写真に動感を付ける「流し撮り」という撮影テクニックがある。だが、そのような技を使わなくてもレンズに取り付けるだけで、背景が流れる写真が撮れる周辺効果フィルターがあるので、紹介しよう。


『ZSシリーズ』(ケンコー製)と呼ばれる一連のフィルターで、一方向に背景が流れる「ストリーム」、円周状に流れる「プリエール」、光がふりそそぐように流れる「エリーゼ」など8種類。価格は各2000円前後。
今回の撮影では「ストリーム」を使ってみる。とその前に、「フィルターを使わなくても流し撮りでいいじゃないか」という疑問に答えよう。流し撮りとは動いている被写体に合わせてカメラを動かす。
また、被写体が動かないときでも、背景が動くものなら(たとえば歩行者や自動車とか)、カメラを三脚で固定し、シャッタースピードを遅くすることで背景をブレさせることもできる。

つまり、背景を流すには被写体、背景いずれかが動いている必要があるわけだが、どちらも動かないとき、このフィルターの出番となる。撮影準備はレンズ先端部にフィルターをねじ込むだけ。フィルター上の中央は丸く、その周辺に細かいスジがたくさん入っている。これによって、被写体の周り、すなわち背景がブレたようになる。360度回転式になっており、これで流れの方向を調整する。

街中に小さな鳥居を見つけた。
背景は緑。どちらも動かないが、これを使うとご覧の通り。背景が見事にブレた。夜景を撮影するのもおもしろい。新宿のネオン街を撮ると、光がスジ状に伸びて、幻想的な写真となった。被写体は、基本的に背景が明るく、単色、平面的でないものを探すこと。背景が暗いとブレ効果が見えにくい。背景が単色、平面的なもの(たとえば真っ青な空)はブレたかどうかがわからないから。

ブレで動感を出すのがZSフィルターの基本的な目的だが、背景を流すことで結果的に被写体を浮かび上がらせる効果も得られる。望遠レンズで背景をぼかす撮影方法もあるが、同フィルターなら、奥までピントが合う広角レンズでも、背景をブレさせ、被写体を引き立たせるのだ。

ほかに、周辺効果フィルターには、以前紹介した「1つの被写体が6つになった不思議な写真」で使用した「ミラージュ」などもある。他のカメラマンとは一味違った写真を撮ることを目標にしている人は、このようなフィルターを多用してみるのもいいかも。

(羽石竜示)
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