筆者はカシオのプロトレックという腕時計を愛用している。これは登山、トレッキング用の腕時計で、方角がわかったり、標高がわかったりする優れものである。


しかしながら、これについている気温測定がちょっと使いにくい。腕に巻いたままだと温度が正しく測定できないのだ。正しい使い方は、腕から外して、しばらく放置してから測定する、ということなのだが、ちょっと面倒くさい。

しかし待てよ。実際の気温と、腕時計を腕に巻いて測った気温には何らかの関係があるはず。その関係を見つけられれば、腕時計の温度計から、実際の気温が推定できるんじゃね? 

ということで早速、実験をしてみた。
方法はこうだ。

まず100円ショップにおもむき、普通の温度計を1つ購入する。この温度計を持って色んな場所をうろつき、温度計の表示温度と、腕時計での表示温度を記録した。腕時計の場合、温度が安定するまでに少し時間がかかるので、安定したときの温度を記録した。

結果はこんな感じである。

温度計の表示温度 | 腕時計の表示温度
7℃            |  13.1℃
15℃          |  21.7℃
18℃          |  24.1℃
20℃          |  24.6℃
21℃          |  24.8℃
23℃          |  27.3℃
25℃          |  29.1℃
26℃          |  30.0℃

これをグラフで表してみると、それぞれの点は、直線状に並んでいることが判明。
そして、点の並びを直線近似してみると、こんな数式が得られた。

実際の気温=(1.15×腕時計の表示温度)-8.6

つまり、腕時計で表示されている温度を、この式に当てはめると、実際の温度が大体、推定できるのではないだろうか。筆者のこの推察を、プロトレックを作っているカシオの担当者さんに聞いてみたところ、こんなコメントをいただいた。

「腕時計の表示温度は、気温が体温より低いときは時計が体温で暖められ、気温より高く表示されます。反対に、気温が体温より高いときは、気温より低い温度が表示されます」

これは今回の実験結果と一致している。しかし……。


「過去に当社でも同じような相関を取ったことがあり、ある程度換算可能な式を作成しました。しかし、実際に装着した状態では、風が体温以上に大きな影響を与えることが判明し、相関が取りづらくなったことから、この換算式の採用を断念しました。従いまして、ご提示していただいたような換算式で気温を導出することは、難しいと考えます」

な、何っ!

今回の実験では、風の影響をできるだけ受けないよう、無風状態での気温を測定した。そのため、風が強い状況だと同じような相関は期待できないのだそうだ。

結論。カシオの皆さん、腕に巻いても正確に温度が表示されるような時計の開発、期待してます!
(珍満軒/studio woofoo)