おでんが食卓を賑わす時期がやってきた。

具材の多いおでんの中でも、人気は? というとまず筆頭に上がるのが、大根。

普通の料理ではなかなか目立つ機会のない食材だが、おでんになると途端、脚光をあびるのが大根なのだ。

とはいえ大根を使う際、“うまく味が染みこまない”という悩みを抱える人が多いと聞く。

料理教室の先生にお話を伺ってみると、「味が染みこみにくい、長い時間煮込むと崩れてしまう。と言う声は確かに多いですね」と、大根はその味の染みにくさが悩みの種。

どのようにすれば味が染みるのか、先生によると、「簡単にするなら薄く切ることですが、そうなるとホクホクした食感を楽しめませんし、おでんにも向きません。そこで一般的に行われるのは、大根に切り込みを入れる隠し包丁ですね。もしくはお米のとぎ汁で先に軽く煮ておくと味がしっかり染みますよ」と、なかなか面倒。

そこでついつい、「味が染みこまないと言ってとにかく時間をかけて、ぐずぐずになるまで煮こむ人も多いです」と先生。
ただしそんな風にいい加減なことをすると、「味覚が損なわれるだけでなく、見た目にも悪いので大根は下準備をしっかりして欲しいです」となる。
だが、とかく忙しい現代日本。大根にばかりかまけているわけにはいかないのだ。

そんな中、努力をしなくてもおでんにピッタリの大根があると話を聞いた。

その名も“おでん大根”。

これは姫路おでんのメッカである姫路で、植物の種苗を販売製造されている山陽種苗株式会社さんが取り扱う大根だ。

見た目は普通の大根とそう変わらないものの、その性質は“おでんにピッタリの大根”。品種改良の結果、こんな日本の冬に嬉しい大根が生まれた。

サラダなどの生食でも美味しいそうだが、何といっても普通の大根に比べると煮えるのがはやい。そして味が染みこみやすく柔らかいのに煮崩れしにくいと、まさにおでんや煮物のために生まれたような理想的な大根なのだとか。
すでに市場に出荷されているそうで、今後この大根が広がれば下準備に手を煩わされることなく、おでんを楽しめるようになるのかもしれない。

大根の旬であるこれからの季節はこれまで以上に瑞々しく、そして甘さが増してくる。
おでん大根を使ったり丁寧な下ごしらえをした大根でほくほくに煮こまれた大根もいいが、鍋の底で忘れ去られてグズグズになってしまった大根もまた美味しい。

普段は大根なんて……と言っている人も、今晩はゆっくりおでんでも煮こみませんか。
(のなかなおみ)
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