さっそく読んでみたところ、なんと冒頭には新宿二丁目の地図つき! 本書片手にそのまま二丁目へ繰り出せるという、語学テキストには珍しい構成。ストーリーは、「まさし」という面倒見のいいオネエキャラを中心に、アメリカ人ゲイであるマークを友人たちが二丁目観光に連れていくといったカンジ。
「『どんだけ~』を英語で表現するとしたら?」「ゲイに人気のアーティストは?」なんていうキャッチーな話題が盛りだくさんなうえ、まさしさんの毒舌かつ愛あふれる話術がおもしろすぎて、ついつい最後まで読んでしまった。「正しい英会話」から一歩踏み込んで、ウィットに富んだ英会話術をオネエさんに学びたいノンケの人にもおすすめかも??
中でも、個人的に気に入ったのは「肉じゃがは、男を落とす最終兵器よ」なるまさしさんの名言。居酒屋で、マークを囲んだ4人は「肉じゃが」を食べたことのないマークのために一生懸命、説明をしようと試みる。「じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、牛肉を、醤油やみりん、砂糖などで煮込んだもので、日本の代表的な家庭料理なの」まではふつうだが、さらに「(日本の)女たちはこれを作って、『アタシって家庭的な女でしょ』ってアピールするの」という補足説明? には思わず笑ってしまった。
ところで、そもそもどうして英語のテキストに「二丁目」というキーワードが出てきたのだろうか? 著者に抜擢されたエスムラルダさん(ホラー系ドラァグクイーンのほか、森村明生名義でフリーのライター兼エディターとしても活躍中)にお話を伺ってみたところ、「ポット出版は今までに、ゲイ関係の本も何冊か出版しているの。そのため、こういう企画が持ち上がったんじゃないかしら? ただ、“オネエタレント”の活躍や腐女子ブーム(?)を背景に『出すなら、今』という感じはあったのかもしれないわね」とのこと。
一方、おもしろおかしいだけでなく、新宿二丁目という街の歴史がよくわかるコラムページも充実。ただ、エスムラルダさんによれば、「二丁目の歴史についてはちゃんと文献化されていないものも多いので、事実関係の裏をとるのに苦労したわ」とのこと。
ちなみに、著者イチ押しの気に入っているフレーズは、「Well,if it isn't the "busu" one!(あら、ブス、いらっしゃい!)」や「There's no garbage to be dumped in Ni-chome.(二丁目に捨てるゴミなし→どんな男でも、二丁目なら需要がある、の意)」などなど。
なお、二丁目に興味のある人のみならず、たとえば飲み屋のマスターが「外国人に『お通し』の意味を説明する時に参考にした」など、意外なところで? 役に立ったという声もあるそう。
(野崎 泉)
・『英語で新宿二丁目を紹介する本』紹介ページ*版元ドットコムサイト内
・「エスムラネット」*エスムラルダさんウェブサイト
・エキサイト商品検索『英語で新宿二丁目を紹介する本』
・エキサイト商品検索『英語で秋葉原を紹介する本』