かつては、お風呂あがりに家族そろって、「レディーボーデン」などの大きな箱のアイスを囲むのが、贅沢なひとときだった。

カッチカチのアイスを小さな器に家族の人数分取り分けるのは、けっこう大変な作業であり、親が一生懸命削ってくれるのをうっとり眺めていた……なんていうのも、懐かしい記憶。


「高級感」「贅沢感」は格別で、我が家でも、わざわざ「大きいアイス用」として、先がとがってアイスが削りやすくなっている大きなスプーンを買ったりしたほどだが、それにしても最近は、こうした「家族で取り分ける大きいアイス」がずいぶん減っている。

先日、子どもがたくさん来るときに、こうしたアイスを買ってこようと思ったのだが、何軒もスーパー・コンビニをまわって、結局1つも見つからなかったという経験をしている。
もちろん現在は「レディーボーデン」はロッテから販売されており、健在だし、ネットなどで大きな箱のアイスを購入することもできるが、「近所のスーパー」などではおいそれとめぐり合えない。
これについては、友人・知人などからも同様の意見をときどき耳にするし、ネット上でも「懐かしい」「大好きだった」などという声が多いけど……。

なぜ大きなアイスが減ってしまったの? これって、核家族化や少子化などの影響ってこと?
社団法人アイスクリーム協会に聞くと……。
「レディーボーデンのようないわゆる『ホームタイプ』のアイスクリームは、お家に持ち帰って、スクープピングして個別に皿などに盛って食べていただくものであり、雰囲気があって楽しいアイスクリームなのですが、少し手間がかかるためか、残念ながら、売れ行きはよくありません」

業界では「大切にしていきたいもの」という位置づけのようだが、やはり手間がかかるという面はある。
そして、衰退の背景として、こんな補足をする。
「これに代わり、近年は、カップやスティック、モナカなど個包装のアイスクリームを詰め合わせたいわゆる『マルチパック』がよく売れています」

また、あるメーカーの担当者も言う。
「アイスを購入する人は、いまは子どもよりも主婦の方が中心層になっています。そのため、お母さんが買い物のついでに、『好きなときに好きなものを、ちょっとずつ食べられる』というお得なマルチパックを選ぶことが多いんですよ」

個包装のなかでも「一口サイズ」のような小さなものは人気だそうで、不況下で値段的にも、お母さんの手間的にも、ますます「手軽」なものが求められているよう。

手軽なマルチパックももちろん嬉しいけど、やっぱり「家族揃って食べる特別な日のアイス」には、まだまだ頑張ってほしいです。
(田幸和歌子)