頭には白髪、ネームを読むのに老眼鏡、“中年、老眼、デッ腹、貧乏”な54歳のマンガ家アシスタントが赤裸々にその人生を記す『業界残酷ドラマ マンガ家アシスタント』が復刊した。
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著者のイエス小池は、ジョージ秋山プロダクションの現役スタッフ。
その32年間の漫画家アシスタント人生が描かれる本書。そこには後悔の念とともに、いくつもの「血の教訓」が語られる。
引用しよう。
血の教訓!
自分の夢実現を邪魔するものは、親でも社会でもない。自分の怠惰である。
血の教訓!
今日中に必ず描かねばならない原稿は、机にかじりついてでも絶対今日中に描く事…。それが出来るか、出来ないかで、「まんが道」が大きく変わる…。たった一日の、その瞬間の選択が将来を決定するだろう………。
血の教訓!
アマは、自分の描きたいモノをカッコ良く描こうとする。プロは、人(他者)が見たいと思っているモノをカッコ良く描こうとする。
血の教訓!
私はのん気にテレビをみながらスナック菓子を食べてたいたつもりだった…しかし、気が付くと《怠惰》が私の人生をスナック菓子のようにむさぼり食っていたのだ。
血の教訓!
頭が悪くても、体が悪くても、年をとっても、人は成長できる! 絶対に成長できる! ……しかし……頭が悪いのは治らない。
血の教訓!
結果(勝利)でしか判断できない人間は結果に流され一喜一憂するだろう。そして最後には自己の死という結果によって敗北されるのだ。
嗚呼。語られる数々のエピソードと、数々の教訓。……重い。ヘヴィである。
先生であるジョージ秋山の語る言葉が、また凄い。
アシスタントとのやりとり。
「おめィ〜は…バカかァ!?」
「は…はい……バカです……」
「それでいいんだ。バカになれ! 漫画バカに!」
か、かっこいい!
他にも名言が次々と登場する。
「おめィ〜は、コツコツ暗い世界を下に向かって穴を掘っている様なモンだぜ。
スタッフ一同が忘年会で歩いているとき「小池君、この瞬間もストーリーを作るんです。今、みんなで…こうして歩いている! コレで……! コレで、ストーリーが一本できるンだぜェ〜!」
「おめィ〜は、『歩』だなァ…」「一歩一歩、ノロノロと進んで、敵の餌食になる……だが…相当、努力して、運も良けりゃ『金』に成る!…………かもなァ!」
「漫画はエンターティンメントだぜ!」
髀肉をかこつ著者の言葉と、ある種の軽快さをもつジョージ秋山の言葉の対比も本書の残酷な楽しみのひとつだろう。
最後に血の教訓をひとつ引用しよう。
血の教訓
『実力がモノを言う世界では、正しい者の言葉が正しいのではなく、実力のある言葉が正しいのである。』
(米光一成)