「電動化」や「自動運転」、「サブスク」に「OTA」…など、旧来のクルマの価値観にはなかったフレーズがあふれる昨今。そもそも、私たちが思い描く “クルマらしさ” って何なのだろう? ここではデザインの視点で、登場時に “ナニコレ!” と話題になったモデルの記憶をたどる。


【画像】斬新すぎるモチーフ!カボチャの馬車、ステルス戦闘機、カタツムリ…etc.

■新世紀とともに現れたカボチャの馬車! 「トヨタ WiLL Vi」

1999(平成11)年に発足した「WiLL」は、当時のNG(ニュージェネレーション)層をターゲットに21世紀の新市場創出を目指した異業種合同プロジェクトだ。

トヨタがWiLLブランドの第1弾としてリリースしたのが、2000年1月から2年間販売された「Vi」。シンデレラのカボチャの馬車をイメージしたというエクステリアデザインは、今見てもインパクトの塊。現代のシンデレラを夢見る(!?)女子のハートに突き刺さる、トヨタ版のパイクカーだった。インテリアにしても、インパネはフランスパン、シートは食パンがモチーフなのだ。

クリフカットのリヤウインドーは、日本車では初代マツダ キャロル(1969年)以来。一方、ドアミラーにはダイハツ オプティ、フェンダーマーカーにはマツダ ロードスターの部品が流用されていた。この垣根の低さもトヨタブランドではないメリットだったかもしれない。ベースは初代ヴィッツで、1.3Lエンジンに4速ATを組み合わせた。

■ステルス戦闘機になりたかった!? 「トヨタ WiLL VS」

カローラ系をベースに開発されたWiLLカーの第2弾は、一転して男子向けとして開発。2001(平成13)年に発売された「VS」だ。スペシャルティクーペ、5ドアハッチバック、ステーションワゴンを融合させたようなボディは、なんとステルス戦闘機をイメージしてデザインされた。


ウエッジがバキバキに効いた低く先鋭的な姿態、鷹の目のような鋭い眼光。そのちょっと異質なたたずまいは、確かにレーダーから捕捉されないよう独特の形状に身を包んだステルス機を彷彿させた。

演出はコックピットも抜かりない。メーターにはレーダーを思わせる赤いオプティトロン(自発光)式を採用。シフトは航空機のスロットルレバーがモチーフで、アルミダイキャスト製をおごるこだわり。まさにクルマらしくない形状で、操作性はイマイチだったように記憶するが…。

エンジンはゼイタク。スタンダードな1ZZ-FE(136馬力)、可変バルブリフトのハイパワーな2ZZ-GE(190馬力)という2タイプの1.8Lをデビューから設定した。02年には1ZZを1.5Lの1NZ-FEに換装。2ZZには6速MTのインターネット限定車も登場した。

■カタツムリの生まれ変わりだった!? 「日産エスカルゴ」

パイクカーといえば、日本における先駆けは日産だ。1987(昭和62)年のBe-1に始まった同社のパイクカーシリーズ。
その商用車版として89年に発売されたエスカルゴは、カタツムリそのままといっていい姿で世間を驚かせた。

ツノにある目玉は、ヘッドライトを法規ギリギリまで中央に寄せて表現。 “かんばん” の用途が考慮されたリヤのサイドパネルは、大面積でありながらドラミングの振動がうまく抑えられていた。舷窓のようなリヤサイドウインドー、手動式キャンバストップといったオプションも、商用車らしからぬアイテムだった。

ベースはパルサーバンで、1.5L+3速ATを搭載。リヤサスペンションはトーションバーを使った独立懸架で、優しい乗り心地も見た目の印象を裏切らなかった。91年まで受注販売。今の安全法規では不可能なデザインだが、このころの日産車にはホントにワクワク!ドキドキ!!したものだ。

■ホントは路面電車に生まれたかった!? 「ホンダ モビリオ」

2001(平成13)年12月にデビューしたホンダ初のコンパクトミニバン、モビリオ。縦横の直線と大きなウインドーが特徴的なスタイリングは、欧州の町並みに映えるスタイリッシュなユーロトラム、つまり路面電車がモチーフだった。

開発陣が目指したのは「バーチカルエモーション・デザイン」。「これまでの乗用車デザインで重視されてきた『流れ』や『勢い』といった既存の概念を用いず」(プレスインフォメーションより)、室内の広さや乗り降りのしやすさ、視界のよさといった機能をカタチにした。
「新しい乗り物」としての存在感の表現に挑戦したのだ。初代フィットとメカコンポーネンツを共用し、1.5L+CVTを搭載。

しかし、マイナーチェンジでフロントフェイスを刷新。フルモデルチェンジでは「流れ」と「勢い」を多用したフリードが後継車となった。こう書けば “鉄っちゃん路線” の成否は察しのとおり。でも、ときには奇想天外なほど独創性あふれる、生き生きとしたホンダデザインをまた見てみたい。

■カッコいい登山靴なのだ 「トヨタ シエンタ」

トヨタのコンパクトミニバン、シエンタ。初代は後継車になるはずだったパッソ セッテ/ブーン ルミナスの不振から、結果的にロングセラーとなった。現行の2代目は2015(平成27)年に登場。12年ぶりのフルモデルチェンジで生まれ変わったその姿は、なんと「靴」だった。

デザインイメージは「アーバントレッキングシューズ」。つまり、登山靴である。
ただ、ひと口に登山靴といっても、トレッキングシューズはオールラウンドに山歩きを楽しむ軽登山用。そして、今どきのトレッキングシューズは機能性に優れるだけでなく、デザインもオシャレなのだ。

前後を大胆なガーニッシュで引き締めたスタイリングは、つま先やかかとにプロテクターを施したトレッキングシューズを確かに連想させる。また、独特の質感表現に効果的な “とめ”、“はね”、“はらい” の一筆書きモチーフも見どころ。コンパクトミニバンの新しいスタイリングを見事に創造した。

〈文=戸田治宏〉
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