今年の夏は暑い。
暑くて食べ物が喉を通らず、ゼリー飲料に助けられた、という人も多いはず。


なかでも特に、振って飲むタイプの梅酒ゼリーは「お酒が苦手」という人も取りこんで、随分と人気なのだそう。
今では大手メーカーを始め数多くの会社が販売している梅酒ゼリーだが、この振って飲むゼリー梅酒を大手に先駆けること早く、2007年に販売した会社がある。

その酒造会社は、明治8年に創業した福岡県久留米市の池亀酒造。梅酒の名前は「ぷるぷる ゼリー梅酒」。
このお酒、一回の仕込みにつき500本しか作られないという。

梅酒の姿形は瓶タイプで、500ミリリットル入り。
瓶の中を覗くと、黄金色の梅酒がすでにゼリー状となっている。
飲み方は、まず大きな固まりを崩すように瓶口を下に向けて「強く」1、2回振る。
残りは強く振らず瓶を斜めにしてゼリーの塊を滑らせ、その塊を壊しつつ器に注ぐのがポイント。振りすぎると液体になり、元に戻らないのでご注意を。

何故一回に付き500本しか作れないかというと、
「ゼリーには専用の製造設備が必要です。当社は小さな酒蔵なので、専用の設備がありません」
機械に頼れず多くの部分に手作業が含まれることで、結果的に製造本数が限られてしまうそうだ。

さらに専用設備がないため、冬場は手作業中に固まってしまうリスクがある。そのため製造時期は春~秋限定。売り切れてしまうことも多いそう。

気になる味といえば炭酸タイプでは無く、梅酒をそのままゼリーにしたプルプルの口当たり。完熟梅を米焼酎で仕上げているので、まるで桃のようなフルーティな風味を楽しめる。

しかしこの会社は普通酒をメインに造っている日本酒蔵。なぜ梅酒、それもゼリータイプの物をなぜ作ろうと思い立ったのだろうか。
それは「他社とは異なる梅酒を開発しようと思った」とのこと。

当時、変わった味わいの梅酒が多く販売されていた。しかし面白い味はその分、飽きられやすい。
そこであくまでもオーソドックスな味で、他にはない珍しい物を……と、生み出されたのがこの商品。
そのアイデアは身近なところにあった。

「義母が梅を砂糖煮にし、果汁のペクチン質(食物繊維の一種)が冷えてゼリー状になっていたのを見て、ひらめきました」

さらにこの梅酒のベースは米焼酎。
「農家の方を応援し、食糧自給率アップ、美しい田舎の風景を子供たちに残すためにも、微力ですが、少しでも多くの米を使いたい」という気持ちから、こちらの会社で作られているリキュールには全て、日本酒か米焼酎が使われているとか。
それに日本酒や米焼酎をリキュールに使うと全体がまろやかな味になるそうだ。

8月が終わっても、今年はまだまだ気温が下がりそうもない。
厳しい残暑、クエン酸とゼリーのパワーで乗り越えては。
(のなかなおみ)
編集部おすすめ