バンダイビジュアルは11月26日、「クレヨンしんちゃん」のコミック連載20周年を記念して、歴代「映画 クレヨンしんちゃん」のDVDシリーズを各1890円にて再発売するそうです。

今回新価格にて再販されるのは、第1作目「映画 クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王」から、第16作目「映画 クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」までの全16作品。
過去の名作たちを、ほぼ映画1本分というお手頃価格で手元にずっと置いておけるのは嬉しいですよね(参考までに、Amazon.jpでは現在各1,398~1,498円にて予約受付中)

とは言え16作品もあると「どれを買ったらいいか迷っちゃう!」って人もいるハズ。そんなわけで今回は、エキレビライターが勝手に選んだ「もういちど見たい、オトナの『クレしん』映画」ベスト5をお送りします。「えー、『クレヨンしんちゃん』なんて子供のアニメじゃない?」なんて思ってるそこのアナタ! いやいやそんなことはありません。オトナも子供も一緒に楽しめるのが「クレしん」映画のいいところ。これを機にぜひ、笑って泣ける「オトナの『クレしん』」ワールドにハマってみてください!!


◆第5位:「映画 クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦」

悪の秘密組織「ブタのヒヅメ」と、正義の秘密機関「SML」との戦いになぜか巻き込まれてしまった野原一家。さらわれたしんのすけたちを追って、ひろしとみさえは香港へと飛び立つのだが……。
「007」を彷彿とさせる前半のアクションシーンも見事ですが、もうひとりの主役・ぶりぶりざえもんが登場してからの30分間はまた別格のおもしろさ。最後までぶりぶりざえもんを疑わなかったしんのすけの純粋さと、それに応えたぶりぶりざえもんのカッコよさ。二人の出会い、そして別れがみっちり描かれたクライマックスは何度見ても泣けます。最後の最後、しんのすけの声に応えて現れたぶりぶりざえもんは、果たして幻だったのか、それとも……。


◆第4位:「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」

今夜は一家揃って焼き肉! ……のハズだったのに、謎の組織「スウィートボーイズ」の陰謀に巻き込まれ「凶悪犯一家」として指名手配されてしまった野原一家。果たして一家は誤解を解き、ふたたび揃って夕食を迎えることができるのか!?
「ヒヅメ」以降長らく続いた感動路線から一転、「焼き肉を食べたい!」の一念だけで、野原一家が春日部から熱海まで100キロの道のりを激走する純粋ギャグ路線に。
泣ける要素は一切ないものの、90分間ノンストップで繰り出されるギャグの応酬はシリーズ随一。「焼き肉とビール」ネタのかぶせ方とか、明らかに「子供と一緒に見に来たお父さんお母さん」に狙いを定めたギャグも多く、オトナが見ても十分すぎるほど笑えます。もちろん観終わった後はみんなで焼き肉へ!


◆第3位:「映画 クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険

群馬県に最近オープンしたテーマパーク「ヘンダーランド」。ところがその実態は、恐ろしいオカマ魔女・マカオ&ジョマとその一味が世界征服を企む本拠地であった。幼稚園の遠足でヘンダーランドを訪れたしんのすけは、そこで不思議なねじ巻き人形と出会い、マカオとジョマの陰謀を阻止するよう頼まれる。
古川登志夫演じる「ス・ノーマン・パー」の異様な存在感とか、アクション仮面・カンタムロボ・ぶりぶりざえもんとスーパーヒーロー勢揃いの魔法バトルとか、父ちゃん母ちゃんを救い出すためにしんのすけがたった一人で敵地へ乗り込んでいくシーンとか、もう好きな場面を挙げたらキリがない作品。家まで追いかけてきたス・ノーマン・パーに本気でビビってるところとか、珍しく「等身大のしんのすけ」がしっかり描かれていて、それが後半のカタルシスをより大きくしてる。最後も出来すぎなくらいのハッピーエンドで、普通に「クレしん」映画で一番面白いのは? と聞かれたら筆者はたぶんこれを選ぶと思います。


◆第2位:「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」


ひょんなことから戦国時代の春日部へタイムスリップしたしんのすけは、そこで歴史上討たれるはずだった侍を助けてしまう。井尻又兵衛と名乗るその侍は、お礼にしんのすけを自分たちの城へと案内するが……。
ぱっと見は時代劇モノですが、一方で歴史改変やタイムパラドックスといったテーマも大きく扱われており、実はSFの要素も強い作品だったりします。野原一家が完全に又兵衛の引き立て役になっていたり、一部では「クレしん」らしくないとの声もありますが、綿密な時代考証に基づいた背景描写と、ハチャメチャな野原一家のギャップがこの作品の見所であって、やっぱり野原一家抜きでは絶対に成立しなかった作品だと思う。
又兵衛と野原一家がカレーを食べるシーンとか、ヤリを持った足軽にボディブレードで立ち向かうヒロシなんて、この作品じゃなきゃ見れません。物語の結末についてはあえて語りませんので、ぜひ自分の目で。


◆第1位:「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」

突如日本の各地にオープンした「20世紀博」。そこは20世紀の懐かしいテレビ番組や暮らしを現代に蘇らせたテーマパークで、今やオトナたちは仕事や家事を投げ出し、連日のように「20世紀博」に入り浸っていた。しかし「20世紀博」とは実は、人々を懐かしい昭和の世界に引き戻そうとする秘密結社「イエスタデイ・ワンスモア」の罠だったのだ。
誰だって先の見えない未来よりも、居心地が良かった過去の世界の方に生きていたい。この混迷の時代、「20世紀博」から発せられる懐かしいニオイに抗えるオトナなんて、たぶん一人もいないんじゃないだろうか。それじゃダメだ。ちゃんと未来を見なきゃいけない。頭ではわかっていても、こんな世の中で「前向きになれ」って言う方が無茶だろう。
今回の野原一家が相手にするのは、世界征服を企むオカマ魔女でも、悪の秘密組織でもない。誰の心にも少なからず潜む「甘い過去」の誘惑だ。
しんのすけたちが生きる21世紀は俺たちが作っていかなきゃならない。だから一家は前へ進む。ボロボロになりながら東京タワーを駆け上がるしんのすけの姿は、未来を生きることの辛さを表しているのかも。傑作です。



というわけで、「なんであの作品が入っていないんだ!」といった意見も多々あるかと思いますが、ひとまず今回はこの5作品をチョイスさせていただきました。

ちなみに「ブタのヒヅメ」、「オトナ帝国」、「戦国大合戦」の監督を手がけた原恵一氏はその後、「河童のクゥと夏休み」や「カラフル」などの監督を務め、いずれもアニメーション作品ながらオトナを中心に高い評価を得ています。単なる子供向けアニメに止まらないその才能は、この頃から十分に発揮されていたんですね。「オトナ帝国」「戦国大合戦」の2作品は「クレしん」未見の人でも十分に楽しめる作品となっていますので、もしまだ見たことがない方は、このどちらかから見始めるのをオススメします。

そして最後に、昨年亡くなられた原作者・臼井儀人先生のご冥福を心からお祈りします。臼井先生、たくさんの笑いと感動を、本当にありがとうございました!(池谷勇人)
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