心が読めたらどんなに楽しいだろう! ……本当に?
「琴浦さん」は心の読めてしまう少女琴浦さんのドタバタを描いた4コマ漫画。元は個人サイトのWEBマンガで連載されていたものが7月31日コミックスとして発売されたのですが、あれよあれよと言う間に一ヶ月で3版されるという異例の大ヒットを遂げました。
なんだこのスピード!?
全体の雰囲気は、ホワホワしたかわいらしさで包まれています。しかし心が読める故の苦悩描写が強烈! あまーいラブコメ展開と、トラウマになりかねない苦しみバランス感がとんでもない作品なんですよ。左に引用したコマからも、このマンガがただならぬオーラをまとった作品であるのが伝わってくると思います。
加えて特筆すべきはメールマガジン。何日かおきに琴浦さんから絵日記のメールが届くんです。「琴浦さん」中毒患者は今も加速的に増える一方です。

膨らみ続けている「琴浦さん」人気。早速作者のえのきづ氏にインタビューしてみました。

――WEB漫画連載を始めたきっかけはなんですか?

えのきづ 琴浦さん、元々はただの練習用の漫画だったんです。公開する予定すらなく、軽い気持ちで適当に書き始めたのが最初です。「心が読める」という設定を決めたあたりで話を思ったより膨らませることできそうだなぁと思いWEBで公開を始めました。

――では、どのようにしてWEB漫画から単行本化に至ったのですか?

えのきづ コミケで今の担当編集の方に「琴浦さん」を本にしないかと声かけていただきました。
深く考えずに軽い気持ちでOKしたんですが、そのすぐ後に初期の自分の原稿を見て絶望したという……(笑)あまりに酷いので時間貰えるよう頼んでなるべく手直ししました。

――完全に手直しされたページかなり多いですよね。

えのきづ 当初は部数も少なめの予定でしたし、今だから言いますけど私は「売れないだろう」と思っておりましたもので、まさかこんなおおごとになるとは。

――書籍化して一気に話題になりましたね。ネットでの反響はどうでしたか?

えのきづ WEBで漫画描いていると反応がすぐ貰えるので面白いですね。読者の反応見て展開変えたりも結構しています。
他の形で発表していたら、琴浦さんもまた違った内容になったと思います。

――WEBマンガならではの展開ですね! 内容としては重さと楽しさのバランスが取れている作品だと思いますが、描く際に心がけている点はありますか?

えのきづ ギャグが好きなんで、描いてて楽しいのはギャグパートなんです。しかしそればっかりだとただの日常漫画になってしまいそうなんで所々で「よっしゃやるか!」と気合を入れて真面目な話もなるべく入れるようにしています。

――それがあのシリアスな物語につながっていくんですね。

えのきづ 普段不真面目なキャラが真面目なことやりだすと魅力的に見えるというか。映画のジャイアンみたいな。
そうゆうのが私は好きなんでギャグとシリアス交互に突っ込む展開は多めにしています。

――では作者として特に思い入れのあるキャラはいますか?

えのきづ 私、自分のキャラはみんな好きです(笑)。でも思い入れというか、思い通りにならないのが一人。森谷さん。完全に悪役として登場させたはずなのに、気がついたら仲間になってました。何故か人気もあります、恐ろしいやつです。
でも、いじりやすいキャラなので今ではお気に入りです。

――特徴的なキャラですよね。えのきづさんの個性のあふれたキャラだと思います。「琴浦さん」を通じてだけではなく、漫画家えのきづとして今後描いていきたいテーマはありますか?

えのきづ まだまだ未熟なので人の内面をもっと深く掘り下げて描くことができたらいいと思っています。読んでる人がキャラクターと一緒に泣いたり笑ったり、そんな漫画が描きたいです。また魅力的なキャラクターをもっとたくさん作っていきたいです。


――グッと来るキャラが増えそうですね!

えのきづ 他の漫画を描いた時にも脇役として琴浦さん登場したりとか、逆もあったりとか。そうゆうのもやっていきたい。なので特定のテーマの話を描きたいというより、たくさんの作品を描いてその中で私の作ったキャラクター達が連動して動き回るえのきづワールド的なものを妄想しています。読者がついてきてくれるかどうかは、わかりませんけど(笑)

作者サイトを見ると分かりますが、一巻以降も話は急展開していきます。「人の内面を掘り下げたい」と語るえのきづ氏の思いに呼応するように、琴浦さんは楽しい日々と、楽しいだけじゃない日々を過ごすことになります。
一度読んだら止まらない、続きが気になってやめられない。かわいくて痛くて、だけど癒される「琴浦さん」ワールド、未体験の方はぜひ味わってみてください。(たまごまご)