアップデートした本作にて、快活にお初を演じる上白石さんにお話を聞きました。

撮影合間は死霊役の人たちの笑いながらトーク

――宮部さんの世界観に触れてどんなことを感じましたか?

時代劇の中でも(歴史を)遡っていく特殊なかたちなんですが、どれだけ規模が大きくても、結局は人の情に立ち返るのが、すごく宮部さんらしいなと思いました。時代が違う人たちですが、どの役にも深く共感できる人物像が描かれていて、“これが宮部さんワールドか”と思いました。

――時代劇で怪談は定番のジャンルです。
上白石さんはホラーはお好きですか?

すみません……出演しているのに、ホラーは見られないです(笑)。日本のホラーは、悪魔的な得体の知れなさというよりは、得体の知れた怖さがあって、“この人がこうなってしまったのは、こういう理由がある。でもそれってすごく分かるよね”と、身近だからこそ、自分もそうなってしまうかもしれない怖さがあると思います。

ただ、死霊役の方たちがどの方もいい人ばかりだったんです(笑)。(撮影の合間は)私と真っ黒な人たちがケラケラ笑いながら話していたので、すごくシュールだったと思います(笑)。

――京都での撮影はいかがでしたか?

私は太秦の東映撮影所が大好きで、何年も(数々の作品で)お世話になっているんですが、そこにまた帰ってこられたのがすごく嬉しかったです。
京都出身でもないのに、京都は「帰る」という感じがしていて……。いつも作品が終わるたびに皆さんが「また帰っておいで」と送り出してくださるので、京都に行くと「ただいま」という気持ちになります。

――時代劇作品の経験が豊富な上白石さんとはいえ、所作など苦労はなかったのでしょうか?

ありがたいことに、デビューしたてのころ、舞妓さんの役を演じたときに所作を叩き込んでいただいたので、今回特に所作では苦労することがなく、これまでのご指導に感謝だなと思いながら演じていました。今回は、全力疾走したり、「ヤ―!」と槍を突くシーンがあったり(笑)、今までやってきた時代劇よりも動きがあったので楽しかったです。

逆に京本さんは、すごく位の高い役だったので所作がとても大変そうでした。真摯に取り組まれているのを見て、やっぱり(当時の)偉い人は大変だなと思っていました(笑)。


京本大我演じる右京之介の信頼ポイント

――お初にはどんな印象を持っていますか?

“江戸っ子だな”と節々に感じるんですが、そんなに強いわけではないというか。人に見えないものが見える特殊な事情はありますけど、そこに向かう精神的な強さ・もろさはみんなが共感できる人物像な気がしていて。“あ、分かるな”と思うところもありながら、“そこでジャンプできるんだ”みたいな予期せぬ強さを持った人だなと思います。

――演じるうえで心がけていたことはありますか?

「怖い」という気持ちでしょうか。だって、怖いじゃないですか。なるべく見たくないし、聞きたくないし……。
一時的なものではなくて、“ずっとこの能力と付き合っていかなければいけない”という慢性的な怖さみたいなものも大切にしたいと思って演じました。ただ、先ほど申し上げたように死霊役の方たちがすごくいい人たちなので、合間は楽しくもなっちゃうんですけどね(笑)。

――上白石さんが思うお初の好きなところは?

私は、右京之介といるときのお初がすごく好きです。(右京之介は)自分よりもうんと身分が上の人なんですが、何の遠慮もなくズケズケものを言うんです。そうさせるのは、彼のフワッとしたパーソナリティでもあると思いますし、居心地がいいんだろうなと感じています。右京之介といるとツッコミにもなるし、ボケにもなれるみたいな信頼関係があって、そのシーンを撮っているときはすごく楽しかったです。


――そんな右京之介にはどんな魅力を感じましたか?

“ちゃんと苦しんでいる人”というところが、信頼できるポイントだと思います。バックボーンや将来のことなどを悶々と考えていて、でも大好きな譲れないものもあって……みたいな人って素敵ですし、“仲良くなれるぞ”って感じじゃないですか。譲れない大好きなものがあるという点は、京本さんご本人にも通じる部分があったので、ハマっているな~と思っていました(笑)。

――改めて、お初と右京之介っていいコンビですよね。

そうですね。お互いないものを補い合っているパズルみたいなふたりだと思いますし、自分らしくいられる関係性なのかなという気もしています。


――京本さんとは、撮影の合間でどんなお話をされていたんですか?

京本さんもおっしゃっていたんですが、お互い演劇が好きということもあって、初共演は舞台だと思っていたんです。“ドラマで、しかも時代劇か!”と、ふたりで「びっくりしたね」という話はしました。ご一緒した初日は、朝から夜中までふたりで撮る日でしたし、それ以降も一緒のシーンが多くて。好きな舞台の話から始まって、とにかくすごく喋りました(笑)。

私が尊敬している先輩と京本さんが仲良かったり、SixTONESさんの何人かの方とご一緒していたりするので、初手で近づけたというか(笑)。バディとしての呼吸を作るのには苦労がいりませんでした。とても感謝してます。

――お初は自身の能力に目覚め、たくさんの経験を積んで人間的にも成長していきます。上白石さんも近年、ドラマ、舞台、映画とさまざまな場所で経験を積まれたと思いますが、ご自身で成長を感じる部分はございますか?

私は本当に受け身気質で、基本的に自分で決めたくない、背負いたくないんですが、それが変化してきたのがここ数年なのかなと思います。今までは若さで許されていた部分もありますし、年少者だからと上の人に頼っていた部分も大きかったんですが、それだけではダメになってきて。“自分がこの役をどう演じたいのか”“何がやりたくて、どう思っているのか”といった自分の意見を持つこと、それを自分の言葉で伝えることを意識したいなと思っているところです。

――そう意識することで、良い方向に向かっているのでしょうか?

そうですね。責任が増える分、深く関われるし、うまくいったときの喜びもまた大きい。こうして憧れの先輩方に近づいていきたいなと思っています。

――そんな経験を重ねると、演技の面白さも変わるものなのでしょうか?

どちらもです。変わらぬ楽しさや面白さもありますし、どんどん怖くもなって難しくもなってきています。でもそれって、演じる役の幅が広がってきたからかもしれないですね。若いときは、学生の役、家族の娘役、初めて恋を知る役……割と狭いところでやってきたのが、社会人の年齢になると一気に役柄が広がって、お母さんにもなれるし、成功している人にも、どん底にいる人にもなれる。世の中にはいろいろな人がいて、その数だけ役があると思っていますし、そういったたくさんのお役から、いろいろなことを教えてもらっています。

――今回、お初にはどんなことを教わりましたか?

「自分には自分にしかない役割がある」というのはすごく思いました。お初は特殊なケースですが、特殊能力を持たない私たちにも、きっと生きている中で自分にしか担えない役割がある。その役割というのは人の役に立つためのものなので、それがある以上、誰かの役に立てるのかもしれない……。“じゃあ私は何ができるだろう”と、考えるきっかけにもなりましたね。

――最後に作品の見どころを教えてください。

“緩急”ですね。『霊験お初~震える岩~』は、すごく緩急の効いた作品だと思います。怖いところは思いっきり怖く、緩いところは緩く……みたいな、いろいろな顔を持ったドラマだと思うので、その温度の変わり方を楽しんでいただけたらなと思います。

取材・文・写真:浜瀬将樹
ヘアメイク:半田桜子
スタイリスト:嶋岡隆、北村梓(Office Shimarl)

ワンピース:79,200円(KEIKO NISHIYAMA)
イヤリング:24,200円、ブレスレット:17,600円(ともにJouete)
シューズ スタイリスト私物

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