また、「あのときなぜ言い返せなかったんだろう?」と、後になって悔しくなったことのある人は、少なくないのではないだろうか。
なぜ「後になってから」怒りがわくのか。また、これはどういったタイプの人に多いのか。
『相手の心の中が怖いくらい見える心理術』(王様文庫)、『打たれ弱~いビジネスマンのためのゆうき式ストレスクリニック』(Nanaブックス)等の著者、ゆうメンタルクリニック院長で精神科医の、ゆうきゆう先生に聞いた。
「人の記憶の仕方には、事実のリンクと感情のリンクがあります。事実のリンクとは、『昨日はミスして部長に怒られた』⇒『ミスと言えば、取引先でも失敗したな』といった具合に、事実と事実をリンクさせて記憶する方法です。そしてその事実ひとつひとつに『悔しい』『嬉しい』といった感情が付加されているのです」
一方、「感情のリンク」とは……。
「『悔しい…何でだっけ?』⇒『あぁ、昨日部長に怒られたんだ』⇒『悔しいと言えば、この間も彼氏に太いって言われたな』といった具合に、感情を軸に事実を記憶する方法です。いわゆる『思い出し怒り』をよくする人は、感情のリンクが主となって記憶をするタイプなのでしょう」
そもそもなぜ「後になってから」のほうが、怒りが増すものなのか。
「感情のリンクで記憶していると、『嫌なことがあった』⇒『嫌な気分になる』⇒『過去の嫌な気分になった出来事をどんどん思い出す』という悪循環に陥りやすく、あとになるほど雪だるま式に怒りは大きくなるのです。そして、そのキッカケとなった相手にすべての苛立ちをぶつけることになります。ちなみに、女性のほうが男性よりも感情のリンクで記憶する傾向が多く見られます」
理由はわかっても、それはそれ。やっぱり「あのときに言い返せていれば!」と悔しく思う人もいるだろう。
「口論になったときは興奮してしまうので、うまく切り返せないことが多いでしょう。そんなときに相手の言葉に言い返そうとしても、思いつかないものは思いつきません」
では、どうしたら?
「その場に合わせた言葉を思いつく必要なんてないのです。いつ口論になってもいいように、あらかじめ『ごめん、あなたが何を言いたいのかわからない』『冷静になったらまた話そう?』といった、『自分が優位に立ちつつそれ以上の追及を防ぐ言い方』をいくつか用意しておくことをお勧めします」
日頃、後になってから腹が立ってくる人は、「冷静なとき」に「いつでも使える、とっておきの言い方」を考えてみると良いのかも。ただし、そこから「感情のリンク」につながって、思い出し怒りにならないよう、ご注意を。
(田幸和歌子)