みなさんは10年前のことを覚えていますか? ソコソコの年齢になると10年前なんてつい先日の感覚で何も変わっていない気もしますが、意外に世の中は変化しているものです。というわけで、今回は10年前、2012年のカーナビ界を振り返ります。


【画像】覚えてる?10年前は先進感たっぷりだったカーナビのあれこれ

大画面化の潮流
 
最新のカーナビでは大画面化が進み、10型画面や9型画面は珍しくなくなりましたが、そんな大画面ナビが世に出始めたのが約10年前。車種専用キットや車種専用ボディを採用することで大画面ナビをインパネに美しく装着するという手法は、このときに開発されたものです。後付け感がないのに、それまでよりもひとまわりもふたまわりも大きな画面を実現するというのには驚かされました。そして大きな画面の快適さを体験すると、もう元には戻れないことも知りました。
 
ちなみにこのころの地図収録メディアは上級機種にはHDD、普及機種には内蔵メモリーまたはSDメモリーカードが採用されていました。この後に内蔵メモリーやSDメモリーカードの大容量化、低コスト化が進むことで、HDDは徐々にカーナビのメディアとしては使われなくなっていきます。
 
先進感たっぷりの付加機能

またこのころ、各ナビメーカーはライバルに差をつけるべく上級機種に目新しい付加機能を持たせることに躍起になっていました。特に印象的だったのはカロッツェリアのフラッグシップ機・サイバーナビに搭載されていた「AR HUDユニット」です。

サンバイザー部に取り付けたハーフミラーのスクリーンにレーザー光を投影して、前方の景色にルートガイドを重ね合わせるもので、ARを取り入れたヘッドアップディスプレイの“未来感”にやられてしまった人も多かったようです。実際に運転をしてみると、刻々と変化するグラフィックに思わず見入ってしまいそうになり、目新しさや楽しさは満点。ただしAR HUDユニット付属モデルの価格は30万円オーバーとずいぶん高めでした。
 
スマホ連携機能が続々登場

そして普及し始めていたスマホとの連携機能を持つモデルが各社から続々と登場し、専用アプリも数多く作られました。
ですが近ごろではApple CarPlayやAndroid Auto、ミラーリングなどに置き換えられてきています。ユニークだったのはイクリプスで、なんと「ニンテンドーDS」と連携し、車内でご当地クイズなどが楽しめました。
 
クルマ以外でも”使える”ポータブル型も多かった

今やカーナビは9割以上がインパネに納まるAV一体型となっていますが、10年前はポータブル型が数多く存在しておりバリエーションも豊富でした。パナソニックは自転車兼用モデルの「サイクルゴリラ」、街歩き兼用モデルの「旅ナビ」などクルマ以外でも使えるモデルをラインアップ。これらはスマホの普及に伴って、残念ながら数年で姿を消してしまいました。
 
 
そんなわけで10年前を改めて振り返ると、各カーナビメーカーは多くのチャレンジをして未来を探っていたことがよくわかりました。
 
しかしスマホ頼みのディスプレイオーディオが当たり前になりつつある2022年のカーAVは、「よくできている」けれど「おもしろくない」と僕は感じます。メーカーには市販カーナビだからこそできるワクワクすることを望みたいです。
 
「付いていればいい」ではなく「欲しい」と思わせるそんな製品の登場を願っています。そう思っている人、じつは意外と多いのではないでしょうか。

〈文=浜先秀彰〉
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