サステナブル投資が急速に主流になりつつある中、私たちは過去数年の経験から3つの貴重な教訓を得ました。


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ニコレット・マクドナルド=ブラウン
ヨーロピアン・ブレンド・エクイティ ヘッド


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スコット・マクレナン
欧州株式 ファンドマネジャー/アナリスト


この3年の間に、社会と私たちの投資先である企業との関係性は転換点を迎えました。
営利企業は人や環境に与える影響を鑑みることなく利益を追求できるという考え方には激しい異議が唱えられ、もはや時代遅れとも言えるかもしれません。資本主義経済は利益の高さから意識の高さへと慎重に移り変わっています。
お客様の資本を預かる資産運用会社として、私たちはこの転換点とそれによって企業に生じた機会やリスクを解釈する必要があります。将来の価値創出を見極めるうえで、これをどう行うかが重要なポイントです。

シュローダーではこの評価の助けとして2つのツール、「SustainEx」と「CONTEXT」を開発しました。SustainExは企業が社会に与えるプラスまたはマイナスの影響を評価するツールで、CONTEXTは企業とステークホルダーとの関係性から生じる機会とリスクを評価するツールです。

この2つのツールによって一連の投資検討段階にサステナビリティの観点を組み込むことができます。ですがサステナブル投資における「秘密兵器」はツールからはじき出される結果ではなく、その解釈にあります。トリッキーなケースについては、一つのスコアや数字だけでは十分ではありません。
そうは言っても、この2つのツールによって過去3年の経験からサステナブル投資の重要な教訓を3つ導き出すことができました。具体的には次の通りです。

サステナブル投資は間違いなくベスト・イン・クラスの企業を超えて広げられること。

環境は重要な要因であるが、ESG投資において考慮すべきはそれだけではないこと。
私たちは、資本の管理者としての立場を利用して、変化を起こすことができる(そして、そうしなければならない)こと。


サステナブル投資はベスト・イン・クラスの企業を超えて広げられる
サステナビリティツールの活用によって、ベスト・イン・クラスの企業としてスタートしていない企業を発見することができた例があります。病院で用いられる医療機器・ライフサイエンス企業であるスウェーデンのゲティンゲです。
2020年初めに同社に初めて注目した時、2つのツールは異なる答えを示していました。SustainExでは医療品の提供と給与水準を背景とした良い結果、反対にCONTEXTでは競合他社平均をはるかに下回る結果がでました。
これはコスト削減を積極的に推し進めていた前経営陣の下で規制当局と良好な関係を築けていなかったことが主な理由です。
より深く理解するために、私たちは同社の品質・規制コンプライアンス責任者とエンゲージメントを実施しました。その結果、米国食品医薬品局(FDA)から品質管理問題に関して出された警告書に対応済みであることや、刷新した品質基準が組織全体に導入されたことがわかりました。
この新しい品質基準が事業構造の見直しの土台となり、生産プロセスにおける無駄の削減と効率化につながりました。また、このことは、より成長性が高い事業領域に注力する新しい投資決定プロセスに繫がりました。
これは私たちにとってまさにひらめきの瞬間でした。
サステナビリティリスクが誤った価格設定を背景とする投資機会に姿を変えたのです。企業文化の改善や組織改編がまだ株価に適正に反映されていないと感じました。

このような企業の成長の分岐点において、シュローダーならではの枠組みやプロセスの柔軟性を活かして最大のリターンの可能性を引き出すことができると考えています。この事例はサステナブル投資をベスト・イン・クラスの銘柄のみに限るべきではないという私たちの従来からの考え方を強めることにもなりました。転換期、イノベーション期、重大な変化を遂げている途中にある企業も投資対象になり得ます。


