自転車のタイヤには、空気を入れる部分に黒いゴムのキャップがついている。

これがないとあまり良くないんだろうなぁとは思いつつ、キャップを外しても空気は抜けないわけで、正直なくてもいいんじゃないかとも思ったりする。

しかもキャップはゴムでできていて、ちょっとねじっただけで簡単に取れる。空気穴をふさぐ部分にしては、まったくもって頼りない。もっとキッチリ留まらなくて大丈夫なんだろうかって、心配になることがある。

空気穴にかぶさってるだけの、タイヤのキャップ。ニット帽をかぶるみたいなオシャレ目的じゃないだろうし……。一体どうして存在してるんだろうか? 大手自転車メーカーに話を伺った。


「キャップは、特に雨などの水分から守るためについています。空気を入れるところの奥には虫ゴムという、弁の役割を果たしている部分がありまして、水が入ると虫ゴムはボロボロになってしまうんです。すると弁が利かなくなり、空気が抜けやすくなってしまうんですね。そこでキャップをつけて、空気を入れる穴から雨などが入らないようにしているんです」

へぇ~、そんな役割だったとは。オシャレ目的じゃなかったけど、かぶせて守るって意味では、冷気から耳を守るニット帽と似てるかもしれない。
ところで、どうして簡単に取れるようなゴムでできてるの?

「20年ほど前は、プラスチック製のものが多かったと記憶しています。
それがゴムになったのは、おそらく価格が安いこと、割れないから安全であること、クルクル回さなくても付けられることが挙げられます」

なんだ、簡単に取れるのは意図的だったんだ。締めるんじゃなくかぶせることに意味があるから、素材は“外れにくいけど取りやすい”ゴムが適しているようだ。

タイヤにキャップがなくても、瞬間的に空気が抜けることはない。だけど付けずに使い続ければ、タイヤの部品にダメージが蓄積していって、じわりじわりと空気が抜けるようになる。
普通にしててもタイヤは劣化していくとはいえ、キャップがあるかないかで、そのスピードが違うってわけだ。

大切な役回りをまっとうしていた、タイヤのキャップ。

ごめんなさい、もう頼りないなんて言いません。
(イチカワ)