なぜ大半のリップクリームは、表面がつるんと平らにならされているのだろうか。
もちろん全てが平らなものばかりでない。
口紅のような尖り頭にチューブ型、そしてカップ入りと、最近のリップクリーム産業は種類豊富だ。
その中でも口紅タイプが塗りやすいように思われるのだが、世の中では平らな物が市場を独占している。
そこでリップクリームを30種類以上販売されている、株式会社近江兄弟社さんにお話を伺ってみた。
すると「リップクリームの形は、リップクリームの元の液体を流しこむ最終段階で決まります」と言う。
塗り口が尖ったものは、鉄砲の弾のような金属の金型に流し込んで作られることから“砲弾型”と呼ばれ、一方平らなものはリップクリームの容器に直接液体を充填することから“直接充填型”と呼ばれるとか。
かつては先が尖ったリップクリームも多く販売されてはいたものの、現在の主流は平ら頭の直接充填型。
その理由を聞いてみると、近江兄弟社さんに限って言えば「40年前に一番最初に発売したリップクリームがこの形だったことからです」だそう。
そのため現在、会社のメインとなっているのだと言う。
それにリップクリームが最初、化粧品店ではなく薬局店で販売されたことも、平ら頭の人気に繋がる。
唇が荒れて困っているのは何も女性ばかりではない。男性や子供でも気軽に使ってもらえるように……と、平ら頭にはそんな心遣いも含まれているのだとか。
たしかに男性が手に取り堂々と塗ることができるのは、化粧品を意識した尖がり型よりも、平らな形のリップクリームだ。
特に営業マンなど外まわりの男性が案外気にするのが唇。人と喋る際、唇はちょうど目線が届く場所にあるわけで、そこが荒れているとやはり印象が悪い。
と言うわけで男性のリップクリーム愛好家は多く、そう言う人は“平ら頭”に救われているのだった。
現在はどの会社でも色付き、香りつき、特別な効果など、他社とは違うリップクリーム開発に躍起になっている。
そして同じ平ら頭でも男性向けには太めのタイプやシックなパッケージの物を。そして女性ターゲットのものには化粧品的なイメージのある細身タイプにする、などなど。同じタイプの物でも、変化をつけながら商品開発が進んでいるそうだ。
リップクリームならなんでもいいや。ではなく、たまにはリップの先に注目してみては。
(のなかなおみ)