ESGはEだけにあらず
サステナビリティの観点においてシュローダーが開発したツールが投資判断の強みになると感じた領域がもう一つあります。
E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)のバランスです。
比較的測定しやすく、目に見えやすい「環境」が、市場であれ食卓であれサステナビリティが話題に上がった時の主役になることは至極当然です。ですがシュローダーでは社会とガバナンスの要素を含めたバランスの良い投資アプローチを維持しています。これによって、その企業にとって最も関連性の高いトピックに目を向けることができます。
ガバナンスが優れ社会に対する意識が高いからといって環境にもやさしいだろうと思い込むのは禁物です。同様に、環境にやさしい企業が自動的に社会やガバナンスに関する取り組みにも秀でているという考えにとらわれてもいけません。


風力タービンメーカーについて考えてみましょう。クリーンエネルギーへの移行、排出量削減への貢献という意味で環境に関する信頼度は誰にも引けを取りません。
ですがすべてのステークホルダーを加味してこれらの企業を見直して見ると、いくつかの赤信号が点灯しました。例えば一貫した品質管理や将来の保証コストに関わる課題、あるいはサプライチェーンや原材料の問題などです。経営陣の実績のなさが懸念材料になったケースもいくつかありました。

投資とは断片をつなぎ合わせてモザイク画を作る作業です。具体性と文脈が重要です。重要なのはシュローダーのツールがこれらの問題に警告を発した結果、情報に基づいた意思決定を可能にすることです。
これはサステナビリティに関する議論において環境問題の重要性を軽んじるという意味ではまったくありません。サステナビリティは環境だけではないことを再認識すべきということです。ESGに関する議論は常に進化しており、コロナ禍で労働力とサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになったことを見ても、そのことが分かります。
私たちは、サステナビリティに焦点を当てた投資であろうとなかろうと、株価水準に重点的にフォーカスを当てることがすべての正しい判断の支えになると考えます。これは、その企業が外の世界からどんなに重要に見えたとしてもです。


エンゲージメント活動が変化を促す
シュローダーが企業やクライアントに対して付加価値を提供できる領域がもう一つあります。企業に変化を促すエンゲージメント活動です。これについてはやるべきことがまだまだあります。
私たちは独自のサステナビリティツールから導き出された細かな結果を活かし、それを土台に狙いを絞ったエンゲージメント活動を行うことができます。企業戦略や報酬から気候変動、人的資本管理、論争への対応など、トピックは多岐にわたります。

この一例が2015年にガバナンス危機に陥ったドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンです。いわゆる「ディーゼルゲート」事件として露呈したこの不正問題では、組織全体でサステナビリティに反する行為が行われていたことが明らかになりました。
同社にとって信頼回復の道のりは長く険しいものでしたが、最大の痛みは最大の変化につながるチャンスです。シュローダーのアナリストチームは進展を注視しながら、この過程のすべての段階で同社に働きかけることによって前向きな変化を促し、過去のリスクを将来の機会に変える支援を行いました。
私たちが追跡した変化の一部はとてもシンプルなものです。例えばドイツ語以外の言語での内部告発が可能になりました。反対に中国、新疆ウイグル自治区にある工場の管理や、機械生産ラインから電気部品生産ラインに至るまで電気自動車の製造に関わる全従業員の再教育の実施、組織再編や非中核資産の売却等、複雑な変化もあります。

このレベルのエンゲージメント活動には時間もマンパワーも必要です。過去を過度に重視するあまり、変化が反映するまでに時間がかかりがちなサステナビリティ評価を提供する第三者機関と比べて、シュローダーのプロセスははるかに綿密かつフォワードルッキングなものです。これがシュローダーの強みであり、だからこそ私たちは他の投資家に先駆けて行動し、その後の市場の認識の変化を活かすことができます。
エンゲージメント活動における常の課題は適切なバランスを見つけることです。その企業にとっての最重要事項に着目する必要があり、そうするからこそ最も有意義な変化を促すことができ、と同時に将来の論争の芽を綿密に網羅することができます。

もちろん失敗もあります。すべてのエンゲージメント活動が変化に結びつくわけではありません。ですが私たちは過去の経験から学び、それを将来のエンゲージメント活動に活かす姿勢を大切にしています。その結果、より精度の高い投資判断が可能になります。


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